テラーノベル
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※エロないです。なぜかセンシティブ認定されました※
『そんでこれが〜その時酔っ払ってたシードちゃん!』
ディスコに泥酔したシードが前後不覚になっている動画が貼られる。
『ちょっ、りぃちょくんそれは出したら俺の威厳が』
『元々お前に威厳もクソもないだろこどおじ』
『黙れハゲ』
「マジでこのシード千鳥足じゃんウケる」
『千鳥足の人間をドラマとアニメ以外で初めて見たわ』
ひとしきり動画の中のよちよちシードをいじり倒したあたりで、ふと、キャメの顔が脳裏に浮かぶ。俺の大事な大事な恋人。せっかく面白い動画なのに、キャメは今オフラインだ。というか、ここ数日キャメと話していない気がする。最後に撮影や女研の配信以外で話したの、いつだ?
「なんか俺、キャメに避けられてる気がする」
『そうなん?ケンカか?』
『ニキくんが自意識過剰なだけじゃない?』
『100億%ニキがなんかしたせいじゃろ』
「みんなひどくね!?」
『ニキニキの普段の行いだよね〜』
あまりにも信用が無さすぎて我ながら悲しくなってきた。でも喧嘩した記憶はないし、何かキャメを怒らせるようなことをした記憶もない。あれ、でも無意識下で何かしたのかな?
真剣に自分の行動を振り返っていると、通話参加音がして、画面にキャメのアイコンが表示される。
『あっ、キャメさんだ。おつ〜』
『お疲れ〜』
『今ね〜ニキニキがなんかやらかしたんじゃね?って話してたとこ』
「いややらかしたことは確定してねぇよ!?」
かもしれない、だけだ。まだ。それに本当に俺が自意識過剰なだけという可能性もある。現にこうしてキャメはディスコに上がってきたし。
『あっ、そ、そうなんだ。ごめん、ちょっと用事思い出したから落ちるね。またね』
「えっ」
退室音。自然と、みんな黙ってしまう。
『え、ガチじゃね……?』
『マジでニキなにしたん?』
「いやだから何もしてないんだって!!多分!!」
『いや流石にあの露骨さはニキくんがなんかしてるでしょ』
本当に心当たりがないのだ。みんなには自分の行いをもっと省みろだの、さっさと謝れだの、やんややんやと言われたけれど、キャメが怒っていた場合、原因のわからないままとりあえず謝る方が悪化する気がする。
色々と考えてみたが、結局、何もわからないまま、再びキャメが参加してくることもなく1日が終わった。
1週間後。
マジで避けられている。いや、週一の女研ラジオではちゃんと会話するし、撮影でもちゃんと会話する。会議でも意見交換はする。でも、なんというのだろう、いわゆる”仕事”以外での会話が、マジでない。
撮影後特に用事がなければみんなでそのまま駄弁ることも多いのに、毎回そそくさと退室してしまうし、たまには2人で配信しようと誘っても、あの日もダメこの日もダメと、何かにつけて断られている。
チャットはちゃんと返信が来るので、何かしたか聞いてみても「何もしてないし避けてないよ。ニキくんの気のせいだと思う」の一点張り。
「気のせいなんだったら俺と配信しろよぉ……」
編集作業をしながら半泣きでぼやけば、一緒にディスコに上がっていたキルに一言『ウザ』と言われた。
「キルちゃんは童貞だから俺の気持ちがわかんないんだぁ」
正直、こんなに自分が恋人と話したいと思うタイプだとは思っていなかった。今まで比較的ドライというか、自分の中では活動が1番で、そこを理解してくれなさそうな恋人は無理だななんて思っていたのだ。それが、恋人と1週間話ができないだけでこの体たらくである。
『てか恋人ならデートの予定とかあるんじゃないの。そこで会えるじゃん』
「って思うじゃん?次のデートの予定決める前にこの状態だから会う予定も立てられねぇのよ」
『チャットなら返ってくるんでしょ?チャットで決めろよ予定くらい』
