⚠︎ご本人様たちとは関係・関連ありません
ミンドリー×青井らだお
ドリー「」らだお『』その他「」
警察署内の空気はいつだって慌ただしい。
日報、通報、現場対応。命を預かる現場に、私情を挟む余地なんてないーー
はずだった。
「…また見てるよ、らだお」
書類整理を手伝っていた成瀬が、肘でこつんとらだおの脇腹を突く。
咄嗟に視線をそらしながらも、らだおの目には焼き付いていた。向こうのデスクでコーヒーを飲んでいる警官──ミンドリー。
飄々としていて、見た目もよくて、仕事もできる。
ふざけてるようで、現場では誰より冷静。
一緒に仕事をしていく日々どんどん彼に惹かれてしまっていた。
(でも、そんなの言えるわけないだろ)
ミンドリーは女の子と話すとき、ああいう柔らかい声を出す。
それを見るたびに、胸の奥がずっと疼いていた。
「らだお〜、昼メシ行こーぜ〜!」
廊下から成瀬の声が響く。
無理に笑って立ち上がると、横からもう一人、同僚警官・伊藤ぺいんがぼそっと言った。
「ミンドリーと最近、目ぇ合わせないな」
『……そ、そうか?』
「恋ってのは、バレた時点で終わりなんだよ。隠しとけ、どうせ破裂するからな」
(うわ……なんか、全部見透かされてる)
その夜、らだおは偶然、街中でミンドリーが女の子と歩いているのを見かけた。
しかも相手の女性が、自然にミンドリーの腕に触れ、顔を見上げて微笑んでいた。
遠くからでもわかる。あれは“特別”な顔だった。
らだおは、手にしていた缶コーヒーを落とした。
次の日から、らだおは無意識にミンドリーを避けるようになった。
話しかけられても、短く返すだけ。
視線も合わせない。触れたら、きっと表情に出てしまう。
(だって、俺……こんなに嫉妬してる)
そんな中でもミンドリーは変わらなかった。
いつものようにジョークを飛ばし、成瀬とくだらない話をしながらも、ふと静かになる瞬間がある。
「……ねえ、らだお。最近どうしたの?」
会議後の廊下、人気のない時間。
ミンドリーが真剣な目でらだおを見ていた。
「避けてない?俺のこと」
『……別に。してない』
「嘘。らだお、わかりやすいから」
低く落ち着いた声が耳に残る。
胸の奥に小さな痛みが走るのを、らだおは笑いでごまかした。
『……わかりやすいのは、成瀬だろ。今日だって会議中に居眠りしかけてたし笑』
強引に話題をすり替えると、ミンドリーは一瞬目を細めたあと、小さく笑った。
「……そうやっていつも逃げるんだね」
その声にほんの少しだけ寂しさが混じっているような気がして、らだおは思わず言葉を飲み込んだ。
代わりに、持っていたファイルを持ち直し、足早にすれ違う。
(逃げてる……わかってる。でも、言えるわけない……)
背中に視線を感じながらも、らだおは振り返らなかった。
――その日の夜。
署を出てコンビニに寄ったら、偶然にも外で煙草を吸うミンドリーの姿があった。
街灯に照らされる横顔は、普段の飄々とした彼ではなく、どこか思いつめたようで。
『……また女の子と?』
思わずそんな言葉が喉まで出かかったが、噛み殺した。
代わりに口をついて出たのは、
『煙草、身体に悪いぞ』
という、ごくありふれた言葉だった。
ミンドリーは振り返り、少し驚いた顔をしたあと微笑んだ。
「らだおが言うなら、やめようかな」
軽口なのに、妙にまっすぐで。
らだおは心臓を鷲掴みにされたように胸を押さえた。
『……好きにしろよ』
そう言って背を向ける。
コンビニのドアを押す手が、震えていた。
(だめだ……俺、余計に好きになってる……)
――気持ちはまだ、言えない。
