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【夜と16とハロウィンと】
魔師に袋を投げ渡し、館の裏へと走る。
急がないと、急がないと。
「…リィラ?…嗚呼、そういうことでしたね。扉と門は開けておきました、お急ぎください。」
「ありが、とう…!はっ、はっ、はぁ…、はっ…!」
事情を知っているのだろうか。
そんな思考交じりに、とにかく裏へと、裏へと走る。
「リィラちゃ〜〜ん!!頑張って〜〜〜!!!」
ベルゼも知っているのだろうか…?
理由を考える余裕など無かったが、ただ応援に少しの嬉しさを感じて走る。
町長館の裏側へ回ると、200mほどある道の先に、ゲートらしきもの…そして、彼らを見つけた。
「リィラ……!分かっているとは思うがこの先だ…!!」
前より、少し張った声で。
「リィラちゃ〜〜ん!!また来てね〜〜!!」
吸血目的であろう言葉を、大きな声で。
「リィラちゃん…!!元気デね…!!」
彼女らしい、静かな強い声で。
「リィラさーーーん!!!もうすぐですよーーーー!!!!」
伸びやかで、そして綺麗な声で。
「リィラちゃ〜ん!この先だよ〜!!」
初めて聞いた、優しい大声で。
皆がなぜここに居るのか。
皆がなぜ知っているのか。
分からなかったけど、今はただ、皆に見送られたことが嬉しかった。
〜
「…なんてことがあったの」
「へぇ〜、それは不思議だったね!」
今は、チルドラートであったことをリィラに話していた所だ。
「そのチルドラートってさ、どうしたら行けるの?」
「ゲートの管理ミスか、死と霊の狭間に居ると行けるらしいよ」
「死と霊の狭間…不思議〜!!」
45日が経ち、やっと聞ける。今まで私に元気をくれた声。
「もしさ…もし、お姉ちゃんが天国に来たらさ!聞かせてよ、もっと!」
「うん、分かった。」
地獄行きか、天国行きか。
まだ分からないけど、リィラは天国で、私は地獄だろう。
なぜなら、リィラはこんな私にも心優しく、明るく接してくれた。
対する私は、リィラの失踪で生きる希望を失い、自ら命を投げ出した。
「あたしもいつか、チルドラートに行ってみたいなぁ…。」
「どうして?」
「だって、お姉ちゃんと仲良くしてくれた人達だもん。あたしも会いたい!」
「…でも、そこにはあのヴァンパイアも居るよ」
「いいのいいの!今となっては、逆に感謝してるくらい!」
…え?
「どうして?」
「だって、今こうしてお姉ちゃんと話せてるんだもん。…それに……」
「それに?」
「…ううん、やっぱりなんでもない!それじゃあお姉ちゃん、またね!」
「……うん、またね、リィラ。」
リィラの言葉を聞いて、なぜか凄く救われた気がした。
リィラは、てっきり死を選んだことを悔やんでいて、ヴァンパイアを恨んでいるものだとばかり思っていた。
けど、違った。リィラの心には、そんなものは無くて。ただ、清々しいほどに晴れやかで。
…一緒に行きたいと思った。
来年の、10年後の、100年後のハロウィンに、そして夜に。
リィラと一緒に、チルドラートに迷い込んで。どうしようもないくらい、帰る術を失いたい…って、思った。
【夜と16とハロウィンと ― 終】