テラーノベル
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へびまるです。
本日1本目のお話は、
kirdです。
rdkiでもいけます。
あんまりここで内容について話しちゃっても
面白くないのでね、
早速、どうぞ!
「能ある機械が隠すもの」
店長が酒のつまみに枝豆を食べている。
珍しく仲間達は早々に眠りにつき、2人だけの静か時間が流れる。
私はただ、幸せそうに手を動かす店長を眺めていた。
このなんでもない日常も、今日で最後だから。
明日、店長はこの街からいなくなる。
「ケ、ッんグ」
突然、喉を抑えて苦しみ始める店長。
枝豆が喉に詰まったようだ。店長の喉細すぎないか。
慌てて背中をさする。
しばらくすると、無事枝豆は胃袋に収まったらしく、店長は荒い息を繰り返す。
「大丈夫ですか」
「はぁッはぁ…だ、だいじょぶ、に、見えるか…?」
「っふ、見えませんね。生きててよかったです」
それを聞いて、ふと店長は思案顔になる。
何か変なこと言って不快にさせてしまったのか、と少し不安になった。
が、そうではなかった。
店長は話しだす。
「…でもさ、どうせ明日いなくなるんなら、一緒じゃない?」
「はい?」
「今死んでも、この街を去るってことに変わりないじゃん。君らにとってはさ、同じことじゃん」
…そんなわけない。そんなこと、言わないでくださいよ。
「あのですね、私たちは店長が行きたいと言ったから送り出すんです。この際、あなたが街を去ることはもう、仕方ありません。でも、死ぬのといなくなるのは違うことなんじゃないですか」
ちょっと面食らったように話を聞いていた店長だが、やがてニヤッと口角をあげた。
仲間にだけ見せるこの揶揄うような表情も、今日で最後だと思った。
「なんか饒舌やね。怒ってる?」
怒ってますよ。
「いいえ、ロボットなので感情はありません」
「そりゃそうか。ロボットだもんね」
「はい」
怒ってます。とても。
それに、悲しいし、寂しいです。
辛い、苦しい、心が痛い、行ってほしくない。
どうしていなくなってしまうのですか?
なんで置いて行くんですか?
何故、何故です?
私では、私達ではダメでしたか?
この言葉たちを全部、愛しい貴方に打ち明けられたら。
そうしたら、貴方は困ってしまうだろうか。
それとも受け入れてくれるのだろうか。
あぁ店長、私の話を聞いてはくれませんか。
最近どうしてもバグが多いんです。
思考がまとまらなくて。いつも貴方の顔がチラついて。
離したくない、そう思ってしまう。
このバグはきっと、貴方を困らせ、迷わせ、やがて縛る。
でも貴方には貴方の決めた道を歩んで欲しいから。
だから、私は隠し続けることを選びます。
安心してください。私の体は硬く、強い。絶対に隠し通して見せます。
そして、願い続けるのです。
貴方の幸せを。
届かなくてもいい。意味がなくたっていい。
「ねぇ今、何考えてたの?」
この想いをこの鋼鉄の体に閉じ込めて。
願う。
どうか、幸福に生きてください。
「…店長のことです」