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どうしてだろう。私の願いは叶わずあなたの願いだけは叶うのだろうか。

私には、幸せなどはやってこないと思っていた。あなたと、出会うまでは……


古びた寺に、夏の熱い風が吹き込む。まだ朝だと言うのに、蒸し暑くじんわりと首筋に汗が流れる。

「いってきます」

当然返ってくるはずのない挨拶をし、隅に置いてある自転車にまたがる。

「あ……」

ふと顔を上げると、毎朝この時間にお賽銭をしにくる男の人と目があった。気まずさに私は急ぐように自転車を漕いで、緩い坂道を下っていった。

古くから続くこの村、安曇野村(あずみのむら)は寺が多いことで有名だ。ここに住んでいる人たちは、だいたい高齢者が多く子供は私と妹を含め、四人しかいない。幸い、海沿いを自転車で走り約三十分ほどで私の通う高校につく。

今は、高校一年生の8月の初め。夏休み中だが、今日は美術部の活動があるので行かなければならない。そして、夏休みが明け11月下旬に、私は神に生贄として、死ぬ。この宣告をされたのは一週間前のことだった。


その日も暑さが厳しい日だった。「大事な話し合いがある」と言われた私はいつもの巫女装束に着替え、みんながいる部屋に入った。

「今日は、我が宮塚家に関わる大事な話をする。」

宮塚家は、女二人を絶対に産まなければならず、酷い話だが男の子が生まれてしまった場合、地方に飛ばされてしまう。

ちらっと横を見ると、いつも以上にパーマを掛け可愛らしく座っている妹がいた。

「莉奈。由里奈、前へ出てきなさい。」

私達はお父さんの前に座り礼をする。だが、妹は礼儀を知らずに髪の毛をいじっていた。

「今日はこの神社を継ぐもの、つまり神の捧げ物となる者を発表する。」

私はつばを飲み込んだ。

神の捧げ物になる。つまり死ぬ、ということだ。私はこの決まりが大嫌いだった。だって、大事な命を簡単に神に捧げるなど信じられないからだ。

「生贄となるものは……」

「莉奈。お前だ」

(えっ…..)

私は唐突の言葉に言葉を失ってしまった。予想はしていた。お父さんからしたらお母さんにそっくりの私が邪魔で仕方ないから生贄に選ぶとわかっていたのに。覚悟はしていたのに。

(どう、して…..)

「莉奈、どうした?」

お父さんの言葉ではっと我に返った。

「….我らの神、天照小御神に命を捧げられることを嬉しゅうございます。」

周りから拍手の音が聞こえてくる。そのまま私は部屋を出て誰も知らない『秘密の場所』へと走る。

「なんでなのぉ…..?」

私は『秘密の場所』につくとその場にへたり込んで泣いてしまう。

「お願いです…..!私はまだ…..死にたくありません….!」

私は必死に手を合わせ、神に願う。届くはずのない祈りは、夏の風とともに消え去っていく。私が今いるここは寺を出てすぐの小さい通りの奥にある、大きな木の下にある小さな空間だ。小さい頃からなにかあるたびにここに駆け込んでいた。宮塚家に生まれてこなければ、どんな未来があったか。そればかりを考えていた。


学校につくと運動部の元気な掛け声が聞こえる。

靴箱で靴を履き替え、早々と美術室へと向かう。絵を書くことだけが私を救ってくれるような気がして、美術は好きだった。

「あれ?莉奈じゃん」

振り返ると私の村に住む4人中の一人の女の子、川口奈緒が「よ」と手を上げていた。

「奈緒じゃん!終業式ぶり?今日はなんで学校きてるの?」

奈緒とは幼い頃からの親友で、私が生贄として死ぬことも知っている。

「実は、私帰宅部でしょ?この際、莉奈と最期まで一緒にいたいじゃん?だから、美術部入ることにしたんだ」

『最期』という言葉に胸が痛む。奈緒は私のためにここまで考えてくるているんだ、そう思うと嬉しさのあまり涙が出そうになる。

「奈緒ぉ….」

私は奈緒に抱きついた。すると奈緒は恥ずかしそうに私から離れ美術室まで歩いていった。


昼過ぎぐらいになると私は奈緒に声をかけ、学校をあとにした。生贄なるということは巫女の仕事ももっと大変になるということだ。急ぎ足で自転車を漕ぎながら海を眺める。この景色を見れるのは、あと何回だろうか。11月に入ると、多分寺から出れないほどの忙しさになるだろう。しかも、私は10月になると高校を中退しなければならない。そして、あと数回部活に行ったら正式に退部する予定だ。

「あ」

「…!」

自転車を漕いでいるといつもの男の子が声を上げた。私は一応一度自転車にブレーキを掛け後ろを振り向く。

「な、なんですか…..?」

「お前、死ぬんだろ?」

唐突な質問に私は目を見開く。なぜ彼がそのことを知っているのだろうか。奈緒が言いふらした?いやいや、流石に見知らぬ男子に声をかけるほど人が得意なわけでもない。じゃあ、なんで…..

「聞こえたんだよ。お前が木のしたで「死にたくない」って言ってたところ」

「なっ….//////」

独り言を聞かれた恥ずかしさで顔が赤くなっていくのを感じる。そして彼は口を開き、こう言った。

「俺とこの村抜け出さね?」

                                                        続く

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