でも、隠そうとすればするほど、彼に気づかれていく気がして。
二人の距離は、少しずつ、じわりじわりと近づいていた。
翌日も、らだおは努めて距離を取った。
書類を受け渡すときも最短の言葉だけで済ませ、昼休みも成瀬や伊藤ぺいんと一緒に食堂へ向かう。
(これでいい……このくらい距離を置けば、変な気持ちなんて見透かされない)
そう思っていたのに。
「らだお、今日パトロール一緒だよ」
振り返れば、にこにこと笑うミンドリー。
無邪気に肩を並べてくるその距離感に、心臓が跳ね上がった。
『……誰が決めたんだよ』
「俺」
『勝手だな』
「らだおと組むと、楽しいからね」
さらりとそんなことを言われ、言葉に詰まる。
成瀬やぺいんが聞いていたら冷やかすだろう。けれど二人きりの廊下では、それがやけにまっすぐに響いてしまう。
(……ずるい。俺のこと、なんにも知らないくせに)
パトロールの車内。
助手席のらだおは、窓の外に視線を固定していた。
それなのに、横からじっと注がれる視線を無視できない。
「らだお、最近ほんと冷たい」
『仕事中だろ』
「そうだね。でも、前はもうちょっと笑ってた」
ハンドルを握る手が止まらないのに、言葉は静かで、真剣だ。
らだおは思わず拳を握った。
『……笑うことなんて、別にないだろ』
「じゃあ俺が笑わせる」
信号待ちでちらりと向けられた笑顔に、胸の奥がぎゅっと痛む。
どうして、避ければ避けるほど近づいてくるんだ。
――そんなやり取りが続くうち、署内の同僚たちも何かを感じ始めていた。
「お前ら最近、コンビ多くね?」
「いやぁ、あれ絶対……」
ひそひそ声が耳に届くたびに、らだおは顔を伏せる。
だが、横に立つミンドリーは気にした様子もなく、いつもの調子で話しかけてきた。
「らだお、今日終わったらラーメン行かない?」
『……また急に』
「らだおが断っても、俺しつこいよ」
にやりと笑うその顔が、本気なのか冗談なのか。
らだおはごまかすように溜息をついた。
(……逃げても逃げても、結局つかまる。ほんと、ずるい男だな)
ラーメンに誘われた日の夜。
結局「残業あるから」と断ってしまったらだおは、帰り道にコンビニへ立ち寄った。
冷蔵ケースに伸ばした手が、ふと止まる。
(……また、かよ)
ガラス越しに見えたのは、外で誰かと話すミンドリーの姿だった。
相手は若い女性。仕事帰りなのか、カジュアルな私服で笑顔を見せている。
女性が冗談を言ったのか、ミンドリーは肩をすくめながら笑った。
その横顔が、らだおの胸に鋭く突き刺さる。
(また……俺の知らない顔だ)
思わずジュースを握りしめる手に力が入った。
ペットボトルの冷たさで、ようやく自分が震えていることに気づく。
女性が軽く腕に触れ、何か耳元で囁く。
それに答えて微笑むミンドリー。
その光景は、先日の夜に見たものとほとんど同じだった。
『……っ』
耐えられず、らだおは商品を戻して店を出た。
視線を下げ、足早に歩く。
背後で呼び止める声があったような気がしたが、聞こえないふりをした。
(俺が避けても、向こうから近づいてきて……でも、結局ああやって女の子と……)
混乱する頭を振り払うように、夜風を吸い込む。
苦いだけで、何の救いにもならなかった。
次の日。
署で顔を合わせても、らだおは極力視線を合わせなかった。
書類を受け取る手も冷たく、返事も素っ気ない。
ミンドリーは困ったように眉を寄せた。
「……らだお、昨日すれ違ったろ。声かけたのに」
『……気づかなかった』
「嘘つき」
さらりと言い切られ、胸が跳ねる。
