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「んん……」
いつもより遅くに目が覚めた。
いつものように、カルに声をかけようとした……
「ト……トウカ…? その髪……」
目の前には目を覚ましていた彼が、愛おしい彼の姿があった
私の短くなった髪を見つめて尋ねる。
「あぁ、これね、こr「よかったぁぁっ……!」
事情を説明しようとすると、アルカに抱きつかれる。
「トウカの体の一部って言われてたからっ…心配して……っ……」
「あぁ、そう。」
「短い方も似合ってる!」
どうやら彼は事情を知っているらしかった。
満面の笑みで私の髪を撫でる、
自然と顔が熱くなる。
涙を堪えて、いつもの無表情を貫く。
「そりゃぁ……どうも。」
「あ、そうだ! 今日の夜さ、出かけようよ!」
「え?」
突然何を言い出すのよ……
こんな状況で……出掛けるなんて……
「星が綺麗な所があるの! 行こう行こう!」
小さな子供のように私の腕をブンブン振る。
腕がもげるわ……やめて。
「………分かったわよ……」
少しくらい、付き合ってあげてもいいのかもね。
アイラside
「……」
眠れない。いつもならぐっすり眠れるはずの夜も、今日はどうしても寝付けなかった。
ー……僕は……君のことが嫌い。大嫌いだよ。
「……」
あの時の言葉が脳裏に蘇る。
頭からかき消そうとぎゅっと目を瞑っても、
どうしても思い出してしまう。
私は…愛されたかっただけ。やり方は間違っていたかもしれない。それでも…これで愛されると思ったのよ。最初は。私の知っている人はそうだったから。
もう後戻りは出来ない。弱音は吐けないわ。
「アイラ…?」
突然、誰かに名前を呼ばれた。部屋の鍵は開いていたようだ。
こんな状況下で鍵を掛けないなんて、危機感がなさすぎる。そんな自分にため息をついた。
ベットから起き上がり、声のする方を見ると、そこには心配そうな顔をするハルカが。
「ハルカ…?どうしてここにいるのよ。
あっちに居てって言ったでしょう?」
思ってもいない言葉が口から飛び出す。
「君が…心配だったから。」
「え…?」
耳を疑った。思わず伏せていた顔を上げる。
そんな指示…してないのに。
ハルカは私の隣に座り、優しく笑いかけた。
「…大丈夫。辛かったよね」
そう言ったハルカの瞳には、無いはずの光が宿っていた。
洗脳が… 解けてる?
ハルカが伸ばした手を振り払う。
それでもハルカは怒ることもせず、静かに笑うだけ。
「…私に一体何するつもり? お仲間の復讐でもしに来たの?」
「うーん…それとはちょっと違うかな。」
再び洗脳をかけようと、こっそり伸ばした手を優しく握りながら答える。
「……」
「おいで、アイラ。」
そっと私を抱きよせるハルカに抵抗することも出来ないまま、ハルカの腕の中に収まった。
久しぶりの体温に自然と顔が緩む。
「私のこと、殺さなくてもいいの?」
「殺す?どうしてさ」
「だって…私…貴方たちのこと……」
だんだんと声が震える。
「大丈夫…大丈夫。わかってるよ。全部ね。」
「……」
「それでも僕は君を殺したりしない。
僕は君が好きだからね。」
その言葉で、私は泣き出してしまったらしい。
気づけば、眠りに落ちていた。
ハルカの腕の中で。
「見て、今日はさ…月がとっても綺麗なんだ。」
そんなハルカの呟きは、私の耳に届くことなく
暗い部屋に溶けていった。
透海 side
その日の夕方、アルカが行きたいと言った場所に行くことになった。
正直、寒いし、めんどくさいけど、アルカが子供みたいにギャーギャーうるさいから、行くことにした。
「ほらっ、綺麗でしょ?!」
空に広がる星空。
……確かに……綺麗ね。
私達はそこに座って、色々な話をした。
星座の話、今までの話……
「……とっても綺麗ね。」
「そ、そうだね……」
話が進むにつれて、アルカの様子はおかしくなった。突然顔を赤くしたり、そわそわしたり、
何か隠してることでもある見たいに
「……」
「アルカ…?」
「………つ…月、綺麗だね……」
急に黙り込んだかと思うと、彼がそんなことを呟いた。
……夜空を見上げると、月は丁度、雲に隠れて見えない。
つまり、そういうことでいいのよね?
「……」
考え込む私にアルカは不安げな表情を見せる。
この時の私の表情はとても言葉で表せるような美しい表情はしていなかっただろう。
本で読んだことのあるこの言葉。
この街でも珍しい本の虫だった私と彼に、
「知らない」なんて言い訳は通用するはずもなく…
覚悟を決めて息を吸い込む。
呼吸は、自分でも驚く程震えていた。