テラーノベル
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街の喧騒から身を包むようにイヤホンを耳にはめ、音楽を流す。
それから歩みを進めると、目に付いたのはビッグパネル。
そのビッグパネルに貼り付けられている写真に映ってるのは俺の幼馴染だ。
w「 お客様、本日はどのような髪型にされますか? 」
「 えーっと今日は、若井さんみたいな髪型でお願いしますっ! 」
w「 えっ、僕ですか? 」
「 前から若井さんの髪型カッコイイな~って思ってたんですよね! 」
w「 えーそれは嬉しいです笑 じゃあ早速切っていきますね。 」
若井滉斗、25歳。気付けば20代も折り返し地点まで来ていた。
それでも去年、自分で開いたこの美容院は何度も通ってくれるお客さんもいて、経営は難なくこなせている。
「 そういえば若井さん、僕最近Mrs. GREEN APPLEっていうバンドにハマってるんですよね。 」
w「 っえ、あ、そうなんですね。最近すごい流行ってますもんね! 」
「 はい、でも今は色々あってメンバーが2人なんですよ。何かどうしても大森くんがギターポジションを任せたいって人がいるらしくて…」
w「 ッ…へぇ~そうなんですか…。 」
「 デビュー前もデビュー後もその人に任せたいって揺るがなかったらしいですよ。すごい一途だと思いません? 」
w「 はは、… 」
w「 …はぁ… 」
今日の営業を終え、一息着く。
なんだか今日はやけに疲れた。きっとそれはアイツの名前が出てきたからだ。
w「 もう、忘れてよ…。 」
携帯を開いて、緑色の背景に吹き出しが描かれたアプリアイコンをタップする。
一番下までスクロールすると、そこには何年か前にブロックしたっきりの幼馴染のアカウントがあった。
w「 俺はお前から逃げたのに…追い掛けてくるなよ…ッ… 」
その日の帰り道、もやもやとした気持ちのまま夜の街を歩いていた。
俯きがちで歩いていたからか、向かい側からやってくる人に気付かずぶつかってしまう。
w「 っすみません、大丈夫ですか? 」
?「 …わ、かい…? 」
w「 その声、もとッ… 」
フードから覗く顔にひゅっと喉が鳴った。急いで踵を返してその場から逃げる。
なんで、なんでなんでなんで、もう二度と会わないって思ってたのに、
m「 若井ッ! 」
後ろから俺を呼ぶ声がする。その声で更に逃げ足を速めた。
胸が痛くて、呼吸が荒くて、辛くて、色んな感情が混ざって涙が出てくる。
パシッ
w「 …! 」
m「 っは、はぁッ、はぁっ…!つか、まえたッ… 」
w「 っは、はぁッ…な、なんでッ…離せよッ…! 」
m「 離さないッ…! 」
そのまま掴まれた腕を引かれて抱き締められた。俺の知ってる時よりも逞しくなったその腕に吃驚する。
m「 …ここから俺の家近いから、行こっか。」
w「 行かないし、もう…関わる気ないから離して。 」
m「 …俺、若井と別れたつもりなんてないから。 」
w「 は、ちょ、力強ッ…ねぇ、離してってば…! 」
m「 若井。酷いことされたいの? 」
w「 ッ……分かった…。ついて行くから、何もしないで…。 」
m「 約束する。 」
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