「2人で配信しよって誘っても全部断られてんのにデートの予定立てられる図太い神経は俺にはありませ〜ん。俺キルちゃんと違って繊細なの」
『お前が繊細なら世の中の人間みんなガラス細工だわ』
軽口を叩いてはいるが、内心は本当に泣きそうである。仮にデートをしようとチャットをして、それすら断られたとしたら、多分俺は立ち直れない。何かしたなら言って欲しい。それで俺に原因があるなら改善するし、もしどうしても俺が嫌いなのであれば……嫌だけど、別れる選択肢もある。とても嫌だけど。
「う〜……」
正直、編集作業にも全く身が入っていない。撮影済みの動画のサムネイルを眺めているだけである。そんな俺の様子に、キルが盛大にため息をついた。
『もうさー、家行ったら?知ってんでしょ?家行って直接腹割って話してこいよ』
「でも俺を避けてるのに家凸したらマジで嫌われちゃうかもしれないじゃん……」
『現状外野から見たらもう十分嫌われてんだって。それで玉砕して破局したら飲み行って慰めてやるからさっさと解決しなよ。毎日ディスコでウジウジウジウジうざいって』
言葉は乱暴だが、キルなりの励ましと応援である。そんな言葉に背中を押され、俺はキャメの家に突撃する覚悟を決めたのだった。
「……」
俺は今キャメの家の前にいる。今日キャメが家にいることは他のメンバーにそれとなく聞いてもらって把握済みだ。
なんだかストーカーみたいで悲しくなってくるが、避けられているのだから仕方ない。
でも、これで家に入れてもらえず門前払いだったらどうしよう。そもそもインターホンカメラで俺を確認した上で居留守を使われる可能性もある。そうなったら多分キルの慰め程度では回復できないくらいの大ダメージを喰らう。怖い。やっぱ帰ろうかな。でもこの状況が続くのも耐えられない。でも怖い。何度も同じことを逡巡して、インターホンに手を伸ばしては引っ込め、を繰り返す。
外から見たら完全に不審者である。
「……ふー……」
不審者として通報されてしまっては元も子もないので、俺は静かに息を吐くと、通算n回目、インターホンに手を伸ばし、今度はしっかりとボタンを押した。
ピンポーン
呼び出し音がやたらと遠くに感じる。出てくれますように。居留守より門前払いの方がいいです。せめて俺に向けて喋ってくれる声が聞きたいです。お願いします。
そんな切実な祈りも虚しく、インターホンからは何の声もしない。
「………ぅ」
やばい、泣きそう。もうこれは、キルだけじゃなくて全員巻き込んで俺を慰めろの会を開催しよう。そうしよう。
そんなことを考えて踵を返そうとしたら、ガチャリと、鍵を回す音が聞こえて鼓動が跳ねる。
扉が開くのが、やけにゆっくりに見えた。あまりにも衝撃的なことが起こると映像はスローモーションになるって聞いたことがあるけど、マジでそうなんだ。どこか現実逃避気味にそんなこと考えていた俺は、扉の向こうから出て来た赤毛に、今度こそ本当に泣いた。
「きゃめぇ……」
「はっ!?えっ!?」
ボロボロと涙をこぼす俺に、キャメが狼狽えている。それはそうだ。アポ無しで家に訪ねて来た人間が突然泣き出したら誰だってそうなる。でも居留守でも門前払いでもなくちゃんと対面してくれた、その安堵感で一気に気が抜けてしまって、涙は止まりそうにない。
とりあえず上がって、とキャメに促されるまま家に入り、通された部屋のソファの上でひとしきり泣いた。キャメはスポドリのペットボトルを持って来て俺の前に置くと、心配そうにこちらを伺いながらも、泣き止むまで待ってくれた。
「ごめ……もう大丈夫」
ティッシュで鼻をかんで、スポドリを煽る。スポドリ特有の甘さでさらに気持ちを落ち着けた俺は、ゆっくりとキャメに向き直った。
「急に来てごめん」
「ううん、びっくりしたけど俺は大丈夫。それより……泣いてたけど……大丈夫……?」
「大丈夫かどうかは半々なんだけど……率直に。キャメ、俺のこと避けてたじゃん。何で?」
「えっ、避けてない、よ」
