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四月十八日……午前八時十五分……。
この日、ビッグボード国内でモンスター化した人たちがまちや人を襲う事件が起こった。
今から始まるのは、その事件のほんの一部である。
「このまちをめちゃくちゃにしたあなたたちを……許すわけには……いかない……!」
無口キャラの『高木《たかぎ》 弓子《ゆみこ》』はそんなことを言った。
高木式|射撃《しゃげき》術の使い手で弓の類《たぐい》なら、なんでも召喚可能。
彼女は弓以外の武器も普通に使えて、なおかつ運動神経も抜群《ばつぐん》である。
ちなみに、お気に入りは『与一の弓』。(矢は弓を構えると装填《そうてん》され、なおかつ透明なので、とても厄介)
「私の前から……消えてよ!」
彼女がそう言うと、モンスター化した人たちは一瞬、静止した。
彼女は身長『百四十センチ』という小柄《こがら》な体型《たいけい》だが、存在感のなさを活かして、静かに敵を殺す。
高校時代からいつも無表情であったが、ナオト(主人公)にだけは懐《なつ》いていたらしく、時折、笑っていた。
服装は、黒と白のシマシマ模様《もよう》があるTシャツと白い上着と水色のショートパンツ。白い靴下と白い運動靴も着用している。白く長い髪と黒い瞳といつも無表情なところが特徴である。
背中に背負っている黒いリュックが気になるが、中身を調べるのは困難《こんなん》である。
「なんであなたたちは……自分たちのまちを壊すの?」
『…………』
「何か言ってよ……」
『……………………』
「私の声が聞こえてないの? それとも……うめき声しか出せなくなってるの?」
彼らは彼女の言葉を聞くと、涙を流し始めた。
「そっか……。あなたたちは元々……人間だったんだね」
彼女はそう言うと、まだ泣いている彼らのために、諸悪の根源を倒しに行くと決めた。
「待っててね……。私が必ず……あなたたちを……元に戻してあげるから」
彼女はそう言うと、屋根から屋根へ飛び移るという移動方法で前に進み始めた。
*
あの人たちはまだ人間だった頃の自分を覚えている。それに、私の言《こと》の矢が効いていた。
ということは、あの人たちはまだ完全にモンスター化したわけじゃないってことになるね……。
高木はそんなことを考えながら、屋根から屋根へと飛び移っていた。
すると、体長三十メートルの巨人が彼女から数十メートル離れた場所に現れた。
「う……嘘でしょ? あんなのが暴れたら……このまちはあっという間に……」
彼女が最後まで言い終わる前に、二本の黒い槍が飛んできて、巨人の両目を潰した。
巨人は仰向けで倒れたが、その割には建物があまり壊れなかった。
「今の……なんだったの?」
彼女は少しの間、目の前で起こった出来事に対して驚きを露《あら》わにしていたが、今はモンスター化した人たちを元に戻す方法を見つけないといけないという使命を思い出すと、その場から離れた。
「どうして私は……いつもいつも……こういうことに巻き込まれるんだろう……」
彼女は昔から、災いや害をもたらす何かに遭遇しがちだった。
だから、自然と強くなった。けれど、やはり彼女も女の子なので、誰かに守られたいと思うことがある。
そんな時、彼女に手を差し伸べてくれたのが、ナオト(主人公)だった。
高校時代、彼はクラスのみんなから信頼されていたし、みんなの憧れであった。
しかし、それ故に彼を巡って争うことが多々あった。
彼女はクラスの中で一、二を争うほどの実力者だったが、強すぎるが故に、クラスのほとんどの人から距離を置かれていた。
そんな時、彼は彼女に声をかけてきたのである。
人は自分たちと違うものを恐れ、否定し、傷つけても構わないと錯覚するものだが、彼は違った。
彼は彼女のことをそのような目で見ていなかった。
だから、彼女は彼にだけ、心を開いていた。
いつしか、他のみんなも自分に接してくるようになった。
彼女は今でも人と話すのは、あまり得意ではないが、何かに挫《くじ》けそうになった時、彼の顔を言葉や感触、温《ぬく》もりを思い出して心を落ち着かせるのである。
「ナオト……。私、頑張るから……もしまた会えたら、たくさん……たくさん……私と話そうね」
彼女は微笑みを浮かべながら、モンスター化した人たちを元に戻す方法を探していた……。
*
「えーっと……どうして……こうなったんだっけ?」
『キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
悪い人たちは裏路地によくいる。
だから、彼女は裏路地にやってきた。
しかし、そこに待ち構えていたのは、悪い人たちではなく、無数の巨大な虫たちだった。
「ムカデ……カブトムシ……クワガタムシ……ダンゴムシ……アリ……トノサマバッタ……女郎《じょろう》蜘蛛《ぐも》……ハサミムシ……ナナホシテントウ……カミキリムシ……カマキリ……オオスズメバチ……ゲジゲジ……カマドウマ……ゲンゴロウ……オケラ……タマムシ……って本当にこれ全部、元々……人間……なのかな?」
彼女は虫は苦手ではない。
むしろ、食料だと思っている。
だから、別に怖くはない。
しかし、自分より大きい虫たちに囲まれては流石に焦る。
「はぁ……仕方ない……。あとで食べるから、おとなしくしててね……」
彼女は与一の弓を召喚すると、弓を構えた。
虫たちは透明な矢が既に装填《そうてん》されていることに気づかず、彼女を攻撃し始めた。
「高木式射撃術……壱の型一番『急所貫通』!!」
彼女はそう言うと、目の前にいたムカデの頭を透明な矢で貫いた。
しかし、頭を貫いてもムカデは、すぐには死なない。だから、頭だけではなく、全ての神経機能を停止させないと、完全には倒せない。
