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「……今夜は、泊まっていくのか?」
彼に尋ねられて、ふとお風呂場の窓から外を見ると、空はもう暮れかけていた。
ああ、私が寝ちゃってたから……。彼との貴重なおうちデートで寝ちゃうとか、それでなくてももったいないのに、たいして二人で過ごしてもいないのに、早々に帰るだなんて、いよいよもったいなさすぎる気がした。
「……えっと、その、ご迷惑じゃなかったら……」
自分が失態を犯さなければ、こんな時間にもなってなくて、もっといろんなことが楽しめたかもしれないのにと、ちょっと落ち込んで口にした私に、
「どうして迷惑だなんて思うんだ」
彼からそう言葉が返った。
「迷惑なはずがないだろう。君とずっといられるのに」
両腕にそっと包まれると、お湯のさざ波がたぷんと微かな音を立てて押し寄せた。
「……嬉しいよ。君と一晩中一緒にいられる」
「……私も、です」応えると、耳元にチュッとキスをされた。
……彼といると、知らず知らずのうちに心まで満たされて、ちょっぴり落ち込んでいた気持ちなどいつの間にか消し飛んで、ふわりとした温かみだけが胸に残るようだった……。