注意
⚪︎駄作です。ご注意ください。
⚪︎ファンタジーの世界です。
⚪︎設定色々詰め込んでます。
⚪︎語彙力?そんな物ドブに捨ててあります、多分。
⚪︎苦情は一切受け付けません。
⚪︎めっちゃ長いです。
⚪︎会話文多め。
それでは、お楽しみください。
昔、昔。それはまだ魔人も人間も共存していた時代。人間も妖精も魔人も暮らしていた大きな町での出来事です。その大きな町ではそれはそれは美しい少女がおりました。その少女はまるで雪のような白い肌に、薔薇のように美しい紅瞳を持ち、銀色に輝く長い髪をとても大切にしていました。ですがその美しい少女の体の中には暖かい血液ではなく魔力が、柔らかい肌ではなく陶器の肌が、優しい体温ではなく冷たく無機質な体温が、備わっていました。そう、その少女は生きた人形だったのです。妖精のマスターに作られ、世界で唯一、心を、感情を、持っておりました。これはそんな、少し普通とは違う少女と少年のお話。さて、心を持って生まれた人形は最期にどんなことを思うのでしょうか。
「おはようございます。マスター。」
少し寒い早朝。いつもの時間。いつもの声で挨拶をする。部屋の中に入れば、まだモゾモゾと動くだけで起きあがろうとしない彼が布団をかぶって丸まっていた。
「マスター、起きてください。朝です。」「う〜ん、もうちょっとだけ、、、」
「だめです。今すぐ起きないとこの前作っていただいたワンピースは、クローゼットで眠る事になります。いいんですか?」
「っ!、、よ、よくない!起きます、起きるから着て!!」
そう言い行き良いよく起き上がる少年に呆れてしまう。慌てて寝癖を治し、着替えを始めるマスターに一言告げてから部屋を出て行く。無駄に広い屋敷を移動し、一等広い部屋のテーブルを整える。ホークなどのカトラリーを用意しているところへ、黒髪を綺麗に整えたマスターが入ってきた。先ほどの緩い気はなく、ピシッとしていた。
「おはよう、ハル!」
「はい、マスター。」
「今日の朝食は何〜?」
「パンケーキです。この前木苺のジャムを買ったので。」
「美味しそう!僕、ハルのパンケーキ好きだから嬉しいよ。」
「ならもうちょっと早く起きてください。貴方の大好きなパンケーキが冷めますよ。」「、、、」
「マスター?」
「、、、努力します。」
「はぁ」
ため息をわざとらしく吐いてから、いそいそと朝食の準備に取り掛かる。「手伝う」と言い、動こうとするマスターを止めて、パンケーキを盛った皿と木苺のジャムを運ぶ。狐色のパンケーキからはほのかに甘い香りがしてたのできっと美味しいだろう。私は、食事や睡眠をしない。睡眠は取れないが、食事は出来なくはない。だが味がわからないので楽しむことも出来ない。私が動く事に必要なのは、マスターの魔力だけなのだ。口元にジャムを付けて食べる目の前のマスターに少し、いや、大分呆れたが抑えて置いた。
「今日の予定は、なんだったかな?」
「今日は、リン様がいらっしゃる日です。この前の魔法具の感想と新しく入った魔法石の詳細をお伝えにくるようです。」
「リンかぁ〜、またすぐ壊れたとか言いそうだな。全く、、」
「今日は天気がよろしいので庭でのお話にされてはいかがですか?」
「そうだね、、、うん、そうしよう!」
「では、庭で準備をしてきます。」
マスターは、妖精で魔力が有り余るほどあるため、それを活かした仕事をしている。マスターの作った魔法具は一級品とされ、多くの人々が使っているほどだ。リンと、言うのは魔人族の商人である。いつも魔法具を作るのに必要な魔法石を売りにくるのと同時に、魔法具を買いにくる。とても優秀な商人ではあるのだが魔人特有の強すぎる握力を抑えることはせず、野放しのため、よく魔法具を壊すのだ。急に話は変わるが、私も魔道人形と言う魔法具の一種である。魔法具とは、世界で唯一魔力をこめる事ができる物質、魔法石に色々な属性の魔法を込め、物に取り付ける事で使用する。例えばランプやシャワーなどだ。少し違うところと言えば、多くの魔法具は魔法石に込められた魔力が膨大すぎて無くなることは無いが私は使用量が多いため定期的に魔力を込めなければならない。ふと、目を閉じ、1番最初に目を開けた時のことを思い出す。少し眩しい日光がキラキラと差し込み、糸屑だらけのマスターを目の前のに、椅子に座らされていた。マスターは床に膝をつき、私の手を握って、その緑色のエメラルドのような瞳でこちらを見ていた。