だが、らだおはそれ以上口を開かなかった。
ただ黙々と仕事に向き合うふりをする。
触れたら、何かが壊れてしまう気がして。
(この気持ち、どうやって隠せばいいんだよ……)
数日後。
「おい、らだお」
背中を叩かれて振り返ると、成瀬とぺいんが並んで立っていた。
「最近、ほんと元気ないよな。なに、失恋?」
『……っ、別に』
「いやいやいや、わかりやすいんだって」
成瀬が笑いながら肘でつつく。
隣でぺいんもじっと観察するように目を細めていた。
「やっぱミンドリーだろ。お前、前はあんなに一緒にいたのに」
『……』
図星すぎて、言葉が出ない。
二人の視線から逃れるように目を逸らしたが、それがもう答えのようなものだった。
「ほら見ろ、当たりだ」
「だな。……よし、今夜飲み行こう。相談乗ってやる」
有無を言わさず肩を掴まれ、らだおはため息をついた。
居酒屋のテーブル。
ジョッキを何杯も空けたら、頭がぼんやりしてきた。
成瀬がくだらない話で笑わせ、ぺいんが相槌を打つ。
いつもなら楽しめる時間なのに、今夜はアルコールのせいで心の奥の蓋が外れやすくなっていた。
「……なぁ、らだお」
成瀬がニヤリと笑う。
「正直に言えよ。お前、ミンドリーのこと好きなんだろ」
『っ、バカ、声でかい……!』
慌てて止めようとするが、口から勝手に言葉が漏れた。
『……好き、なんだよ。ずっと……。でも、言えるわけないだろ』
成瀬とぺいんが目を丸くする。
らだおは頭を抱え、テーブルに突っ伏した。
『あいつは誰にでも優しいし……女の子にだって……俺、ただの同僚だし……。関係壊したくないのに、勝手に嫉妬して……情けないよな』
掠れた声で吐き出した本音に、二人は顔を見合わせた。
「……らだお、お前、思ったより重症だな」
「うん。でも、らだおが本気なのはわかった」
成瀬は笑いながらも、どこか真剣な目をしていた。
「言わなきゃ伝わんねぇよ。あいつ、鈍感だし」
「……だな。意外とらだおのこと、気にしてるっぽいしな」
『……え?』
顔を上げたら、成瀬とぺいんが意味ありげに笑っていた。
「まぁ、そのうち本人から何か言ってくるかもな」
らだおは言葉を失った。
アルコールの熱と混ざって、胸の奥がざわついて仕方がなかった。
翌日、頭が割れそうなくらいの二日酔いで目を覚ましたらだおは、昨夜の断片的な記憶にうなされた。
(……やばい、俺……絶対なんか言った……!)
顔を両手で覆う。心臓がドクドクとうるさい。
成瀬とぺいんの前で喋ってしまった「本音」が頭から離れなかった。
(最悪だ……頼む、口外しないでくれよ……!)
午前中の署内。
頭を抱えつつデスクに座っていると、背後から妙ににやついた声がした。
「おはよ、らだお。昨日けっこう飲んだでしょ?」
『っ……成瀬!』
「顔真っ赤にしてさぁ〜、“ずっと好きなんだよ”とか言ってたよなぁ」
『おっまえ、声下げろ!!』
慌てて制止するが、時すでに遅し。
斜め後ろのデスクから「ん?」と顔を上げた人物がいた。
ミンドリー。
「……好き?」
その一言に、らだおは凍りついた。
成瀬が「やべ」と口を押さえる。
『ち、ちがっ……!何でもない!!』
「何でもなくないでしょ。成瀬、何の話?」
ミンドリーが笑みを浮かべながら近づいてくる。
らだおは必死に椅子を引き、距離をとった。
『な、なにも!ほんとになにも!』
「ふぅん……」
目を細め、じっと見つめてくる。
からかっているようでいて、その奥にわずかな真剣さが見え隠れしていた。
成瀬は小声で「すまん」と謝りつつ、そそくさと席を離れる。
取り残されたらだおは、居心地の悪さに耐えきれず立ち上がった。
