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初めて見たそれを天使以外の何者でもないと無いと思った。
※注意 フェリシアーノ=聖歌隊 菊=なり損ない天使 の天使パロディです。年齢操作してます。
「あ……」
ぼうっと見つめていると、綺麗な黒髪が揺れている。見つめ合っているとその東洋人の天使が驚いたように口を開いた。
「貴方、私が見えるのですか?」
その言葉が何を表しているのか、イタリア人であるフェリシアーノにはまるで分からなかった。そのためか首を傾げたまま浮いている東洋人に触れようとした。
「ああ、これは失礼、えーと……? salve」
「こんにちは」
急なイタリア語での挨拶、発音の仕方が少々拙いが発音以外なら言葉の種類も豊富で学生が勉強で少々齧っただけとも思わなかった。天使に見えるが、天使らしくはないものの美しさに見とれていた。
「ねえ、見えるんですか?」
「見えるよ」
教会でよく聞いた言葉。「天使」というのは神聖なもので、主の御使いである。あくまでキリスト教の思考であるが天使に羽があるのは本当なのだと感心する。翼の記述は少ないためあるのかないのかハッキリとはしていない。天使を描いていた絵画は最初の方翼が無かったくらいだ。
「性別は?」
「……一応男ですが」
「え?」
天使に性別などない。そう教えられ続けれた。
「ああ、これだから言いたくないんですよ、ここにいるんですから貴方カトリック教徒でしょう? そして聖歌隊、はぁなんで貴方が見えるんですか」
うっすらだが羽が見える上に見た目は明らかな天使なのだが発言があまりにも面倒だという感情が滲み出ていて本当に天使かと疑いたくなる。天使は頭に手をやりやれやれとした行動をとるとまたフェリシアーノに話しかけた。
「私は天使ではありません、強いて言うならなり損ない天使です、貴方が信じているような神の御使いではありません」
「そうなんだ、ねえ僕気になるんだ」
瞳を輝かして旧約聖書を持ったまま問いかける幼子は眩しい。目が眩んでしまいそうになった天使は呆れながら話を聞いてやる。
「名前は? 東洋人みたいな見た目だもの、なんなの?」
「本田菊と申します、この協会からは出られません」
「そうなの? 僕、フェリシアーノ・ヴァルガス!」
「存じ上げておりますよ、本来人には見えませんから暇つぶしに祈りなど見て、聞いていましたよ」
そんなやりとりが続けられてはフェリシアーノは不思議そうに天使……菊を見やる。寂し気に見ては触れようと手を伸ばすもその手は触れられない。菊が避けるからだ。
「触らない方がよろしいかと、私なり損ないなので」
「卑下ばっかりなんだね」
「おや、歳の割に賢いですね、神様のため?」
「ううん、友達が頭がいいの、ねまた会える?」
そう問いかけると菊は儚い顔で答えた。
「ふふ、大丈夫ですよ多分あえますから」
フェリシアーノはその言葉に心底心を踊らせては手を振って教会から出た。
聖歌隊に入った理由は単純、お菓子が貰えるし、好きな歌が歌えてそれを褒めてくれる。祖父は神様を信じることを願うけれど正直そういうのどうでもいい。熱心なカトリック教徒とかじゃないからだ。どちらかと言えば知識がキリスト教寄りなため思考がそう働くが本心は仏教に近いだろう。来世などを考えてしまう時点でキリスト教ではない。
けれど初めてあった天使、ではないのかもしれないがその天使は美しく魅了された。胸の高鳴りが止まずこの調子で行けば神はどれだけ美しいのだろうかと訳の分からないことを考えさせてくれるほどにはだった。
フェリシアーノはこの喜びをどう表現していいのか分からず走って走って風を感じ爽快と言えばよかろうかそれが倍にも感じるほどだった。
嗚呼、なんて天使とは美しいのだろうか。恋だ、これは。胸が締め付けられるほど嬉しいような高鳴りが止まない。いつだって鮮明に思い出せる。あの儚い顔を。そして自分だけが見えるという喜び後優越感がたまらなかった。
そして翌日、教会に行ってまた聖歌を歌う時だ。神父様にクッキーを貰い喜びながら庭に出る。同じところにいるのだろうかときょろきょろすると上から声が聞こえた。
「おや、坊やまた来たんですか」
「え、僕が男って分かるの?」
「何を言いますか、服装や扱われ方こそ女子ですが貴方男の子でしょう? 分かりますよ、それくらい」
そう、声が高くて女の子と間違われがちで、服も似合うと言われてからフリフリの愛らしいものを着て見るようになった。それこそ少年聖歌隊にいない時点で女だと扱われている。それでもいい、別に何も変わらない。元々は男性だけだったとかの話も聞いたことがある。
「愛らしい坊や、貴方に日の祝福を」
「日……?」
「私、日のいづる国出身ですから、まあなり損ないですからね本当に祝福を与えることはできませんよ」
なんて自虐しながら苦笑していた。でもどこか救われそうな笑顔だった。恋をしてしまったフェリシアーノにはどんな姿でも愛らしく、その祝福はもはや呪縛の様だ。
「ねえ、菊に恋をしたらどうなるの」