『こんにちは、僕は君を作ったレオンと言う魔法具師だよ。』
『、、、こん、にち、わ?』
『あはは、上手く喋れないよね?』
『さっそくだけど、君の名前は何にしようか?』
『・・・』
『マリー?ララ?うーんどれもなんか違うなぁ』
『わた、し、はどう、すれば』
『えっ?大丈夫!大丈夫!まだじっとしてて?体が馴染んで無いでしょ?』
『・・・』
『そうだ!君の目は薔薇のようだからハル!ハルなんてどう?』
『は、る』
『うん、ローズは安直すぎるしね。薔薇は春に咲く花だから!』
『わか、り、まし、た』
まだ上手く動かない口を一つ一つ確かめるように動かす。目の前の少年はそれにイライラする様子もなくにこやかに手を握り頷いてくれた。綺麗だと、そう思った。柔らかい笑みも、エメラルドの瞳も、全部が、でもまだその時は、その早く波打つものがよく分からなくて混乱していたのを思い出した。白と赤の薔薇が咲き誇る庭の風が心地いい。早く準備を進めるために動く事にした。
大きな扉が開かれる。自分よりも何倍も大きい背丈の男がそこには立っていた。
「お久しぶりでございます。リン様。」
「あぁ、ハル君もレオンも元気にしてたかぁ?」
「こら、その巨大でハルに抱きつこうとするな!!!」
「まだ、ハル君の腕折ったこと根に持ってんのかよ〜。悪かったて!な?」
「そうじゃなくて、、普通に暑苦しいんだよ、君は。」
珍しく騒がしい屋敷の中に「ひでー!」と言う声がこだました。ガハハ!と大きく笑う彼に、呆れる顔をしながらも笑うマスターは何処か楽しそうだった。さて、場所は移動して庭のテラスである。赤と白の薔薇。優しく香り立つ紅茶。甘い見た目をした洋菓子。どれもこれもここにいる赤髪の魔人とはどこか不釣り合いな気もするが、顔が整っているためどこか似合っているのがまた面白かった。
「それで、この前のランプはどうだった?」「あぁ、光も大きく、とても良かったんだが少しサイズが気になったな。」
「サイズ?」
「そうだ。あれだけ光が大きく、広い範囲でも照らせるランプなら炭鉱や発掘などに持っていくべきだ。だが、それだとあの大きさだと値段が安く、少し品質が悪いコンパクトなものの方が売れるだろう。」
「なるほど。」
「だからもう少し小さくしてみないか?それであの光の大きさならきっと引く手数多だろう。」
「わかった。光の大きさはそのままでサイズを小さく、、、やってみよう。」
「まぁ、お前の作品はどれも人気だからな売られないなんてことは無いだろ〜けどな。」「……褒めてもこの前の失敗作しか出てこないぞ。」
おどけてみせるマスターに、紅茶を啜りながら彼が笑う。どこまでも平和で、どこまでも優しく、当たり前な日常がそこにはあった。つい顔が綻んでしまう。優しい風にどこまでもこの日々が続いて欲しいと、そう思ってしまった。
少しだけ風が強くふく。体の中の魔力が揺らぐ。あぁ、またか。この家を守る結界が揺らいだ。
「すいません、どうやらお客様 がいらっしゃったようですので門の様子を見てきます。」
「…またか、最近多いな。」
「一人で大丈夫?おじちゃんついて行こうか?」
「何言ってるんだ?君はまだまだ子供だろ。」「うるせぇよ、そりゃ500年生きてる妖精様にとっては、100年ちょっとしか生きてない俺は子供だろうよ。」
「リン様のお手を煩わせるほどではないですよ。ご安心ください。」
「、、、ハル、気をつけて」
「Yes.master」
「いらっしゃいませここから先は魔法具師レオンが住まう館。それをわかっていてもなお、その門を超えますか?招かれざるお客様。」
目の前の美しい少女は目を閉じ微動だにせずに言う。全く変わらない表情に違和感を覚えながらも足を動かす。このような小柄な少女なんかに構っている時間はない。俺は一刻も早くあれ を見つけて持ち出さなければ、、、
