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キラ、リゲル、アイク、凪による、倭国での進化を見せた怒涛の攻撃が炸裂し、見事に三属性を風拡散させ、魔族軍指揮官 リムル・リスティアーナを地へと叩き落とすことに成功したが、リムルの莫大なオーラは更に増した。
「クソッ……! 三属性の拡散には成功したのに……!」
「やはり……我々では未だ力不足…………」
そんな汗が滴る中、高所から余裕綽々と座り込み、高みの見物を決めていた雷の使徒 セノ=リュークは、ニタリと笑みを浮かべながらヒノトに近付いた。
「これからだよ、灰人…………」
「は!? これから……!?」
すると、突如として闇で支配されていたはずの膨大なオーラは、キラキラと青色の結晶に変わり、吹雪が辺り一体を覆った。
「寒っ…………なんだこれ…………!」
「前にも話したと思うけど、彼女は己の傲慢さが故に、現魔族軍の指揮官の地位を獲得したが、力は僕と変わらないのさ。彼女の本当の地位は、魔族軍指揮官じゃない。氷の女皇…… “氷の使徒” リムル=リスティアーナ」
「お前や、エルと同じ……氷の使徒…………!」
そして、先程からチラチラと見せていた氷の魔法にも頷けた。
だとすれば、様々なことに納得がいく。
セノは、ヒノトに闇魔法も見せていた。
と言うことは、リムル=リスティアーナが、 “闇魔法と氷魔法” を扱えるのに、なんの違和感もない。
しかし、だとするならば、難題が増えたことになる。
先程の攻撃で破壊できなかったシールド…………。
「アイツ…………闇シールドと、 “氷シールド” の両方が備わってるってことだな…………!」
「察しがいいね。その通り。三属性を風拡散することで、闇シールドの破壊はできても、それを守る氷シールドが彼女には展開されている」
ボン!!
その瞬間、ヒノトは目を光らせて飛び掛かる。
「なら……今しかない…………!!」
ヒノトの剣には、轟々とした炎が舞う。
「察しがいいね。やはり “灰人” の器になるだけのことはある……。でも…………」
セノは一人でに呟き、目を細めた。
ゴォッ!!
「くっ…………!!」
ヒノトは、凄まじい氷風に吹き飛ばされる。
「その火力じゃ……彼女には届かない……」
「クソッ……! どうすりゃいいんだ!!」
轟々と激しい氷風を吹き上げながら、リムル・リスティアーナは大きな声で高笑いを上げた。
「アッハハハハハ!! 倭国の民も、キルロンドの若き兵たちも、裏切り者たちも……私が今、皆この手で殺してやろう!!!」
“水牢・叢雨”
ヒュン!! と、高速の水を纏った刃がリムルに遅い掛かるが、易々と防がれてしまう。
「弱くなったか……? シルフ・レイス……」
「子供たちだけに……無理はさせない……!!」
ゴォッ!!
その途端、背後から巨大な斧が振り翳される。
「その通りだ、シルフ」
しかし、渾身のラスの一撃も、易々と防がれた。
「他の魔族軍が契約上、貴様に手を出せないのは知っている……だからこそ、ここでお前を倒さないと……!!」
「貴様らの力では無理だ!!」
ギリギリと二人の攻撃を笑みを浮かべながら受け続けるリムル。
その瞬間、
“炎攻撃魔法・ブラストバーン”
ゴォッ!!!
ルギアは先程よりも巨大な火力の炎魔法を繰り出す。
「貴様…………まだそこまでの魔力が……!?」
「ガキ共が身体張ってる時に……隊長が身体張れないわけがねぇだろ!! なあ!?」
すると、背後から更にけたたましい爆炎が広がる。
「その通りです、ルギアさん。大将はいつでも、前線で道を切り開く…………。師匠……若き命に、道を……」
“狐架・炎獄”
そして、徳川はロングソードを、長槍を振り下ろすかのように、ガン! と地面に叩き落とした。
「あれ、坂本さんに教わった長槍の縦薙ぎだ!!」
ゴォォォ!!
