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夜。
桃が小さく息を吐いた。
「……今日は俺、下で寝よっかな」
茈が顔を上げる。
「俺も」
赫が腕を組む。
「翠にぃ、一人にするとか無理」
黈は翠の手を握ったまま小さく頷いた。
「ここで寝よ」
瑞がぱっと立ち上がる。
「布団いっぱい持ってくる!」
ばたばたと動き出す兄弟たち。
リビングに布団が何枚も敷かれていく。
真ん中に翠。
その周りを囲むみたいに、五人。
桃は翠の頭側。
茈は壁側。
赫は翠の足元に近いところ。
黈は翠の手を握れる距離。
瑞は翠の腕にぴったりくっつく。
「密集しすぎだろ笑」って茈が言う。
「暑くね?」って赫。
「そりゃ、こんだけくっついてたらな笑」って桃。
「暑かったら桃にぃがどけるよ」って瑞。
「子供体温なんは瑞ちゃんやろ」って黈。
静かに笑いが起きる。
翠は起きない。
呼吸は、ちゃんと深い。
胸がゆっくり上下してる。
誰かが夜中に目を覚ますたび、
無意識に翠の呼吸を確認する。
桃は三回。
茈は二回。
赫は一回、でもその一回が長い。
黈は何度も目が覚める。
瑞は途中で起きることはないけど、
寝返り打って、翠に更にくっつく。
でも。
翠は一度も目を覚まさなかった。
朝。
カーテンの隙間から光が差し込む。
最初に起きたのは茈。
天井を見てから、翠を見る。
寝てる。
次に桃が起きる。
無言で頷き合う。
まだ寝てる。
赫がもぞっと起きて、寝ぼけた声で言う。
「……翠にぃ?」
反応なし。
黈がそっと顔を覗き込む。
「ちゃんと寝てるね」
瑞が目を擦りながら言う。
「翠にぃ、ずっと寝てたよ」
誰も慌てない。
誰も起こさない。
ただ、そこにいる。
桃が小さく言う。
「今日は、こいつが起きるまで家静かにしよ」
赫がうなずく。
「俺、学校遅れてもいい」
「それは却下」って茈が即答する。
小さく笑いが起きる。
翠はまだ眠ってる。
守られてることも知らずに。
でも。
その真ん中で、ちゃんと守られてる。
今日は何も起きない朝。
それだけで、奇跡みたいな朝。
コメント
3件
ああ〜〜〜もうこのエピソード沁みた😭💕💕 翠くんを囲んで兄弟みんなで寝るシーン、静かだけどめちゃくちゃ温かくて……「守られてることも知らずに」のとこで泣きそうになったよ…! それぞれの寝る位置とか、夜中に何回も呼吸確認してるとか、愛しかないじゃん…🥺💞 喧嘩や痛みばかりじゃなくて、こういう「ただそばにいる」日常が染みる作品、大好きです。今日は何も起きない朝、それだけで奇跡みたいって表現、最高だった…!! こはゆさん、本当にありがとうございます🌸✨