「そうですか、それでも門を超えられますか。なら手加減は必要ありませんね。自己紹介が遅れました。」
ゆっくりと瞼の下に隠れた彼女の瞳が見える。それは赤く、紅く、あかく薔薇の花弁が舞っているような美しい瞳をしていた。
「私は、魔法具師レオンの最高傑作。魔導人形のハルと申します。」
風により銀色の髪が靡く。どこまでも輝くその一輪の薔薇。
「それでは、さようなら。」
瞬間一歩前に出ていた自分の身に痛みが走る。鋭く輝くナイフが自分を貫いていた。毅然と佇む目の前のそれ は正しく最高傑作で俺が探していたものだった。
紅瞳が真っ直ぐと見つめる。白い肌が自分の血で汚れる。銀色の長い髪がどこまでも輝いている。どこまでも美しく、どこまでも恐ろしい、あぁ、きっとこれは、
薔薇だ。
赤く、紅く、燃え盛るその薔薇に見惚れて仕舞えば、後は冷たくなるだけ。
「まだ、伝えてないのか?」
「あぁ、前も言っただろう?最後まで、あの子に伝える気はない。」
「お前がそう言うなら、俺は止めはしないが、、、」
「あと、もう少しなんだ。あともう少し。それに、もう時間がない。」
「……そうだな。」
「僕は後もう少しで……」
「最近さぁ〜多くない?侵入者。」
古めのテーブルに肘を突き、呆れたような声をあげているのは、栗色の髪をショートに切り揃えている少女だった。彼女の名はロンド。葬儀屋をしているため先日のお客様もと言い侵入者の死体を回収してもらいに来たのだ。
「いくらレオン様の結界張ってあるからって大変なんじゃない?」
「それは大丈夫。大人数で来ることは無い。」「え、まじ?」
「えぇ、それと正面から来る。」
「え????まって、正面って門????」「門。」
「単純に馬鹿?」
「…何らかの、魅了が発動してる。」
「あ〜なるほどね。」
「それも、全員私目当てだった。」
「面倒だねぇ〜」と、他人事のように呟かれた。確かに最近、侵入者などが多い。そのどれも自分目当てで、何らかの魅了に掛かっている。何も喋らない物もいれば、ぶつぶつと「アレがあれば、、あいつさえ手に入れれば、、、」などと呟き続ける物もいる。正直、不思議でならない。自分が出来立てホヤホヤの頃はそれこそ狙われる事は多かったが、侵入者を排除していくうちに、その噂が広まりめっきり来なくなっていたのだ。それに最近、マスターの様子がおかしい。前々から服作りが好きで幾つもの私用の服を作っていたのだが最近になってまた作る量が増えた。それだけなら「それぐらい」と思われるかもしれないが、それだけではなく、魔力の揺らぎが生じる事が多い。私の中に流れているマスターの魔力が揺らぐのはマスター自身の意志とは関係なく起こる事が多い。なぜ?や、どうした?と聞こうとも「大丈夫」としか返されず、深く聞くこともできない。
「……ハルはさぁ、良いの?」
「、、、何が?」
「明らかにレオン様何か隠してるでしょ。僕が知らないのならまだしも、ハルにまで言わないなんてさぁ〜。絶対にヤバいことでしょ?」「・・・」
「僕としては、人間全員子供だと思ってる奴がほとんどな妖精族で人間の僕と分け隔てなく話して、取引してくれるレオン様は、なるべく居なくなって欲しく無いんだよ。」
「……明らかに拒否されてるのに、わざわざ土足で上がりこめと?」
「別にハルがそれで良いなら僕も止めないけど、あの方が苦しんだり、君に秘密で消えたのをみすみす許せないでしょ、君は。」
どこまでも、見透かされているようなそんな茶色い瞳が自分を貫く。わかっている。きっと今、マスターはいいことをしようとしている訳ではないだろう。何も聞かずにあの人に何か有ればきっと自分が許せなくなるだろう。でも、どうしても、怖かった。
拒絶されるのが、
「関わるな。」と言われるのが、
見捨てられるのが、
あの人に、悪意を向けられるのが、
どこまでも、どこまでも、優しく微笑むあの瞳が自分を睨むのが嫌で、聞きたくなかった。自分を作った彼からの〝拒絶〟が怖かった。これはきっと依存だ。