『……ちょっと、外回り行ってくる!』
書類を掴み、早足で署を飛び出す。
(……最悪だ……!もう絶対バレてる……)
胸の奥が、恐怖と同時に妙な期待でざわついていた。
夕方。
外回りから戻ったらだおは、署の裏手で待ち伏せていたミンドリーに腕を掴まれた。
「……ちょっと話そ」
低い声。冗談の気配はまるでない。
そのまま無理やり人気のない駐車場の隅へ連れて行かれ、壁際に立たされた。
「成瀬の言ってたこと、ほんとなの?」
『……な、なんのことだよ』
「嘘つくな。……好きな人いるんでしょ?」
真っ直ぐな視線。
らだおは息を飲み、必死に言い返した。
『……っ、だから、なんでミンドリーがそんなこと気にするんだよ!』
一瞬、ミンドリーの瞳が揺れる。
その隙を突くように、らだおの口から抑えていた言葉がこぼれ出た。
『俺が好きって知ってて、わざと聞いてんのか? この前だって……女の子といたろ! 俺、見たんだよ! 同じ子と二回も! どうせ……俺の気持ち知ってて、遊んでんだろ!?』
声が震え、視界が滲む。
必死に堪えていた涙が頬を伝った。
『……もうやめてよ……俺で遊ぶなよ……』
嗚咽混じりの言葉に、さすがのミンドリーも固まった。
慌てて近づき、らだおの肩に触れる。
「……らだお、それ、違う。あの子は、妹だよ」
『……え?』
「俺、家族のことほとんど話してなかったから……誤解させたんだね。ごめん」
必死に説明する声は、いつもの軽口じゃなくて、本気で困っている色を帯びていた。
「遊んでなんかない。……俺が気にするのは、らだおだからだよ」
その言葉に、涙が止まらなくなる。
でも、信じたい気持ちと怖さがせめぎ合い、らだおはただ首を振った。
『……やだ……信じたら、もう戻れない……』
「……無理に答えなくていいよ」
ミンドリーはそう言って、ただ静かにらだおの背中を撫でた。
夜風の中、二人の間に言葉以上の沈黙が広がっていた。
翌日。
らだおは署に出勤して、デスクに座った瞬間から後悔していた。
(……あんな泣き方、俺の人生で初めてだ……最悪……)
机に突っ伏したくなる。
けれど一番怖いのは、その現場を見ていたミンドリーだ。
顔を合わせたら、思い出してしまう。
妹だと説明された安堵も、泣きながらぶつけた自分の想いも。
すべてが頭の中でぐるぐるして、まともに呼吸もできない。
「らだお、おはよ」
その声に背筋が跳ねる。
横を見ると、昨日と変わらない笑顔のミンドリーが立っていた。
『……っ、ああ……おはよう』
できるだけ目を合わせずに返す。
しかし、手渡された書類の端が指先で触れた瞬間、心臓が跳ね上がった。
(やばい……意識しすぎて仕事どころじゃない)
会議中。
他のメンバーが真剣に資料を見ているのに、らだおは全然集中できなかった。
隣の席に座るミンドリーが、ペンを回しながら視線を落としている。
その横顔だけで頭が真っ白になってしまう。
(昨日、“俺が気にするのはらだおだから”って……あれ、本気だったのか……?)
考えるなと思っても、考えずにいられない。
ページをめくるタイミングを間違え、成瀬に「おい、聞いてるか?」と肘でつつかれる始末だった。
昼休み。
食堂へ向かうと、ミンドリーが当然のように隣の席に腰を下ろす。
「らだお、唐揚げ好きだよね。半分やるよ」
『え、いや……いらない……』
「遠慮しなくていいのに」
差し出された箸先に視線を奪われ、頬が熱くなる。
食欲も吹き飛んで、ただお茶を飲んで誤魔化すしかなかった。
(くそ……俺、完全にペース握られてる……!)
