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月が湯けむり越しにぼんやりと浮かぶ、夜の貸切露天風呂。
湯気に包まれた石畳の上を、2人の足音が静かに響く。
「……やっぱ、2人きりって最高だな」
タオル一枚のまま、いるまは肩を回して伸びをした。
その視線が、湯船に入る前にシャワーで体を流しているひまなつの背中へ、じっと注がれる。
「なんか、見てんのバレバレなんだけど」
ひまなつが後ろを振り返らずにぼやく。
だがその声はいつもより少し甘く、どこか期待に滲んでいる。
「……そりゃ見るだろ。せっかくの貸切なんだし、体もすぐ洗えるし――」
いるまの足音がぬるりと近づいてきて、
ひまなつが振り向くより早く、後ろから抱き寄せられた。
「やりたい放題じゃん、なあ?」
「っ……おい、ここ風呂なんだけど……」
「誰もいねぇし、なつも……やじゃねえだろ?」
そう囁かれた途端、ひまなつの頬が赤く染まる。
照れて目を逸らすその唇を、いるまが深く奪った。
舌が絡み、柔らかな粘膜を何度も優しく吸われる。
濡れた音が静かな浴場に響いて、ひまなつの膝から力が抜ける。
「んっ……っ、んぅ……っ……」
いるまの手がタオルの下から肌へと滑り込む。
熱を持った指先が、ひまなつの下腹部を優しくなぞり、そのまま後ろへ回り込む。
「だいぶ緩んでるじゃん、……期待してた?」
「な、してねぇし……っ、ふっ、や……っ」
「嘘つけ。ほら、もうここ……欲しそうにしてんじゃん」
熱い囁きと同時に、入り口を撫で回す指。
そして、タイミングを見計らったように、緩んだ部分へひと差し。
「んっ……ぅぁっ……!」
突然入り込んだ異物感に、ひまなつの腰が跳ねた。
だが、いるまの腕にしっかりと抱きしめられ、逃げ場はどこにもない。
「声、抑えろよ。お湯の音に紛れるけど……全部聞こえたら困るだろ?」
そう言いつつ、指はゆっくりと蠢き、内壁を探るように優しく押し広げていく。
濡れた音がぬちゃ……と生々しく響き、指が1本、2本と増やされていくたびに、ひまなつの吐息は熱を帯びていった。
「ん……っ、んぅ……も、無理、だって……っ」
「大丈夫。なつなら、すぐ入るよ」
先端からは既に、とろりと透明な液体が溢れていた。
それを見たいるまの瞳が、艶を帯びて細くなる。
「……続き、湯船でしよっか。な? ぬくもりながら、奥まで届くとこ、感じような」
ひまなつの身体をそっと抱き上げるようにして、いるまは湯船へと足を踏み入れた。
温かな湯が肌を包み、ぬるりとまとわりつくその感触に、ひまなつの表情がとろけていく。
「気持ちいいだろ?」
「……うん、あったかい……」
湯気の向こう、静かな夜に響くのは、湯音と、どこか心を溶かすような2人の息遣い。
いるまは湯船の縁に腰をかけるように座り、その太ももの上へひまなつを抱き寄せた。
湯に揺らぐその身体は、すでに何もかもを許しているようで、どこか切ないほどに柔らかい。
「こんな顔されると……キスしたくなるな」
低く囁いた声のすぐあと、ふたたび唇が重なる。
先ほどよりも穏やかで、けれど深く、舌と舌が優しく触れ合う。
「ん……いるま……」
吐息の混じった名前が唇から零れるたび、いるまの瞳の奥に熱が灯っていく。
「……なつ、好きだよ」
「ん、っ……ふ……ぁ……」
舌を吸われ、絡めとられながら、ひまなつは震える指先でいるまの腕をつかんでいた。
いるまの舌は容赦なく口内を犯すように動き、唾液が喉奥からこぼれ落ちる。
だがそれ以上に、腰の奥が――熱く、震えていた。
「ん……っ、や……っ!」
湯の中、いるまの指が根元まで飲み込まれ、ひまなつの中を掻き回していた。
曲がった指先が、そこを見つけるたびに、ビクリと脚が跳ねる。