「………君はさぁ、他の魔道人形とは違って感情がある。でも、どうしたって作ってくれたレオン様を慕うようになってるし依存するようになってるのかもしれないけどさぁ、僕はその感情、そう言うのとは違うと思うよ。」
「!」
「僕は察しが良い方だからね。あはは、初めて見たかも君のそんな顔。」
「大丈夫。君の好きなようにやりなよ。大変なことになっても僕が助けてあげるからさ、ね?親友が言う事、信じなよ。」「・・・・・・・」
「貴方、私の親友だったの?」
「え!そっち?僕今いい事言ってたよね??酷くない?」
「ふふ、嘘。ありがとう。」
「!、いえいえ〜。」
優しい子。人形である自分にも普通に、当たり前のように話しかけてくる彼女は、やはりどこかずれているのかもしれないがその優しさがとても嬉しかった。明日聞いて見よう。踏み込んで見よう。拒絶されるかもしれない。悪意を向けられるかも知れない。それでも、自分のやりたいように。気まぐれな、親友の言葉一つ一つを大切にして。
むかし、むかし、その世界には珍しい、黒髪とエメラルドのような瞳を,持つ妖精の少女がおりました。その少女は特別な才は持ってはいませんでした。魔力も多くなく、その珍しい色から人々からも仲間からも避けられておりました。そんな少女に人間の魔法師は同情しました。かわいそうな子、才もなく、絆もなく、孤独な子、私の魔法をかけましょう。そう言って少女の手を持ちました。少女は言いました。もしも本当に貴方様が魔法を掛けてくださるのなら、どうか私に魔力をください。人に、仲間に好かれるようにして下さい。魔法師は言いました。わかった。いいだろう、だけれどこの魔法は強力で対価が必要なのです。お前さんの長い寿命を半分いただきます。大丈夫。大丈夫。魔法師がくれたその魔法で少女の魔力は妖精族の中でも強大になりました。その魔力には人を魅了することができる力がありました。少女は願っていたものが手に入り、幸せに暮らしました。でも、その魔法は彼女の息子にも受け継がれました。魔法は呪いになってしまったのです。彼女の子孫は皆、強力な魔力を持ち、その魔力で人を魅了できるようになりました。そのかわり1000年ほど生きる妖精の人生を半分の500年ほどしか生きられなくなりましたとさ。
次の日の昼。マスターにお使いを頼まれロンドと、町に降りていた。
「おっ!あそこの服屋新作出してる!お使い終わったら見に行こう?」
「良いけどあんまり遅くならないようにね。」「はい、はい〜。ハルはいいよねぇーレオン様に服作って貰えるんだもん。そのワンピースもレオン様作でしょ?」
「そうだけど、あんまり作りすぎて余ってるくらいだから少し減らして欲しいけどね。」「………今日聞くんでしょ?」
「えぇ。」
「ふーん、まぁ頑張っ!」
「素直じゃない。」
「うっさい!!!ほら行くよ!」
頬を膨らませながら手を引かれる。年下らしいその仕草に可愛らしいと思った。お使いも終わり色々なお店を見て回っている内に少しずつ帰る時間が近づいていった。
「そろそろ帰ろうか。」
「えぇ。そうしましょうか。そうだ、この前言ってたクッキー焼いてあるから寄って行って。」
「本当!!やっりー!ハルのクッキー美味しいから楽しみ〜。」
呑気な話をしながら館への帰り道を歩く。あそこの店はどうだった、あの屋台のあれはダメだ、といろいろな話をしながら歩いていればあっという間に館の前についていた。いつもの館が見えるはずだった。でも、そこには古くも優しく佇んだ館はなく、茨に囲まれ、今にも崩れ落ちそうな危うさがある館がそこにはあった。門は茨で閉ざされ大きく囲まれた茨で館の様子は一切見えない。その近くには見覚えのある赤髪が揺れていた。彼はすぐにこちらに気づきゆっくりと振り返った。
「リン様!!!」
「これは一体、、、」
「説明は後にしようここは危ない、もう一度町に降りよう。」
「!、待ってください、マスターは何処に?」
「先に町に降りている。」
「嘘です。貴方を置いて町に我先にと降りる方ではない。」
「何を、隠してるんです?ハルにも言わずに2人でコソコソとしてさぁ?」