「変なことを聞きますね、きっと苦しいでしょうよ、私はこの教会から離れられない、無謀な恋ですねえ、まず見えない時点で恋はできませんし、触れるなんて以ての外ですよ、なり損ないの例はないはずですからね、触れてどうなるかなんて記述は……」
つらつらと話される言葉に一目惚れはまるで諦めないで胸を高鳴らせてくれる。心臓の音がうるさい。
「僕、神父様になる」
「へ?」
「そしたら、人を救えて菊も、一緒にいられるから」
「あ、え?」
話が飛びすぎて困惑する菊。2回しか話せていないのにこんなにも鮮明な恋になるのだとフェリシアーノが感心しているうちに菊は混乱がやまず別の方向をむき出す。
「可哀想なお人」
なんて言葉を聞いてそれから毎日のように聖歌隊の活動をした後に菊似合いに行った。絵を描いては菊に見せて、菊を鮮明に覚えて菊を描く。その度に笑う姿はとても愛らしくさらに魅了されては恋をしていた。天使とは何故こんなに愛らしいのか。フェリシアーノに分かるわけがなかった。
それから何年経ったろうか、あの頃からの夢は神父、菊をどうにかするためとしか言いようがなかった知識に教養、聖歌隊は男を隠すことが出来なくなりつつなってからすぐ辞めた。結構早めに分かりやすくなってしまった。正直ゴツゴツしている訳では無いが女のような体という訳でもない。そしてあのころの神父が他界した時、フェリシアーノの願いは叶った。引き継ぐ許可を得たフェリシアーノは見事に神父となった。
「おめでとうございます……見えてます?」
「見えてるよ、ずっとずっと」
「……心変わりしてらっしゃらないんですね」
「どんなベッラより綺麗だったから」
笑って宙に浮く天使に言うと哀れみの目を向ける菊は昔と変わらなかった。いつまで経ってもフェリシアーノの心変わりを待っていた。見えるのはフェリシアーノのみというのがまるで精神異常者と見られてもおかしくないけれど、フェリシアーノは全てを正当化していた。
「明日は日曜ですか、ミサがありますね」
「だね、大事な祈りの日だからね子供のためにお菓子もいるしなぁ」
ミサとはキリスト教における大事な祈り。最後の晩餐を意味しており、大事な感謝の日である。教会では毎週日曜日に行われている。
「あの人にも子供がいたのに何故あなたがやってるんだか」
「無理言ったからね、はは菊のために」
そう、神父にも子供、要するに後継ぎの相手はいた。けれど菊に恋をしてしまったフェリシアーノはその実の息子よりも熱心な態度を表してしまった。
「……話したいことがあります、仕事が終わったら庭に来てください」
「今言えばいいのに」
「忙しそうですからね」
なんて言葉を気がかりにフェリシアーノは仕事をし終えた。案外何も考えずに出来てたかもしれない。神父になりたい思いから神父へ話しかけに言った記憶も残っている。
「きくー!」
庭に出ては直ぐに菊に話しかける。見える。他には誰にも見えなものが。
「話って何?」
「おや、お疲れ様です、なり損ないの天使ってなんなのか知りたいと思いません?」
「あ」
それはフェリシアーノが菊に問うか問わぬかを迷っていた質問であった。本物の天使でない、だけどフェリシアーノにとっては最高に愛らしい天使であった。
「お教え致しましょう」
ニコリと顔だけをフェリシアーノに近づけ宙に浮く菊は触れようにも触れさせなかった。触れたい時に聞くと何があるか分からないの一点張りでなにもさせてくれないのだ。
「私の母様は元々キリスト教徒で日本人のくせに神は1人だとかそれはもう酷くてですね、まあそんなある日私の母は強姦にあって」
「え、つまりそれって」
「運悪く私を妊娠、何を思ったかちゃんと産みはしたんですけど汚らわしいものですからね嫌な顔をされ続け何を考えたのかイタリアに来て私を天使にすることで神に詫びるだとか、聖書にもなんの本にも書いてないことを実行しました」
「成功、したんだ」
「いーえ? なり損ないですから、見た目こそ天使ですが完全なる天界に行けてない上に殺されたこの場所から出れません」
「……菊」
「はい、フェリシアーノくん」
震える指先をうつくしき菊に向ける。汚らわしき行為で生み出された醜くそれでいて最高級に美しい菊。天使とは幻覚か、精神に異常を来たしていてもいいただ目の前にいる琥珀の目を持つ東洋人の天使に触れたかった。
「……」
菊は目を瞑りフェリシアーノを待つ。触れることに対してもう忠告さえも出さなかった。
「冷たい」
笑ってそう言うと触れたことへの実感に肌のやわらかさと人間では無い異常な冷たさどちらにも感激する。
「ああ、そんな菊が心から好き」
「私はそんな貴方しか愛せません」
「俺以外話せないから?」
「ええ、そうです」
そんな言葉に優越感に浸る。
「ふふ、最高級に汚らわしき者であれば一周回り最高級に美しき者ですよ」
神秘的だ。まるでおかしな言動に耳が心地よくそれを受け入れ始める。菊がそういえば全てそう感じる。それまでの話だ。
「可哀想なお人」
魅了されてしまった脳でぼうっと菊を見つめるとフェリシアーノは何も発することかまできずふわふわしていた。
そんな時に唇にふとした感触が現れ理解ができず数秒経った後にフェリシアーノは自身の指で唇に触れた。
「え?」
「いますよ、私は貴方だけが見えているだけで、触れたら感触がこんなにも鮮明にあるんですからね」
終