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ある日、突然幼なじみの親友が居なくなった。
自殺だそうだ。遺書はなかった、残す人もいなかったんだね。だけど、小さなメモ書きに『愛されたい』って滲んだ字が書かれていたらしい。
今日は葬儀だった。何も頭に入らなかった、泣けなかった。
「なんで話してくれなかったの」なんて思わない。貴方は昔からそういう子だったでしょ?今更過ぎるよ。
親友は学校でいじめを受けていた。その中でもかなり酷いのを。
理由は多分…..違う、十中八九嫉妬。
あの子は幼いながらに贔屓なしで美人だった、まるでフィクションのようだ。もし絵画だったならばその値はどんなものだっただろうか?考えるだけで喉が鳴る。
最初はいじめの全容が見えなかったからそっとしてしまった。声を掛けてしまうと逆にあの子は自身を追い詰めてしまうから、遠くで、それでいて近くで見守ろうと先生に声も掛けた。
けど、何も無かった。
あの子の母親も結構な人で、彼女の美しさに嫉妬してか、毎日暴力を振るった。毎日絆創膏が増えていたから分かった。
いじめが過激化して、流石に声を掛けようと、あの子の罪悪感より彼女の身だと背中を押した頃にはもう、気兼ね無く声を掛けられる関係にはなれなかった。
話せれるような状況も彼女との距離ではなくなってしまった。
彼女の辞書に、私の名前は無くなっていた。
彼女に触れたら私まで同じ目にあってしまう。
もう何も出来なくなってしまった。
「ごめんなさい」と唱えながら遠く離れた教室の角席で虚ろな目をした彼女を眺めるしか出来なくなってしまった。
更衣室に向かう全身が濡れ、髪の先から水の滴る彼女を見送るしか出来なかった。
男子が体育館の裏に彼女を誘う姿を、私はただ荷物を纏めながら眺めるしか出来なかった。
服のはだけて口の端から血を流す彼女を眺めるしか……出来るはずなかった。結局、私は親友ではなく彼女の世界の通行人aでしかなかった。
彼女は独りっきりの部屋で、電気にくくられたロープを使わず部屋に置いてあったセロハンテープで首を絞めたらしい、そして薄らと笑っていた。
あの子のお母さんは無神経で楽観的だと初対面でひと目でわかるから、葬儀の時まるで世間話のように喋っていた。
自分の娘が死んだのに「最期は笑って死ねて良かった。何かいいことがあったんだね」と被害者のように薄ら笑いで呟いた。
多分あの子は誰かに愛して貰えた夢(幻覚)を見て死んだんだ。
お前は何も分かってない。人間所詮は悲劇のヒロインで居たいらしい。私も、あの子のお母さんも、多分…あの子も。
「ふざけるな」なんて言える立場でもないから、隣で愛想笑いをした。本当は言いたかった。悔しかった。
言いたかったのに、怖いから言えなかった。
本当は言えたはずなのに
あの時も、言えたはずなのに
それに本当は、助けてあげられなかっけれど、貴方に映る私は酷い奴だったと思うけど….貴方が大好きだった。
今頃になって分かってくる。涙も溢れて、前が見えない。いくら空を殴っても、そこには誰もいない。
今更気づいても何も出来ない、私はあの子に伝わるよう愛してあげられなかったから。
私はあの子の親友にならなかったから。
あの子に親友だって思って貰えるようなこと出来なかったから。
「愛は見えなきゃ、愛じゃないんだね。」
深く突き刺さる自戒の言葉。もう戻れもしない大好きな人間に向ける、これから貴方に送り付ける最初の言葉。
貴方は私を親友って言ってくれたかな。こんな私のことを喋ってくれたかな……。
そんなこと、どうでもいい。だから
秋原ゆず。あの子の名前。
「ゆずの死神さんは最期まで、ゆずを”愛して”くれましたか?」