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この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。絶対に本人様や関係者の方に迷惑をかけないでください。理解できない方、二次創作や架空パロディが苦手な方は、このままページを閉じるかブラウザバックをお願いします。
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○本作は実在のVtuber様のお名前をお借りした個人の妄想(世界観捏造・設定改変パロディ)です。
○スクリーンショット等の無断転載・SNSへの拡散も厳禁です。
ルールを守って、ひっそりとお楽しみください。
苗字は気にしないでいただけると…🙌🙇🙏
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【第五章 赤い結び目は、ほどけない】
白い光が夜の境内を照らしていた。
ショウの右手に集まった霊力は今にも弾けそうなほど強く輝いている。
あと少し。
あと少し、その手を振り下ろせば。
目の前の悪狐を、討てる。
神々に命じられた通りに。
天狐として正しいことを。
「…なんで」
ショウの唇が震えた。
「なんで、避けないんですか」
ロウは答えなかった。
切っ先をショウに向けたまま、ただまっすぐにこちらを見ている。
「避けようと思えば避けられるでしょう。あなたなら…!」
「さあな」
「ロウ…!」
「うるせえな。自分で考えろってさっき言っただろ」
その声はいつものように意地悪だった。
けれど。
ショウには分かってしまった。
ロウは、逃げていない。
逃げるつもりが無いのだ。
ショウが本当に自分を討つのか。
それとも、初めて自分自身の意思で何かを選ぶのか。
その答えを待っている。
「…ずるいですよ」
ショウは笑おうとした。
いつものように。
困ったように眉を下げて仕方ないなと笑って。
そうすれば、ロウもきっといつもの顔で笑い返してくれると思った。
けれど、口元は少しも動かなかった。
「そんなの…ずるいじゃないですか」
「何が」
「俺に、決めさせるなんて」
「お前の人生だろ」
ロウは静かに言った。
「俺のために生きろなんて言った覚えねえよ」
ショウの指先から白い光がひとつこぼれ落ちた。
「俺は…」
言葉が続かない。
俺はロウを守りたかった。
ロウと、もう一度ここで暮らしたかった。
ロウに強くなったなって笑ってほしかった。
そして今。
ロウを殺せと言われている。
守るために強くなったはずなのに。
どうして、強くなった先にロウを失う未来しかないのだろう。
「…ロウは俺にどうしてほしいんですか」
ロウの目がわずかに細められた。
「それ聞くのかよ」
「俺が殺すなって言ったら殺さねえの?」
ショウは答えられなかった。
「俺が殺せって言ったら殺すのか?」
「…ちが」
「何が違うんだよ」
ロウの声が初めて境内に鋭く響いた。
「結局お前は誰かの言葉がねえと動けねえのかよ」
ショウの胸がぎゅっと締め付けられた。
言い返せなかった。
だって、その通りだったから。
あの日、謎の人間に言われた言葉。
神域で与えられた教え。
天狐としての役目。
正しさ。
守るべきもの。
一つ一つ積み重ねるたび、ショウは強くなった。
けれどその強さの中に。
自分自身の願いはどれだけ残っていただろう。
「俺は」
ロウがふいに視線を落とした。
ショウの髪に結ばれた赤い几帳結び。
そして、自分の髪にも結ばれた同じ赤。
「お前が帰ってきたら、文句のひとつでも言ってやろうと思ってた」
「…え?」
「勝手に出て行きやがって。勝手に強くなって。勝手に知らねえ名前まで背負って」
ロウは笑った。
いつもの少し人を小馬鹿にしたような笑い方。
「で、帰ってきたと思ったら俺を殺しに来たって?」
「…っロウ」
「傑作だな」
笑っているのに。
その目は少しも笑っていなかった。
「…遅えよ」
ぽつりと落ちた声は今までで1番小さかった。
「帰ってくるのも、俺のこと分かった気になるのも、全部」
ショウは手を下ろしかけた。
その瞬間。
空気が凍りついた。
境内を囲む木々が一斉にざわめき、夜空に白い紋様が浮かび上がる。
神域の印。
『天狐、星導ショウ』
声が響いた。
男とも女ともつかない、冷たい声。
『命令を遂行せよ』
ショウの肩が跳ねた。
『悪狐、小柳ロウを討て』
ロウは空を見上げた。
それからショウを見た。
「…ほらな」
小さく笑う。
「お迎えが来たぞ。天狐様」
「やめてください」
『命令の背反は天狐の資格を剥奪する』
『その力を失えば、お前が守ろうとしたもの全てが失われる』
脳裏に浮かぶのは、神域で出会った人々。
自分に術を教えてくれた者たち。
守ると誓った人間たちら、
そして。
誰もいなくなった古い神社。
ロウと2人で過ごしたこの場所。