「良いから町に降りるんだ!!!!」
「!」
「・・・」
「さぁ、早く。」
「・・・」
「マスター!まだお屋敷に居られますね?今そちらに行きます。」
「な、なにをしてるんだ!それに触ってはいけない!」
私を掴もうとしたリン様の手をがっちりとロンドが掴んだ。
「ハル!早く!」
頷き、門に近づく、茨は今もなお晒しなく動き絡まっていた。ゆっくりといつものように手を伸ばす。早く迎えに行かなければ、その後ゆっくりと話をしよう。止められなかったがまだ遅くない筈だ。大丈夫。門の取手に手が当たった瞬間。それは刹那の出来事だった。魔法で弾かれ、強い衝撃が伝わってきた。パキンッ!顔と手にヒビが入る。その魔力は正しく〝マスターのもの″だった。私の体はとても頑丈で素手で壊せるのは魔人でもごく一部、魔法を使ってもとても強い魔法でなければ壊れない。そうマスターの様に力の強い妖精などの魔法でない限り。
「ハル!ヒビが!」
「、、、わかっただろう?それはレオンの茨だ。もうこうなってしまったから伝えるが、レオンの一族は呪いを受けている。強大な魔力とその魔力で人を魅了する力を生まれながらに持つ代わりに、500年ほどしか生きられない。妖精の中では短いその寿命は近づけば近づくほど魔力はうまく制御出来なくなり、魅了も強くなる。」
「そ、んな、ことって、」
「あるんだ。レオンは今日死ぬ。レオンが死ねば、ハル君、君は魔力がなくれば動かなくなるだろう。ここには俺の魔力をレオンの魔力に似たものに変える魔法具がある。あいつが作ったものだ。」
「、、、マスターは何故私に何も言わなかったのですか?」
「君はきっとレオンをどうにか生かす為に努力するだろう。そんな方法はどこにも無い。それを探し、時間を無駄にさせるのが嫌だったそうだ。」
「そんなの探して見なきゃわかんないじゃん!!僕やあんた、ハルが探せば何処かに、、」
「無いんだ!!!俺も探した。レオンはもっと前から探していた。でも見つけられなかった。100年だ。100年掛けて見つけられなかった方法を探すのに残りの人生を全て使って君たちとの思い出が少なくなるのが嫌だったんだあいつは」
「それでも!!ハルに何も言わないなんて、自分勝手だ!!!急に大切な人がいなくなるなんて!先に言ってくれていれば心構えもいくらでも出来たのに!!」
「それでも、君達との思い出の中で死にたいと言う親友の思いを叶えてやりたかったんだ!!!生きてくれ、ハル君。あいつの為に、どうかここで何もせず、町に降りてくれ。」
下唇を強く噛み、こちらに頭を下げる。どこまでも優しく、おおらかな性格をしている彼が取り乱し、声を荒げる姿を見るのは初めてだった。私のため。わかっている。あの方はどこまでも優しく自分の事を大切に扱ってくれているのも。でも、それでも、諦めなければ行けない。町に、降りなければ、マスターの今までしていたことが無駄になる。それでも、私は、
「私は、」
「!」
「あの方がいない世界で生きている意味が見つけられない!!!!」
「きっと、幸せでしょう。ロンドも貴方もいる。我儘かも知れない、それでもあの方が居ないのだと寂しさを感じる瞬間を想像するだけで気が狂いそうだ!」
「あの方が居るから、何も口に入れられない食事の時間が楽しいんです!眠ることのできない夜が寂しいと思える!〝普通″とは違う自分を、綺麗だとあの方が言うから、好きでいれる!」
「ハ、ル君」
「私は、、、幸せと言う感情がどう言うものかわからなかった。でもマスターが居たから、キラキラと輝く、どこまでも普通で優しい貴方達との日々が幸せと言うものなのだと気がつくことができた。」
「このまま、マスターがいない世界で、あの方がいない世界で、いつまでもあなた方が居なくなっても生きているぐらいなら、、このまま壊れてしまった方がいい。」
そっと門に手を掛ける。茨がまた渦巻く。酷い我儘だ。恵まれている。それでも、こぼれ落ちそうなほどの優しさをくれた〝あの人″を諦める事がどうしても出来ない。今度は私が貴方の役に立ちたい。
「それに、マスターは寂しがりやですから。」
