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「だから、お父さんの代わりに、その頃の夢をハルと叶えられて嬉しかったわ」
あぁ、そんなとこにも幸せが隠れていたのか。
ホントにハルとお義母さんがその夢を今日叶えることになって。
それを知らなかったけれど、オレも一緒にその夢を手伝えていたこと。
実際は透子とのお義父さんに会うことは出来なかったけど、だけど今日透子の結婚相手としてその役目をちゃんと果たせたような気がして、少し泣きそうになった。
「お父さんにも樹紹介したかったな」
透子が寂しそうに、ふとそんな言葉を呟く。
ホントに・・・オレも会って話してみたかった。
「透子さん。実はね、樹は透子のお父さんにもうしっかり認めてもらってるのよ」
「えっ? どういうことですか!?」
母さんが言った言葉にオレも透子と同じように驚く。
えっ? ホントどういうこと?
「お店開いて私が樹を連れて行った時あるでしょ。あの時ね、人見知りする樹が珍しくその時お店にいたあなたを小さいながらも気にかけていてね。あなたにかまってもらったのが、相当嬉しかったんでしょうね。その後にね、樹からあのお店にまた行かないの?って、実はしょっちゅうせがまれて。ようやく連れて行った時は、透子さんいらっしゃらなくて、樹が随分ガッカリしてたのを今でも覚えてるわ」
「えっ、オレ全然覚えてないわ」
「私もそんな話聞いてビックリです」
マジか。
そんなこと全然覚えてもないけど。
でもそんな頃からそんな透子気に入ってたとか、オレどんだけ透子一筋なんだよ(笑)
「今思えば樹は透子さんが初恋だったのかもしれないわね。だから、それをご主人は感じ取ってくれたのか、その時の樹に声をかけてくださったのよ」
「お父さんが? 樹さんに?」
「えぇ。きっとそんな樹を元気づけようとしてくださったのね。”じゃあ、いつかうちの娘をお嫁さんにもらってくれるかな?”って樹に言ってくださって」
「えっ!? お父さんから!?」
「そしたら樹は恥ずかしそうにしながら静かに頷いたの」
「はっ!? オレ全然それも覚えてないんだけど!」
いや、マジ驚きすぎてどうしていいかわからない。
マジか。オレそんな頃にもうすでにそんな気持ち芽生えてたのかよ。
全然自覚なかったんだけど。
実際オレ初恋なんていつしたのかもわかんなかったし。
あっ、そっか、だから記憶なかったのか・・・。
そんな頃にオレはすでに初恋をしていたから、誰にもそんな感覚なかったんだ。
確かになんとなく憶えている透子へのあの頃の想いはきっと初恋だった。
そんな時から、今まで感じたことないほど気になっていて、そこにいなければ寂しくて。
そんな感覚はやっぱりその頃と透子に出会った時に感じただけだった。
「お父さんもね、嬉しかったみたいよ。そんな小さい男の子に透子を気に入ってもらえてたのが。いつでもお父さんはあなたを自慢に思ってたから」
「お母さん・・・」
「お父さんも嬉しそうに、樹くんに”透子をよろしく”って言ってたの微笑ましかったわ」
あぁ・・そう言われればなんとなく思い出してきた。
どこかの優しい男の人がすごく優しい笑顔でオレの頭を撫でながらそんな風に笑いかけてくれていたこと。
そっか・・・あれが透子の親父さんだったんだ・・・。
「じゃあ、お父さんはこの結婚喜んでくれてるかな?」
「えぇ。きっとお父さんが誰より喜んでくれてるはずよ」
そう言って透子のお義母さんが微笑んでくれる。
そっか・・オレ透子の親父さんに会えてたんだ。
それで、ちゃんと結婚すること伝えられてたんだ・・・。
なんだよ、その奇跡みたいな話。
やば、また泣きそうになる。
オレこんな涙腺弱かったっけ。
きっとこんなに優しい気持ちを持てるようになったのは、透子に出会えたから。
オレにもこんな優しい気持ちを持てていることを気付かせてくれた。
「お母さん。ずっとお父さんの分まで私とハルくんに幸せな家族をありがとう」
「これからは、ちゃんと側にいる樹くんに助けてもらって支えてもらってね。あなたらしい生き方を、これからは樹くんと一緒に歩んで行ってちょうだいね」
「うん。ありがとう。お母さん」
オレもこんな風にずっと幸せを感じていられるような家族を作りたいと、透子たち家族を見て心からそう強く思った。
「樹くん、これからもどうぞ透子のことよろしくね」
「はい。透子さんはオレにとって、なくてはならないかけがえのない大切な人です。これからも透子さんをオレの全部で支えていきます。オレが透子さんをもっと幸せにして守っていくので安心してください」
何度聞かれても、何年経ってもその気持ちは変わらない。
この言葉をずっと何年先でも伝え続ける。
透子にずっと幸せを感じていってもらえるように、オレはずっとこの先も守っていくから。