『選べ』
声が告げる。
『天狐としての使命か。それとも悪狐への情か』
ショウは目を閉じた。
情。
そんな簡単な言葉で片付けないでほしかった。
ロウはただの討伐対象なんかじゃない。
自分が初めて名前を呼んだ相手。
くだらないことで喧嘩して、木の実を取り合って。
帰りが遅ければ心配して、隣にいることが当たり前だった。
世界でたったひとりの、双子の片割れ。
それを。
情と呼ぶのなら。
「…俺は」
ショウが目を開けた。
白い光はまだ消えていなかった。
「俺は、あなたを」
ロウは何も言わなかった。
ただ剣を握る手に力を込める。
待っている。
あの日と同じように。
ショウが何を選ぶのか。
けれど、あの人は違う。
今度は選んだ先に別れがあふ。
ショウは震える手を上げた。
そして。
その手をロウではなく、紋様へと向けた。
「…っショウ!?」
白い光が弾けた。
天狐の証にひびが入る。
激痛に膝が折れかけた。それでもショウは術を止めなかった。
神域の紋様が一つ、また一つと砕けていく。
『何をしている』
「俺は」
声が震える。
怖かった。
自分が信じてきたものを失うのが。
守ってきたものを失うのが。
そして何より。
これほどまでに強くなってもらロウを守れる保証なんてどこにも無いことが。
「俺は、ロウを討ちたくない」
言った。
初めて、誰の言葉でもなく。
自分の言葉で。
「…だから、俺は」
最後の紋様が砕けた。
光が消える。
境内に静寂が戻った。
ロウは剣を下ろさなかった。
「…馬鹿じゃねえの」
低い声だった。
「お前、それがどういう意味か分かってんの?」
「…はい」
「もう、戻れねえぞ」
「はい」
「天狐じゃなくなる。守れるもんも、守れなくなるかもしれねえ 」
「分かってます」
ショウは笑った。
今度こそ、ほんの少しだけ。
「でと、俺が俺の意思で選んだことですから」
ロウは何かを言いかけた。
けれど。
その言葉が出るより先に、ショウの背後ぇ赤い彼岸花が一斉に開いた。
風もないのに花弁が揺れる。
境内の奥。
誰もいないはずの拝殿の前に1人の人影が立っていた。
あの日、2人に言葉を残したあの人間。
「よく選んだね」
穏やかな声。
まるで、最初からこうなると知っていたかのように。
ショウは振り返った。
「…あなたは」
「これで、ようやく始められる」
人影は微笑んだ。
「片方は正しさを捨てた。もう片方は正しさを拒んだ」
ロウの剣先が人影へと向けられる。
「…何が目的だ」
「簡単なことだよ」
人影は2人の赤い結び目を見つめた。
「君たちが同じ場所に戻れるかどうか。これを見たかっただけだ」
ショウの顔から血の気が引いた。
ロウの目が細くなる。
「…ふざけんな」
低く、唸るような声。
「俺たちを使って、何をしようとしてた」
「何も」
人影は答えた。
「選んだのは君たち自身だ」
その言葉にショウは息を呑んだ。
確かに、選んだのは自分だ。
ロウを討たないと決めたのも。
天狐の証を捨てたのもり
自分の意思だった。
だからこそ。
その選択の先に何が待っているのか、もう誰にも尋ねることはできない。
人影は静かに踵を返した。
「いつかまた、同じ場所で」
その言葉だけを残して。
赤い彼岸花の向こうへ消えて行った。
しばらく2人は動かなかった。
やがてロウが剣を収めた。
「…帰るぞ」
「…え?」
「ここで突っ立ってても、何も変わんねえだろ」
ロウは歩き出す。
昔と同じように、少しだけ先を歩いて。
ショウはその背中を見つめた。
追いかけて良いのだろうか。
隣に並んで良いのだろうか。
もう、何もかもが昔と違うのに。
「…ロウ」
「何」
「俺、もう天狐じゃないです」
「知ってる」
「…それでも 」
ショウは一歩だけ踏み出した。
「一緒にいても、良いですか」
ロウは立ち止まった。
振り返らない。
長い沈黙のあと。
「勝手にしろ」
それだけだった。
ショウは目を伏せた。
嬉しいのか、悲しいのか、自分でも分からなかった。
ただ、ロウの背中が昔より少しだけ遠く見えた。
2人の頭には、同じ赤い几帳結びが揺れていた。
けれど。
赤い結び目は、2人を結び直してはくれなかった。
それでも、解けることもなかった。
__いつかまた、同じ場所で。
その言葉が約束なのか、呪いなのか。
まだ、誰にも分からない。
完結
コメント
5件
近年稀に見る神作 ガチ泣いたありがとう
うわあ……この第5話、重かったですね。ショウが「自分の言葉で」ロウを討たないと決めた瞬間、本当に息が止まるかと思いました。天狐の証を自ら砕く選択、その代償を承知で「一緒にいても良いですか」と訊く姿に胸がぎゅっとなりました。赤い几帳結びが「結び直せなかった」のに「解けもしなかった」——この描写、象徴的で美しい。影の人物の「いつかまた、同じ場所で」が約束なのか呪いなのか、まだわからない余韻がたまりません。双子の関係性の機微が本当に繊細で、素晴らしかったです。