「もう……トロトロだな。ほら、こうすると、すげぇ……」
「ひぁっ、いっ……! だ、めぇ……そこ……っ!」
繰り返し、繰り返し――
意地悪に、執拗に、快楽を刻み込まれるたびに、ひまなつの呼吸は乱れていく。
「なあ……気持ちいんだろ? 口でも言ってみろよ」
「や……っ、ばか………っ」
「体は、ちゃんと応えてんな」
にやりと笑いながら、いるまはキスの合間に指を押し込むたびに、ひまなつの腰がびくびくと震えるのを見逃さない。
水面が波立ち、水音がいやらしく跳ね返る。
「しあわせ、だろ?」
「…………っ……しあわせ、だよ……っ」
涙交じりに、ひまなつは吐き出す。
痛みと、快感と、どうしようもない愛情に溺れて――
「いるまが、好き……だいすき、だから……なにされても、しあわせ……」
「……ああ、そっか。なら、遠慮なんていらねぇな」
ぬるま湯の中、指は抜かれたが――代わりに熱を帯びたいるま自身が、臨戦態勢でひまなつの奥を捉えた。
「――ッあ、っ、ああぁっ!!」
深く、突き上げられた瞬間。
ひまなつの体が大きくのけ反る。湯がばしゃりと跳ね、白濁のしぶきが湯面に散る。
「どんだけ感じやすい体してんだ、なつ」
「や……っ、だ、だって、そこ……っ、いるまが……っ」
絶え間ない快感に、ひまなつは言葉を結べない。
前立腺を擦られるたびに、脳が真っ白になり、 いるまの熱で奥を何度も叩き上げられている。
「ほら……まただ。抜ける寸前のとこ、擦ると――」
「っあああっ!!」
「……ほらな」
狂ったようにイキ続ける体に、容赦などない。
絶頂で痙攣する最中も、いるまの腰は止まらない。
深く、深く、奥まで届くたびに、快感が焼き付けられていく。
「ふぁっ、くぅ……っ、も、むり……っ」
「無理でも、ちゃんと動いてんだよ。お前の奥、締め付けて……すげぇ、気持ちいぃ……」
ガクガクと揺れる体を抱き締め、いるまは何度も唇を重ねる。
深く、むさぼるようなキス。
舌が喉奥をまさぐり、快感と混ざった涙が目尻を伝う。
「も、う……っ、動け、な……い……」
「じゃあ、俺に全部預けろ。お前の体も、心も、奥の奥まで……俺が愛してやるから」
「……っ、うん、いるま……好き、だいすき……」
細い腕が、たどたどしくも彼の背に回る。
繋がったまま、熱を抱えて、ぬるま湯に沈みこむ。
どこまでも甘く、どこまでも残酷な愛の中で――ひまなつは確かに、幸福に満たされていた。
___
「……なつ?」
ぴく、と震えた指先も、それきり動かなくなる。
瞳は半分開いたまま、焦点が合っていない。
肌は紅潮し、口元には名残の吐息。
腰から下は湯に沈み、白濁の余韻と共に微かに震えていた。
「……イきすぎて、飛んじまったか」
いるまは苦笑まじりに息を吐く。
けれどその目は、満足と――わずかな後悔を滲ませる。
意識を失ったひまなつを、そっと抱き寄せる。
「ほんっと、お前……かわいすぎ」
湯から引き上げ、脱衣所で優しく体を拭く。
肌の奥に刻まれた痕も、ひくひくと余韻を残す入り口も、全てがいとしくてたまらない。
乱暴に責めたくせに、今は一つ一つ、壊れものに触れるような手つきで。
「……よく頑張ったな。いい子」
タオルと毛布で包み、細い身体を軽々と抱き上げて、寝室へ。
ベッドに寝かせ、ふわりと布団をかける。
「お前、こうやって無防備で寝てんの、ほんと……やべーな」
それでも、いるまは髪を優しく撫でた。
汗ばんだ額にキスを落とし、隣に横たわる。
「好きだよ、なつ。めちゃくちゃにしたくなるくらいに」
腕を伸ばし、彼の小さな体を引き寄せる。
無意識のまま胸元に顔をうずめてくるひまなつに、いるまはくすぐったそうに笑った。
二人はそのまま、しっかりと重なり合って眠った。