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「だからメリー、一緒に来てくれる?」
「モチロンなのです!」
翌朝メリーに事情を話すとそう被せ気味に快諾してくれてホッとする。
そしてメリーは鼻息荒く続けた。
「7年前お供出来なかった分、このメリー命をかけてコハルさまをお守りいたします!」
「や、命までかけなくていいから」
苦笑する。
――そう、7年前私の旅にメリーはついて来なかった。
魔物の存在自体妖精には毒のようなものらしく、魔物にいつ襲われるかわからない私の旅にはついて来れなかったのだ。
そして比較的安全だった『花の王国』でいつも私の帰りを待っていてくれた。
メリーはそのことをずっと悔しがっていて……。
「そういえばメリー、魔族は平気なの?」
今回の旅はおそらく魔族の調査になる。
魔族たちと直接会うことも、最悪衝突することもあるかもしれない。
魔物の存在が毒になるというメリー。魔物と人間の混血だという魔族は大丈夫なのだろうか。
「あの竜人族が平気なのできっと平気なのです!」
「きっと、って……」
「平気なのですっ! だからメリーも連れて行ってくださいコハルさま!」
必死な顔でメリーはボフっと私の胸に飛び込んできた。
確かに一応魔族だというリューにメリーは何度も自分から突っ込んで行っているし、平気そうではあるけれど。
私はメリーを抱きしめて言う。
「一緒に来て欲しいのは私の方だし。ありがとう、メリー。でも、無理だってわかったらすぐに言ってね」
「はい!」
少し心配だけれど、メリーが一緒に来てくれたら本当に助かるのだ。
話し相手になってもらえるし、癒しの魔法は使えるし、見ているだけでも癒される。最高の旅のお供だ。
それに、聖女の力を使い私が動けなくなってしまっても、メリーがいてくれればすぐに回復してもらえる。
今回の旅で聖女の力を使うような事態にならなければ、それが一番良いのだけれど。
(そういえば、護衛をつけるって言ってたっけ)
ふと昨日のリューの言葉を思い出す。
(どんな人だろう。護衛ってくらいだから、きっと強い人なんだろうけど……)
頭に浮かんだのはゲームに出てくるような強面でムキムキの戦士で、慌ててぶんぶんと首を振る。
しばらくの間一緒に過ごす仲間だ。出来れば一緒にいて気を遣わない、話しやすい人がいいと思った。
そして、いよいよ出立のときが来た。
(こういう格好懐かしいな)
用意された服装は流石にドレスではなく、動きやすく露出の少ないパンツスタイルだった。
7年前もこんな格好でこの世界を旅したのだ。
ドレスより断然馴染みのある服装に少し心が浮き立つ。
(これなら自分で着替えられるし)
自室の姿見で可笑しなところがないか最終確認をして、よしと頷く。
「じゃあ行こうか、メリー」
「はい!」
最低限の持ち物を入れたバッグを手にエントランスへと向かう。
しかしエントランスが見えてきたところで私はぴたりと足を止めた。
(ひぇっ)
私の見送りのためだろう、この竜の城で働く皆がずらりと並んでいたのだ。
こんなに大勢が集まっているのを見るのは、リューと共にこの城に足を踏み入れ大歓迎を受けたあの時以来だ。
メリーも人の多さにびっくりしたのだろう私の背後にささっと隠れてしまった。
(そっか、あのときメリーは寝てたんだっけ)
こういう待遇は未だに慣れないなぁと思いながら大きな扉の前で待っているリューの元へと足早に向かう。
カネラ王子はこの場にはいない。城の外で待っているのだろうか。
「お待たせしました」
私がそうリューに声を掛けた途端。
あの時のように一番手前にいたセレストさんが恭しく頭を垂れた。
「コハル様、いってらっしゃいませ。我ら一同コハル様の無事のお帰りを心待ちにしております」
「いってらっしゃいませ!」
「いってらっしゃいませ!」
「いってらっしゃいませ!」
「い、行ってきます」
久しぶりに聞いたその大合唱にメリーは私の背後で文字通り飛び上がって驚き、私も若干顔が引きつってしまうのを感じながらぺこりと頭を下げたのだった。
「コハル様、お待ちしておりました」
「え?」
リューと共に扉を出てすぐのところに片膝をつき頭を垂れている人物がいた。
その声にはすごく聞き覚えがあって。
「この者にコハルの護衛を任せた」
「護衛? って、えっ!?」
リューの言葉を受けてゆっくりと顔を上げた“彼女”を見て、私はあんぐりと口を開ける。
「ローサ!?」
その格好はこれまでの所謂メイドさん風の格好ではなく、私と同じ動きやすそうなパンツスタイルで。
だから瞬間彼女だとはわからなかったのだ。
しかもその腰には細身の長剣を携え、それがとても良く似合っていて。
「ローサが、護衛?」
「はい。この度、わたくしコハル様の護衛兼侍女を仰せつかりました」
「えっと……ローサって、もしかして強いの?」
私のそんな間抜けな質問にも、ローサはきりっとした表情を崩さずに答えてくれた。
「わたくし、竜帝陛下より竜騎士の称号を戴いております」
「竜騎士!? ローサが!?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
私の隣にふわふわと浮いているメリーもやはり驚いているようで。
竜騎士という名は昨日聞いたばかりだけれど、まさかこんなに近くにいるなんて思わなかった。
「この者はこの国初となる女性の竜騎士だ。――コハルのこと、よろしく頼むぞ」
「はい、竜騎士の名に懸けてコハル様をお守りいたします」
そんなリューとローサとのやりとりをポカンと見つめていると、すくと彼女は立ち上がり、私にいつもの優しそうな笑顔を向けた。
「それでは参りましょう、コハル様。門のところでカネラ殿下がお待ちです」
「あ、はい」
まだ信じられない気持ちで呆然と足を踏み出したそのとき、ぱしっと手を取られた。
「コハル。気を付けて」
リューが私の手を強く握り言った。
私は背筋を伸ばし、そんな彼をまっすぐに見つめる。
「はい。行ってきます。リュー」
するとリューは優しく微笑んで、私からゆっくりと手を離した。
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新城かいり
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