わかりやすく目が逸らされた。ひとしきり泣いてちょっと肝が据わった俺は、キャメの頬を両手で挟んでこちらに向かせる。もう、ここまで来たんだ。最悪の結果だったとして、最後に話せたんだから良しとしようじゃないか。
「嘘。俺との配信もしてくれないし、撮影後にみんなで駄弁ってても、すぐ抜けちゃうし。俺がディスコにいる時絶対上がってこないし。避けてたよ」
「それ、は……」
「俺のこと嫌いになっちゃったなら、それはそれでいいよ。でも、何も言わずには俺も納得できんしさ。俺が何かしたなら、ちゃんと言って」
そういうと、キャメは結構な力でぶんぶんと首を横に振った。
「ニキくんは何もしてないよ!嫌いになってもない!」
「じゃあどうして俺と話してくれなかったん?」
逡巡するように、キャメの瞳が揺れた。何か言おうと少し開かれた口が閉じる。キャメの頬から手を離し、言葉が紡がれるのを静かに待つ。
少しの空白の後、俯きがちなキャメから発せられた言葉は。
「……話すと、会いたくなっちゃうから……」
……ん?え??今なんて???
フリーズしてる俺を気にもせず、キャメの口は止まらない。
「ニキくん忙しいし……会いたいって言ったら迷惑かなって……声を聞くと会いたくなっちゃうけど、完全に声を聞かないはどうしても無理だから……仕事以外で話さないように、してた」
キャメの言葉をゆっくりと頭の中で反芻する。
声を聞くと、会いたくなっちゃうから、仕事以外で、話さないように、してた。
「はぁああああああああああ」
あまりにもいじらしい理由に、盛大なため息が出た。そして力が抜けて、ソファの背にもたれかかる。可愛すぎないか。こんなことで俺は悩んで振り回されていたのか。優しいキャメらしいといえばらしいが、あまりにも、俺の心臓に悪い。
俺のため息にびくりと身体を揺らしたキャメは上目がちにこちらをうかがっていた。元々可愛く思えるが、あんな理由を聞いた後だと、余計に可愛く見える。
「会いたくなったら、会おうよ」
「え?」
「俺ら恋人でしょ?会おうよ。いつでも会うよ。キャメが会いたくなったら、早朝でも夜中でも、会おうよ」
「……重くない……?」
「重くない重くない!むしろ距離置かれる方がキツイ!ほんとに!」
「そっかぁ」
ふにゃりと、キャメが笑った。ホッとした、柔らかい笑顔。うーん、可愛い。
キャメをぎゅっと抱きしめて、その肩口に顔を埋める。
「だからさ、もう避けないでよ」
俺が無理だから。
そう言うと腕を背中に回され、あやすようにポンポンと叩かれた。
「そうだね。ニキくん泣いちゃうもんね」
「それはそうなんだけどあの涙はまた別というか!てか俺が泣いたこと誰にも言わないでね!?」
「えー、可愛かったけど」
「そういう問題じゃなく!」
くすくすと笑うキャメの声を聞きながら幸せだなぁと、また少し泣きそうになってしまった。
#ご本人様とは一切関係ありません
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コメント
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みみさん、第3話読みました〜! もうね、最初から最後まで「ああああ〜!」ってなりっぱなしでした😂 ニキくんがキャメに避けられてるってウジウジし始めてからの、キルとのやり取りがもうリアルで笑っちゃった。でも「家行ったら?」って背中押してくれるところ、友達っていいなって思いました。 で、家凸からの泣き出すニキくん!「きゃめぇ…」って泣くの可愛すぎるでしょ!😂💦 そしてキャメの「話すと会いたくなっちゃうから」っていう理由…もう愛おしすぎる。“重くない?”って聞くキャメに“重くない!”って即答するニキくんのやり取りが、もう尊すぎて胸がギュッと締め付けられました。 すれ違いの不安から一転して、お互い想い合ってることがちゃんと伝わるラスト、すごく好きです。2人とも可愛い〜!次のエピも楽しみにしてます🌷