テラーノベル
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入学式からの数か月、私は斜め前の律と変わらず過ごしていた。体育ではペア、帰りは一緒、他愛のないやり取りはあの頃と同じ。
違うのは、制服の袖や靴のサイズ、そして律の背が少し高くなったことくらい。
6月始め、席替えの日。
くじ引きで決まった席は、窓際から教壇寄りの列の真ん中。
律は教室の反対側、後ろの方の席になった。
律は「見えねーな、お前の顔」って笑った。
私はなんとも言えない感情になった、けど律は平気そうに笑っただからいつも通り笑い返した。
7月に入ると、律は部活漬けの日々。
律が「今月部活が多くてさ、、先帰ってもいいよ」っていう
「分かったよ」って笑顔で言った。
でも内心、あーそうなのかいいのかいいんだ律は。そう思った。
放課後、校門を出る頃にはもう夕方で、彼の姿はグラウンドにしかなかった。
新しい隣の席は悠真。
整った字でノートをとり、先生の話をきちんと聞く。
私が途中でわからなくなった英語の単語を小声で教えてくれたり、配られたプリントをすっと私の分まで取ってくれたりする。
そんな細かいところまで気がつくのに、それを特別なことみたいに見せない。
ある日、男女合同の体育のサッカーでボールが私の方に飛んできた。
慌てて足に当ててしまい、相手チームに点を取られたとき、後ろから「ドンマイ!」って律から声をかけられた。
でもその後、悠真は試合の流れを読みながら、私がプレーしやすいようにさりげなくパスを回してくれた。
気づいたときには、「この人、とっても優しい人なんだな」って思った。
律とは全然違う。
みんなを引っ張る明るさじゃなく、落ち着いて周りを見て動ける人。
その静かな強さが、いつの間にか私の心の中で大きくなっていった。
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