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体育祭当日。
校庭は歓声と太鼓の音でいっぱいで、青空の下、色とりどりのユニフォームが揺れている。
クラスごとの応援団が声を張り上げて、笑い声や掛け声が入り混じる。
観客席に座ると、隣には自然に黒名先輩がいる。
黒名「暑いな」
無言で手が私の指先に触れ、そっと握られる。
その距離感だけで、胸がじんわり熱くなる。
黒名「こっち見て」
競技に夢中になっている私を、低く囁くように促す。
視線を合わせると、先輩はほんの少しだけ目を細め、何も言わず手の力を少し強くする。
周りの歓声や応援の声が、まるで遠く消えたみたいに感じられる。
リレーが始まると、仲間たちの声援がさらに大きくなる。
走る選手たちを見つめながら、つい先輩の指を握り返す。
黒名「…..気になる奴、いる?」
ふいに聞かれて、思わず固まる。
真白「え、えっと…….いません!」
慌てて答える私に、先輩は短く首を傾げるだけ。
でも、その目線と握ったてから伝わるものは十分すぎる。
競技がひと段落ついたあとも、手を握ったまま隣で座る黒名先輩。
風が少し吹いて、校庭のざわめきに混ざる笑い声や太鼓の音が、なんだか二人だけの世界みたいに感じられる。
黒名「……離さない」
低く、でも確かに響くその声、自然と頷いてしまった。
周りの賑やかさの中で、こんなに心が落ち着く瞬間は初めてだった。
人混みの中にいても、手を握ったままの距離で感じる温かさが、何よりも特別に思えた。