その日の終業後。
デスクで残務を片付けていると、背後から囁くような声が落ちてきた。
「……らだお、昨日のこと、まだ気にしてる?」
ペンを握る手が止まる。
心臓が喉までせり上がり、言葉にならない。
『……べつに』
「また嘘」
穏やかに笑う声が耳に刺さる。
らだおは顔を上げられなかった。
(もう……俺のほうが、避けられなくなってる……)
数日後。
夜の繁華街で、窃盗事件の通報が入った。
現場に駆けつけたのは、らだおとミンドリーの二人だった。
通りは人通りも少なく、シャッターの閉まった店が並んでいる。
パトカーのライトが赤く反射して、静けさの中で妙に胸をざわつかせる。
「容疑者、まだ近くにいるはず」
無線を耳に、らだおは足早に路地を確認する。
だが狭い裏道に入った瞬間、不意に腕を引かれた。
「っ……!」
ミンドリーが肩を掴み、壁際に押しやった。
すぐ近くを、フードを被った若い男が駆け抜けていく。
気づかれずに済んだのは、彼の機転のおかげだった。
「……危なかったね」
囁くような声が、耳元に落ちる。
あまりに距離が近すぎて、らだおの呼吸が止まった。
(……心臓がうるさい……聞こえたらどうしよう……)
腕に触れるミンドリーの手は、逞しいのに不思議と優しい。
逃げられない状況に、らだおは顔を背けて答えるしかなかった。
『……っ、ありがと……』
「らだおが怪我したら、俺が困るから」
軽口のように聞こえるのに、その瞳は真剣だった。
暗がりで視線が絡んでしまい、らだおは慌てて押し返した。
『……もういいだろ! 追わないと!』
「……そうだね」
素直に手を離したミンドリーが、少しだけ寂しそうに微笑んだ気がして、らだおは胸を締め付けられた。
容疑者は別のパトロール隊に確保され、任務は無事終了した。
だが署に戻る道中、らだおの頭は仕事よりも先ほどの瞬間でいっぱいだった。
(……なんであんなに近づいてくるんだよ……俺、もう平気な顔できなくなってる……)
視線を外し続けるらだおの横で、ミンドリーは何も言わず、ただ窓の外を見ていた。
その沈黙が、逆に重くて苦しかった。
雨が急に激しく降り出した夕暮れ。
らだおとミンドリーは署からの帰り道、傘も持たずに立ち尽くしていた。
『……まさか、こんなに降るとはな』
らだおは上着で頭を覆い、肩を震わせる。
「はは、俺も予報を確認してなかったよ」
肩を並べて歩くミンドリーは、少し困ったような笑みを浮かべる。
そのまま二人で濡れながら歩くより、安全で乾ける場所へ行くことになった。
「……うち、近いから、寄っていく?」
ミンドリーがさりげなく提案する。
らだおは一瞬ためらったが、雨に打たれてずぶ濡れになるよりはいいと頷く。
雨に濡れたまま、二人はミンドリーの家に入った。
暖房の温かい空気が体を温める中、ミンドリーはそっとタオルを手に取った。
「……らだお、髪、濡れてるな」
そう言いながら、優しくらだおの頭に手を添え、タオルで丁寧に髪を拭き始める。
らだおは頬を赤くして俯く。
その様子を見たミンドリーは、少し距離を詰め、顔を近づけて囁く。
「ねえ、俺が近づくと困る?」
『……っ……こ、困る……』
声が震え、らだおの胸は高鳴る。
「俺の気持ちは遊びじゃないって分かったでしょ」
『……あ……』
視線を逸らせず、顔が熱くなる。
「俺、本気なんだけど」
タオルを置き、そっとらだおの頬に手を添える。
赤く染まった顔を見て、ミンドリーは優しく笑った。
「……そんな顔されたら、期待しちゃうな」
らだおは息を詰め、胸がぎゅっと締め付けられる。
視線を逸らそうとしても、ミンドリーの真剣な瞳に引き寄せられ、動けなかった。
雨音が窓を打つ中、二人だけの世界が静かに、でも確かに熱を帯びていった。
ミンドリーの手がらだおの頬に触れたまま、二人の視線は絡んで離れられない。