『急所貫通』は敵が動かなくなるまで、あらゆる急所を射抜き続けるというなんとも残酷な技だが、確実に敵を倒すために生み出された技なので、そこは大目に見てほしい。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ムカデの断末魔を聞いた他の虫たちは少し弱気になったが、今度はカマキリが彼女の背後から大きなカマのような手で彼女を攻撃した。
しかし、そんな攻撃が来ることなど彼女には、お見通しだった。
「高木式射撃術……壱の型二番『瞬間貫通』!!」
彼女はカマキリに背を向けたまま、透明な矢を放った。
その矢は一瞬でカマキリの腕の付け根まで飛んでいった。
彼女にカマキリの手にあるギザギザが刺さる直前、カマキリの腕は数メートル吹っ飛んだ。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
カマキリは自分の腕が吹っ飛んだことより、自分の攻撃が彼女に当たらなかったことに驚いていた。
彼女はカマキリが驚いている間に、先ほど自分が射抜いた方のカマキリの腕を左手でキャッチすると、カマキリの右腕をそれで切断した。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
カマキリは自分の体の一部が自分の体の一部だったものに切断されたことに驚き、暴れ始めた。
高木はカマキリが暴れている間に、毒を持っている虫を倒していった。
そして、カマキリが他の虫たちを蹴散らす頃には、ほとんどの虫が倒されていた。
高木は倒れている仲間を心配そうに見ているカマキリの頭を透明な矢で背後から射抜いた。
カマキリはうつ伏せで倒れた後、しばらく暴れていたが、高木が透明な矢で体のあちこちを射抜き続けたため、次第に弱っていった……。
「はぁ……はぁ……はぁ……や……やった……。虫さんたちに……勝った……」
虫たちの中には僅《わず》かに動いているものもいたが、それは痙攣《けいれん》しているだけだったので、もう襲ってくることがないと彼女は確信した。
「……さてと……それじゃあ……行こうか……」
その直後、彼女の背後に死んだふりをしていたダンゴムシが立ち上がり、彼女を襲おうとした。
「はぁ……いい加減……しつこい!!」
彼女はそう言うと、透明な矢でダンゴムシに背を向けたまま、ダンゴムシの両目を同時に射抜いた。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ダンゴムシは両目を潰されたことより、自分の攻撃が読まれていたことに、ショックを受けていた。
しかし、死んでいった仲間のためにダンゴムシは彼女を倒そうと触覚を動かし、彼女の居場所を特定しようとした。
しかし、彼女が既に自分の背中の上に移動していることにダンゴムシは気づいていなかった。
「さようなら……ダンゴムシさん……他の虫さんたちと仲良くするんだよ……」
彼女はそう言うと、透明な矢でダンゴムシの背中を射抜き始めた。
高木はダンゴムシがどんなに暴れようと、決して反撃の隙を与えなかった。
攻撃の手を緩めることなど、一切しなかった。
そして、ダンゴムシの目から光が感じられなくなると、高木はもう動かない虫たちをダンゴムシのところに集め、手を合わせた。
「どうか安らかに……眠ってね……」
彼女は虫たちにそう言うと、背中に背負っている黒いリュックの中から、イチゴ味の飴《あめ》を一つ取り出して口に放り込んだ。
「……私は飴《あめ》があれば……しばらく大丈夫だから……あなたたちを食べたりしないよ……。だから……安らかに眠ってね……」
彼女はそう言うと、屋根から屋根へと飛び移っていく方法で、前に進み始めた。
*
「……えーっと……なんで……こうなったんだっけ?」
「………………」
裏路地に集まるのは、悪い人たち。
なら、教会に集まるのは、ちょっと危ない人たちだろうと思って、彼女は教会にやってきたのだが……そこにいたのは巨大化した植物型モンスターだった。
「はぁ……仕方ない……。さっさと終わらせよう」
彼女はそう言うと『雷上動《らいじょうどう》』という『鵺《ぬえ》』を倒す時に使用された弓を召喚した。
しかし、その直後、彼女は植物型モンスターのツタに四肢を拘束されてしまった。
「はぁ……やっぱり……こうなるんだね……」
彼女はそのまま、白い花のところまで運ばれた。
その白い花の中心は口のような形をしていたため、この植物型モンスターは自分を食べようとしているのだと彼女は悟った。
「なんかもう……慣れちゃったな……」
彼女がそう言うと、今度はウネウネした緑色の触手が彼女のところに向かってきた。
「……やっぱりあるんだ……触手……」
緑色の触手は彼女のところにやってくると、彼女の体に絡みついた。
これで彼女が植物型モンスターに〇〇されることは、ほぼ確定したわけだが……彼女はこういう状況から脱する方法を知っているため、ここから先は彼女の反撃となる。
「よいしょ……」
彼女は右手の手首に絡みついていたツタをものすごい力で引っ張り、それを口に咥《くわ》えた。
その後、ものすごい勢いで植物の中にある水分を吸収し始めた。
植物型モンスターは自分の水分を彼女に全て吸収される前に彼女を食べようとしたが、それよりも早く彼女が植物型モンスターの水分を吸収してしまったため、植物型モンスターはみるみるうちに枯れてしまった。
「……よっと……ごちそうさまでした」
彼女は地面に着地すると、植物型モンスターに手を合わせた。
「……さてと……それじゃあ……行こうか」
彼女はそう言うと、屋根から屋根へと飛び移っていく方法で前に進み始めた。