テラーノベル
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目が覚めたときには、もう光が強かった。
一瞬で嫌な予感がして慌てて身体を起こす
時計を見て息が止まる
8時前。
完全に遅刻寸前
「……っ」
急いで動こうとして、身体が少し遅れる
鈍い重さが残っていて、思うように力が入らない
その感覚に一瞬だけ意識が引っ張られるけど
それどころじゃない、と振り払う
「おはよ」
部屋の外から落ち着いた声がかかる
焦っているこっちとは対照的に、
何事もないみたいなトーンで
ベッドから出ていくともう準備は整っていた。
テーブルの上にはコーヒー
それに軽く食べられるものも置いてある
「時間ないだろ、食えるだけ食って」
当たり前みたいに言われて言葉に詰まる
どうして、とさえ思う。
なんでこんなに普通なんだろうって
「……ありがと」
小さく言うと、「ん。 」とだけ返事が返ってくる。
それ以上でもそれ以下でもない
急いで支度を済ませて玄関に立つ。
靴を履きながらふと視線を感じて顔を上げると
昨日と、同じ勇ちゃん
「間に合いそ?」
「……たぶん」
短いやり取り
それだけなのに妙に距離が近く感じられた
ドアに手をかけたとき
「舜太」
呼び止められて、振り向く
「次、ちゃんと付けていいからな」
軽い調子で、何でもないことみたいに言われる。
一瞬頭が追いつかない
そのあとで 昨日のことと 繋がって…
「……え、あ、」
一気に熱が上がる。
何も言えなくてただ視線が揺れる
「薄いから分かりにくかったし」
追い打ちみたいにさらっと続く
悪びれもなく、ただの事実みたいに
言葉が出ない
否定もできないし肯定なんてもっとできない
ただ、どう反応していいか分からなくて
そのまま立ち尽くす。
「ほら、遅れるぞ」
軽く促されてはっと我に返る
「…い…ってきます」
逃げるみたいにそう言ってドアを開ける
外に出た瞬間、少しだけ冷たい空気が頬に触れる
それでも、さっきの熱は全然引かなくて
顔がずっと熱いまま。
さっきの言葉が何度も頭の中で繰り返される。
“ちゃんと付けていい”
あれは、許可なのか
それともただの冗談なのか
分からないまま足だけが前に進む。
でも、ひとつだけ
ほんの少しだけ、昨日までとは違う感覚が残っていた。
少しだけ、“自分から触れてもいい”側に寄った気がしてしまった
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#美しい彼
コメント
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続きが本当に楽しみです♪😭今日更新待ってます‼︎