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「やっと終わった……」

数時間後。廊下を履き終えて、ゴミを塵取りで取りゴミ箱へ捨てる。ずっとホウキを持って立っていたせいか、かなり疲労が溜まってしまった。恐らく綺麗に掃除できたはずだ。

ネテルの寝室の扉を叩くと、彼が顔を出す。アークは笑みを浮かべて、報告した。

「ネ、ネテル様。掃除が終わりました」

「終わった……?」

彼は呆然とする。何故なら早く終わりすぎているからだ。この廊下は、プロのメイドでも時間を大量に費やす。

部屋から出て、廊下の隅々まで眺めた。するといきなり髪を強引に引っ張られ、壺の置かれているテーブルの前に立たされる。いきなりの激痛に叫びたくなったが、堪えた。

「このテーブルの下が汚い。もう一度履きなおせ!」

「は、はい……申し訳ありません」

お辞儀をしたら、いきなり腹を蹴られた。その瞬間激痛が走り、お腹を手で抑えて床に倒れる。何が起きなのか分からず目を見開いていたら、いきなり身体を何発も蹴られ踏みつけられた。顔を蹴られていないのは不幸中の幸いだ。それらと同時に罵声も飛んでくる。

「こんなこともできないのか!この出来損ないのクズが!謝る暇があるなら最初っから何度もチェックしろよ!このゴミ野郎!」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

アークは啜り泣きをしながら何度も謝った。それでも蹴ったり踏んだりするのをやめない。むしろ激しくなる一方だった。痛くて仕方がない。

やがて足が止まり、持ってきたであろう雑巾とバケツを床に置いた。強い口調で話す。アークは従うように頷いた。

「テーブルの下を履いたら、上を拭け。この壺は親父が買ったものだ。割るんじゃねえぞ。割ったら殺すからな!」

「はい……」

彼は血が上った赤い顔のまま、寝室に向かっていく。アークは死にたくなかったので、壺を割らないよう慎重に履いていく。

しかし、もう深夜に近かい。そのせいかとても眠くて、掃除などしていられないほど疲労していた。ホウキがテーブルの柱に強く当たり、壺がグラグラと揺れる。

パリンと大きな音がして音の方を見たら、壺が無惨にも割れていた。ネテルに殺されてしまう!

そこへ黒髪の旦那様がたまたま通りかかる。顔が青ざめてしまう。

「お前……私が大切にしていた壺を……」

「も……申し訳ありませんでした。弁償代としてお金払いますから……」

「まあ、いい。また買えばいいだけだ」

見た目から冷酷な感じがしたのに意外と寛容的で、ほっとした。そんなに怒ってはいないようだ。しかし次の発言で、震え上がってしまう。彼の目はギラギラしていた。

「お前が悪魔に体と臓器を売って、その貯めたお金で払えるなら多めに見てやってもいいぞ」

「ひぇ……」

思っていた以上に怒っていたらしい。少し不気味に笑った後、その場から去っていった。この屋敷にいる人間に、常識のある人がいないように感じてしまう。

一刻も早く逃げたい気分だ。しかし立場上、逃げることも隠れることもできない。歯を噛み締めた。

先ほど途中だった掃除を終わらせ、壺が置いてあるテーブルを拭く。また割らないよう、神経を集中する。

「やっと終わった……」

大きなため息をついて床に座った。疲労が凄まじく、今すぐにでも倒れてしまいそうだ。

少し残っている力でフラフラと廊下を歩き、扉をコンコンと叩く。しかし返事がない。寝てしまっているのだろうか。次は強く叩く。すると扉が開いた。そこにはネテルが眠そうな目で立っている。大きなあくびをしていた。

よく見たら上半身裸で、パンツ一丁の格好だ。ガッチリとした筋肉ついていて、とても男らしい体つきだ。

「俺は今眠いんだ。話しかけんなよ」

「掃除が終わりました。ぼ、僕の部屋がどこにあるのか、分からなくて……」

そう言葉を放った瞬間、その場で倒れてしまった。ぐぅぐぅといびきをかき、眠りについてしまう。

久しぶりの睡眠だ。働いた後だから、よく眠れる。

「はぁ……仕事増やしやがって」

大きなため息をついたままアークを持ち上げ、自分の寝室に持っていく。軽いので、少し力があれば持ち上げることができる。

ネテルは彼の汚らしい服を脱がし、自分の青いボクサーパンツを履かせた。アークには大きいようだ。

ベッドの上に彼を寝かせて、その隣で横になる。

「今日だけだからな……」

彼は布団を敷いて、そのまま眠りについた。すると、アークが近くに寄ってきて頬ずりをしてくる。白髪の毛があったって心地よく、色気のある体つきにネテルは欲情してしまう。

現在の時間は深夜一時だ。

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