力を入れて門を押す。今度は茨は、私の体を弾くことはなかった。ごめんなさい。さようなら、優しい人、愛しい友。
風が靡く。1人の少年は、恐ろしいほどに綺麗な茨の中で大きな屋敷の中うずくまって居た。あぁ、ハルとロンドは町に降りてくれただろうか。あの子は勘がいいから気づいてしまったかも。やっぱり、少し寂しい。もし迎えに来てくれれば、そんなあり得ない事を考える。もう茨の痣が殆ど全身に巡っている。この痣が全身を巡れば僕は死んでしまう。あともう少しなんだな。死にたく無い。もっと、もっと、彼らとなんてこと無い日々を過ごして居たかった。もっともっと、、、
「随分と勝手なことをなさるんですね。マスター。」
ホロホロと崩れる扉の前。見覚えのある銀の髪が風に舞っていた。
「ハ、ル?」
「はい、マスター。」
「どう、し、て。」
「マスターは寂しがり屋でしょう?」
「そ、んな、」
「もう、貴方を生かす事は出来ない。でも1人では死なせません。」
「ダメだ!!!!!君は生きなきゃ、ダメなんだ。僕は君を自分の寂しさを埋める為に作ったんだよ⁈自分勝手な思いで君を作った。」
「知ってます。時折貴方は私に悲しそうな瞳を向けて居たから。」
「!、、、僕は君を縛ってしまった。居なくなってほしくなくて、それで、、、だから君は生きなきゃ!自由に、」
「自由なんていりません。」
そっと少女が屈む。愛おしそうに少年の頬にそっと、触れた。大粒の雫が少年の頬を何度も、何度も、落ちていった。
「私には、貴方のように美しい涙は流せない。柔らかく包める肌はない。優しい温もりも、でも、貴方がくれた心はあります。貴方は1番最初に言いました。『君は自ら成長できる心を持ってる。』と、私は、貴方の言う通り成長しました。」
「ねぇ、マスター、いえ、レオン様。」
「愛してます」
ゆっくりと少女が微笑む。その微笑みはどこまでも美しく、優しい微笑みだった。
「ハ、ル。いいの?ぼ、僕と、一緒で、だって君は、」
「貴方がいいんです。私は貴方がいない世界で生きていける自信がありませんので。」
「ぼ、僕も。ずっと、ずっと君を愛してた。誰よりも、ずっと。」
「えぇ」
「ありがとう。ハル。」
手を繋ぎ2人はゆっくりと寝そべる。茨は999本の赤い薔薇を咲かせた。2人はゆっくりと微笑む。
「ねぇ、マスター?もし、またこの世に生まれる事ができたら、その時は、また私を作って下さいね?」
「うん、、きっとまた、君を作るよ。」
「「愛してる」」
こうして、2人の少年と少女は長い、長い眠りにつきました。その風景はどこまでも美しくて、どこまでも愛おしいものでした。例え、骨に、ガラクタになろうと変わることのない、その美しい風景は何にも変わることは無いだろう。
茨は消え去り、ボロボロと崩れ落ちる館の中。2人の人物は寂しそうに立って居ました。1人は幸せそうな2人に泣きながら何度も、何度も、声をかけていました。もう1人は、
「好きにしていい、とは言ったけど、誰も僕を置いて行っていいなんて言ってないよ。ハルのバカ。」
と言いながら優しい涙を流して居ました。
あるお屋敷では、変わり者の妖精の少年が住んでいました。その少年はまだ幼い頃からずっと、ずっと、何かを求める様に人形を作っていました。今日はついにその人形が完成したようだ。美しい銀髪の少女の人形はその薔薇の様な瞳をそっと開きました。
「こんにちは、僕は君を作った、レオンって言うものだよ。」
「・・・」
「あはは、まだ上手く喋れないかな?」
「さっそくだけど君の名前は何にしようか?マリー?ララ?どれもなんか違うな?」
「は、」
「?」
「ハルがいいですよ。マスター」
「!、う、ん、うん!ローズは安直だもんね!」
「えぇ。ふふ。」
あるところにそれはそれは美しい少女の人形がおりました。その人形は心を持って生まれ、そして自分を作ったマスターを愛していました。それは、どこまでも優しく、どこまでも美しい2人の少女と少年の物語でした。
おしまい。
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