テラーノベル
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彼女はA。
アイドルグループ「ABCD」のエースだ。
そして俺は、Aを応援している、ごく普通の会社員、O。45歳。
「Oさんって、Aの握手会に一度も行ったことがないんですか?」
そう聞いてきたのは、同じアイドルオタク仲間のKだった。
「そうだね」
「もったいないですよ。一度くらい行ってみたらどうですか?」
「いや、Aは俺の甥っ子に雰囲気がよく似ていてね。なんとなく遠くから応援してるだけで十分なんだよ」
「えー、もったいないですよ」
「そうかな?」
「じゃあ、今度一緒に行きましょうよ」
「……じゃあ、一回だけ行ってみようかな」
そして翌日。
俺たちはAの握手会場に来ていた。
「次の方、どうぞ」
「はい……失礼します」
俺は緊張しながらAの前に立った。
「あの……ずっと前からファンでした。Aさん」
Aは俺の顔を見るなり、目を見開いた。
「えっ……おじさん?」
「えっ?」
「お時間です」
「えっ、もう?」
こうして、俺の初めての握手会は終わった。
「握手会、どうでした?」
会場を出ると、Kが聞いてきた。
「いや~、握手してもらえなかった」
「えっ?」
「『おじさん』って言われた」
「それもファンサービスじゃないですか?」
「分からないよ……。甥っ子と雰囲気が似てるから、ちょっとショックだった」
「本当に甥っ子と似てるんですか?」
「じゃあ、見るか?」
俺はスマホを取り出し、甥っ子の写真を見せた。
「ほら」
Kは写真を見た瞬間、黙り込んだ。
「……え?」
「どうした?」
「この子……女の子ですよね?」
「違うよ。男の子だよ」
「いや、どう見ても女の子にしか……」
写真には、ショートヘアで、細身の男の子が写っていた。
「まあ、確かに女の子っぽく見えるけどな」
「……Oさん」
「ん?」
「この子、Aにそっくりじゃないですか?」
「え?」
俺は改めて写真を見た。
そして、握手会で見たAの顔を思い出した。
「……言われてみれば」
「ですよね?」
「でも、まさかな」
「何がです?」
「Aが男だなんて……」
「いや、まだ男だと決まったわけじゃないですよ」
「そうだな」
俺は笑ってごまかした。
しかし、どうしても気になった。
Aの顔。
甥っ子の顔。
二人の写真を頭の中で重ねると、確かに似ている。
それから一週間後。
俺とKは、再びAのライブ会場に来ていた。
「来たんですね」
「そっちこそ」
「まあ、たとえAが男だったとしても、推しのアイドルなことは変わりませんし」
「そうだよな」
ライブは最高だった。
けれど、俺の頭からは、あの甥っ子の写真が離れなかった。
ライブが終わると、俺は甥っ子に電話をかけた。
「もしもし、おじさん?」
「なあ……お前、アイドルやってるよな?」
電話の向こうが一瞬、静かになった。
「……え?」
「ABCDっていうグループで」
「……そうだね」
「やっぱりか!」
俺は確信した。
「じゃあ、なんで女の子として活動してるんだ?」
「話せば長くなるんだけど……」
「話してくれ」
甥っ子は少し黙ってから答えた。
「僕、男なのに小柄で、体つきも男らしくなくて、声も高いから、昔から周りにからかわれてたんだ」
「そうだったのか……」
「そんな時、今の社長にスカウトされたんだ」
「なるほどな」
「僕の見た目なら、男のアイドルより女の子として売り出した方がいいって」
「だからAとして活動してるのか」
「うん」
俺は少し笑った。
「確かに、お前は昔から女の子に間違えられてたもんな」
「おじさんまで言う?」
「悪かったよ」
電話を切った俺は、ふと思った。
――そういえば、握手会でAが俺を見た時。
「おじさん」
と言った。
あれは、ファンサービスじゃなかったのかもしれない。
俺はスマホに映ったAの写真を見ながら、苦笑した。
「まさか、推しが自分の甥っ子だったとはな……。」
コメント
1件
第3話、一気に伏線回収きたね!!😭💕握手会で「おじさん」って言われたの、まさか血縁バレだったとは…しかも甥っ子が女装アイドルとして推しになってた展開、尊すぎて胸熱すぎる🔥✨「女の子っぽい見た目でからかわれた」っていう甥っ子ちゃんの過去もグッときたし、二人の距離感がこれからどう変わっていくのかめっちゃ気になる!!次の話も待ってるよ!!🌸