そのまま、縦に轟々と燃え盛る炎柱は、周囲の氷を吹き飛ばしながらリリムへと襲い掛かる。
「この身を盾にしてでも…………」
「大丈夫だ、シルフ。今回だけは守ってやる。お前にも色々あったんだろう。学生たちの鍛錬、助かったぞ」
そう言うと、ラスはシルフの前に出た。
「ふっ、お前が再び、師匠の技を使うとはな……」
“狐架・氷河”
ガガガガガガッ!!
徳川の炎が襲い掛かる瞬間、ラスは氷を纏わせた斧を連続で突き出すことで、一瞬にして溶けてしまう氷を逆に利用し、その場に衝撃波を生み出し、自らとシルフの身を守った。
ボン!!
その音が聞こえた瞬間、三人は自ら炎へと斬り込む。
Bパーティ、氷の長槍を突き出す、キース・グランデ。
「全員、攻撃のタイミングを合わせろ!!」
“氷鷹・刺突”
Bパーティ、水の水刃を放つ、ユス・アクス。
「ヒノトくん……君には負けないぞ……!!」
“水浄・斬舞”
Bパーティ、風の拳を振るい上げる、ロス・アドミネ。
“風攻撃魔法・風狗拳”
そして、リゲルの炎を剣に纏わせる、ヒノト。
“陽飛剣・灰炎豪弾”
ゴゥッ!!!!
四人の同時の攻撃が、徳川の炎の防御で手一杯になっていたリムルへと襲い掛かる。
「こんなものでは……二重のシールドは……!!」
しかし、やはり氷シールドは砕けない。
「ハアアアアアアッ!!!」
その時、リゲルと咲良は互いに眼を紅くして剣を振り翳していた。
“炎魔・斬火”
“風魔・参”
「リゲルが炎魔の力を操ってる……!?」
ハッとセノを見遣ると、ニタリと笑みを浮かべながらもその額には汗を滴らせ、リゲルの魔族の力の扱いをサポートしている姿が見えた。
そして、咲良も再び、エルを身体に入れ、魔族の力と掛け合わせた異邦剣術を繰り出していた。
ヒノトはその光景を、まるでスローモーションかのように、キラキラと輝いて見えていた。
倭国兵、キルロンド、魔族、全員の力が一丸となった時の破壊力は、リムルの力を遥かに凌駕していた。
ガァン!!
「ハァハァ…………」
辺りは、強大な攻撃の連発に、煙が満ちる。
「三属性に風の拡散……それから、更に炎魔の力と風魔の力による拡散……。これだけやれば、闇シールドも、氷シールドも、破壊できたはずだ…………」
一息、安堵の顔を浮かべる皆々、ラスやシルフでさえ、ニヤリと勝利の笑みを浮かべようとした瞬間、
「「 下がれ 」」
全員を庇うようにリムルを囲んだのは、魔族軍 雷の使徒 セノ=リュークと、風の使徒 エル・クラウン。
“合体闇魔法・帳”
瞬時にして、二人は暗黒の結界を周囲に張る。
「お、おい! どう言うことだよ!!」
焦るヒノト、セノからは、いつもの笑みは消えていた。
そして、ヒノトは目の前の光景に、唖然とする。
「どういう…………ことだよ…………」
リムルは、自らを燃やすように、轟々とした炎に身を包み、氷風とは真逆の熱風を放出させていた。
その熱から、セノとエルは、全員を守っていた。
「氷の使徒じゃ…………ないのか…………?」
脱帽するヒノトに、セノはギラっと睨む。
「灰人!! 属性を炎から雷に切り替えろ!! 灰人の力ならできるはずだろ!!」
「そんな……切り替え方なんて…………」
ヒノトは頭をぐるぐると回転させるが、咲良の風魔力を受け取った時も、リゲルの炎魔力を受け取った時も、自分が何をしたかなんて分かっていなかった。
「そのままじゃ、折角弱められたリムルの魔族の力が蘇るし、お前の炎は一切効かないぞ!!」
「そう…………言われても…………」
困惑する中、ルルリア=ミスティアは静かにヒノトの背を叩く。
「大丈夫、ヒノトくんが雷を出せたら、きっとアイツに勝てる。私の風バフで更に強化できるから」
「ルルリア…………」
その時、闇に包まれた上空はバチバチと輝いた。