ツッコミを入れて笑う宇佐美。
隣のイスに腰を下ろしてから一言こぼす。
「あーそっか。子供扱いされたと思ったんだ」
「だってそうやろ。毎回お菓子渡してくるの僕にだけやし。他の連中にはたまにあげてるくらいなのにさ」
「あはは、そこは分かってたんだ」
不意にくふ、といつもと違う笑い方をした。頬を緩ませて僕を横目に見る。
“そこは分かってたんだ”……?
「どういうこと?」
「言ったまんまだけど?」
いたずらっぽい笑顔の宇佐美。
なんか企んでるぞこいつ。
そう思ったがただ単に意地悪したい時の顔じゃない、どこか見守るような暖かさもある眼差しを向けられていることに遅れて気がつく。
初めて見た表情と真意の見えない状況に若干動揺した。
「なんっ……え?」
「そう。カゲツにだけ毎回あげてた」
「なんで……?」
「今回のお菓子だけじゃないよ。前からカゲツにだけ色々と言ってみたりやってみたりしてた。……気づかなかった?」
思い当たる節がある。
僕に世話を焼いていた彼。僕にだけやっていたというけれども。
あれが子供扱いじゃないとすれば特別扱いとでもいうのだろうか。
たどり着いた考えに躊躇う。
勘違いでしょ。
「ただ友達ってだけでそういう事しないよ、俺」
彼が付け加えた一言でその勘違いが勘違いじゃないと確定する。
「……え……?!」
ガタッ、とイスから跳びはねるようにして立つ。顔を見られまいと両腕で視線を切るようにして顔前で交差させて2、3歩後退りする。
今、なんて言った?
ただの友達にそんな事しない、だとすれば宇佐美は僕をただの友達とは思っていないということになる。
僕優先で僕にだけやってた色々と毎回くれたお菓子。どれもこれも好意がなきゃしないこと。なぜ今まで気がつかなかったのか。
いや、やばい。僕、今物凄い変な挙動してる。
ごちゃごちゃの脳内に突然冷静な自分が戻ってきて大急ぎでズレたイスを戻してそのイスに座り直す。
それを見た宇佐美が堪えきれずに吹き出す。
「ふっ、ククク……落ち着いた?」
「……笑っとんちゃうぞ宇佐美」
顔をそらしてむくれながら言う。
くそ、恥かいた。
「カゲツ」
「何?」
顔が熱いまま、宇佐美の方を見れば目を細めて微笑んでいた。
「俺がカゲツのこと好きだってこと、分かった?」
いつになく優しい声と表情。
顔が熱いまま、黙って頷いた。
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