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通過儀礼が終わり、日が沈んだ頃
夕食の時間
脱落者の乗る馬車を思い出し
手帳を書いていた
まだ初日なのに、と思う反面
自分もどこか不安を抱えている
明日から訓練が始まる
確か、ワイヤー訓練だったか
…初歩の初歩だが、私に出来るだろうか
「ヘリス、早く食べたほうが良い」
『ちょっと待って…このページだけ書いておきたい…』
騒騒しい食堂内で、左側からミカサの声がした
綴るペンの音がその声に被せ続ける
1日目の事だ
出来る限り書いておきたかった
「…ヘリス。」
しかし、その思いも、ミカサの声で止まった
顔を上げてみれば
エレンと短髪の少年が睨み合っていたんだ
ミカサの眼光に心配が映る
先程までエレンは皆んなに質問攻めにあっていた筈だが…
いつの間にあんなピリピリしたことになっていたんだ?
如何せん話を聞いて無くて分からない
『大丈夫だよミカサ。初日に喧嘩なんか早々無いよ。それにもうお互いに12歳なんだよ』
なんだかこんな事を言うと、昔のことを思い出す
エレンが突発的に行動して
ミカサにそれが心配し
私やアルミンが宥める
変わらない構図に少しだけ頬が緩んだ
私がそう思った途端、鐘の音が鳴る
予想的中、と言った所か
二人もその音で冷静になり
手を合わせ、それでおしまい。
あぁ良かったと考えながら、スープを口に運んだ
「ごめん。私はもう行く。エレンが行ってしまったから…」
『あぁ大丈夫だよ、私もご飯食べたら部屋に行く。また明日』
ミカサとエレンの食堂を去る後ろ姿を見届けた後
指先で手帳を閉じた。