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m「 好きなとこ座っていいから。 」
w「 ……。 」
m「 なにか飲む?って言っても、お茶かコーヒーくらいしかないけど。 」
w「 いらない。 」
家まで入って、リビングのドア付近に突っ立っていつでも逃げれるような体勢に入る。
元貴の家は広くてお洒落で、あぁ…稼いでるんだな。って簡素な感想が出た。
m「 …若井はお洒落になったね。美容師にでもなったの? 」
w「 ……。 」
m「 まぁ別に答えなくていいんだけど。…じゃあ本題。 」
元貴は俺の前まで来て、覗き込んでくるように目を合わせに来た。もうすっかり芸能人の顔をしている元貴に距離を感じる。
m「 若井、俺らのグループのギターやって。」
w「 …やだ。 」
m「 じゃあ、もう一回俺の傍にいて。 」
w「 …無理。 」
m「 でも俺言ったよね、別れたつもりなんてないって。だからあの日から今までもずっと俺と若井は恋人同士だよ。 」
w「 そんなのっ…!俺は、ちゃんと元貴に別れようって…! 」
m「 でも俺の返事聞く前にいなくなったじゃん。 」
w「 っ…じゃあ、改めて言うから。元貴、俺と別れて。 」
m「 え、やだけど。 」
元貴はサラッと断ると、ニコニコ笑って俺の頭を撫でた。流れに沿うように髪をとかされて、思わず後退りする。
w「 な、んで…なんでそこまで俺に拘るんだよ…! 」
m「 なんでって…笑 あの時、話し掛けてきたのはそっちでしょ?この未来は若井が作ったんだよ。 」
w「 そんなの、こんなっ…未来なんて望んでるわけないだろッ…! 」
m「 は、?っちょ、おいっ!若井ッ! 」
もうこれ以上、元貴と話したくなくてすぐ後ろにあった扉に手をかけて玄関まで走った。
靴下だから滑りそうになる。
m「 なんでそこまで俺から離れるんだよ!どうして逃げるの、?俺、何かした…? 」
w「 ッ…だからもう、別れようって…。俺は、元貴のことなんて好きじゃないから。 」
ガチャ、と玄関の扉を開けて外へ出た。エレベーターなんて待ってられなかったから、外階段を伝って下へ降りる。
w「 っうぅ゛……なんで、なんで今更ッ…うぁ゛ぁぁ…!!! 」
俺はマンションからしばらく離れた物の影で必死に声を抑えて泣いた。
元貴には知られたくない、あの日の出来事なんて。