「涼ちゃん!!」
鼻を通る香ばしい匂いと強く揺さぶられる振動に沈んでいた意識が戻る。
「あれ、あ。そういえば買ってきてくれてたんだっけ。ごめんちょっと寝ちゃった。」
人数分の飲み物を手に、心配そうに顔を覗き込む二人が目に入る。
「ありがとう、若井。元貴もね。」
「俺らは別に良いけど…、」
歯切れが悪そうに元貴に目を向ける様子に首を傾げる。
「ダメだよ涼ちゃん。いくら眠くても外で寝るなんて。危ないでしょ。」
それもそうだな、と素直に謝罪を述べれば満足したような表情でカフェオレを手渡される。まだ淹れたてのそれはとても良い香りがした。
「でもねー、さっき猫ちゃんが居て。あれ?」
いつの間にか消えていた温もりを探すように膝の上に何度か触れる。随分前にどこかへ行ってしまったのか、もう温かさはなかった。
「えーっと、明日は……8時!」
しっかりとアラームをセットして布団に入る。事前に温めておいた布団に全身を包まれればなんとも言えない幸福に襲われ、そっと目を閉じる。
「んん〜、ねれな…。」
なかなか落ちてくれない意識に身を捩る。いざ眠ろうとするとどうしても夜特有の静けさが気になる。眠れない夜の、時計の音だけが部屋に響くこの時間。耳を澄ませば澄ますだけ辛いのに。
「あぁ〜!無理!!」
勢いよく布団から身を起こし、そう叫ぶ。一気に身を包む冷気に背筋を震わせ、月明かりを頼りに時計を読み解く。短い針が2時を指していて、更に焦りが募る。どうしようか、と考えるだけ無駄な事は分かっているが頭を回転させてみる。少しストレッチをしてみるか、暖かい飲み物でも飲んでみようかと考えていればどこかで聞いた音に顔を上げる。
「まる……?」
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