息が重なり、胸の高鳴りが互いに伝わる。
「……らだお、可愛いね」
ミンドリーがそっと囁き、わずかに顔を傾ける。
らだおは目を閉じ、心臓が破れそうなほど鼓動する。
(……っ、これ……どうしよう……)
だが、視線の先にあるのは真剣で優しいミンドリーの顔。
全てを許されるような、でも熱く迫る視線。
「……らだお、俺……」
言葉が途切れた瞬間、唇が重なる。
柔らかく、でも確かな力で触れる唇。
らだおの体がびくんと反応し、思わず手でミンドリーの肩に触れる。
「……っ……!」
初めての感触に、らだおは息を詰め、心がぎゅっと締め付けられる。
ミンドリーはゆっくりと唇を重ね、互いの呼吸を感じながらそっと引き離す。
1回引き離したかと思えば、またキスをされる。深いキス。舌先を絡め合い、激しいキスにらだおは思わず声が出てしまう。
『んッ、んん…!』
雨音が遠くに感じられるほど、二人だけの世界がそこにあった。
らだおはまだ混乱しているけれど、確かに感じた温もりと真剣さに心を委ねていた。
キスの余韻でらだおが動揺していると、ミンドリーがふっと顔を離した。
「……ごめん、いきなりキスとか、急かしすぎたね」
優しく微笑み、らだおの髪を指で整えながら続ける。
「今日は泊まっていきな。これ以上、変なことはしないから」
『……え……』
らだおは胸がドキドキして、言葉がうまく出ない。
お風呂から出たら、家中にいい匂いが漂っていた。
キッチンではミンドリーが夜ご飯を作っている。
「……これ、めっちゃ美味い!」
らだおが思わず声を上げると、ミンドリーは少 し照れながらも微笑む。
「喜んでもらえてよかった」
二人で食卓を囲み、自然な会話と笑顔が広がる。
雨で濡れた一日の疲れが、少しずつ和らいでいく。
夜。ベッドは一つしかなく、ミンドリーはソファで寝るつもりだった。
「らだお、俺ソファで寝るから、ベッド使いな」
『……でも、申し訳ない……』
らだおは小さくためらいながらも、勇気を出して言う。
『一緒に、ベッドで寝ようよ』
ミンドリーは一瞬、意表を突かれたように目を細める。
「……変なことするかもよ?」
と、らだおを断らせようと冗談混じりに言う。
『……いいよ』
らだおの「いいよ」に、ミンドリーの表情が一瞬、揺れた。
「……らだおさぁ、」
少し息を詰め、視線を絡めるように近づく。
「ホント襲っちゃうよ?」
冗談めかした声だけど、目は真剣で、らだおの胸はドキリと跳ねる。
『……だから、いいよって!』
思わず顔を背けながら言うらだお。
でも、心の奥は逃げるどころか、ミンドリーに引き寄せられる気持ちでいっぱいだった。
ミンドリーはしばらく黙って、らだおの反応を確かめるように見つめる。
そして、表情が徐々に真剣になり、静かに距離を詰めた。
「……それ、本気?」
声のトーンが低く、空気が一気に張り詰める。
らだおは目を逸らさず、真剣な瞳で答えた。
『……好きだから』
ついに、胸の奥で押さえていた言葉を口にする。
その瞬間、ミンドリーの肩の力が抜け、安堵と喜びが入り混じった笑みを浮かべる。
「……やっと言ってくれたね」
そう囁き、そっとらだおを抱きしめる。
らだおも自然にミンドリーの胸に顔を埋め、温もりと安心感に包まれた。
雨音が窓を叩く音が、まるで二人の時間を祝福するように感じられた。
一旦終わりだけど、続き書こうかなって思ってます!!続きは、2人の気持ちがやっと通じあったけど、らだおは、これって付き合ってるのかな?今どうゆう関係?てなってしまう展開!!次はR18要素も入れようかな😋
コメント
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初コメ失礼します! 尊いッッッッッ😇😇 うっぱっぱぁっすよッ(?) 続き待ってます!!