コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ヒノトたちの遥か上空から、バチバチと激しい光が見えた瞬間、それは、大きな音を立て、リムル=リスティアーナを攻撃した。
ゴォン!!
その威力に、セノとエルの結界も破壊される。
「まったく……来るなと言っていたのに……」
「ゲフッ……ゲフッ……」
絶えない砂煙に、ヒノトは咳き込みながらも、眼を細めながら焦点を合わせた。
「そんな……嘘だろ…………」
そこに居たのは、
「まだそのレベルか、愚民」
「レオ…………!!」
金色の髪に黒髪をバサバサと生やし、紅い眼でヒノトを睨み付ける、レオ・キルロンドの姿だった。
「今の一撃で……リムルを気絶させた…………?」
煙が晴れる中、レオは気絶したリムルを踏み付けにしていた。
「レオくん、前にも言ったけどさぁ……」
セノが話し掛けた瞬間、レオはその場から消える。
「ヒノト!!」
“岩防御魔法・岩陰”
遠目から二人の様子を見ていたグラムは、咄嗟の反応でヒノトに岩防御魔法を展開させた。
ガッ!!
ヒノトもまた、咄嗟の反射で剣を防いでいた。
ボン!!
レオの雷と、ヒノトの炎が “過負荷” を起こし、大きな音で爆発音を発したが、ヒノトはグラムの岩シールドに守られた。
「な、何をするんだ!! レオ!!」
しかし、レオはヒノトの言葉に反応はしない。
スッとヒノトと距離を置くと、レオは静かに、以前のように、ヒノトへ剣先を向けた。
「やる気なんだな……レオ……! 洗脳されてんのかなんなのか分かんないけど、今度こそ取り戻してやる……!」
その瞬間、ヒノトの心臓は熱く高鳴った。
(この激しい鼓動は…………?)
何度か感じたことのある、自身を巡る魔力の反応。
「このバチバチと脈打つような魔力は…………」
バチバチバチ!!
次の瞬間、ヒノトの剣からは、バチバチと激しい雷の魔力を放った。
「分かったぞ、灰人の力……。属性の切り替え方……」
その姿を見た瞬間、セノはニタリと笑った。
グン!!
次に、ヒノトの剣は岩の魔力を放ち始めた。
「やっぱり……。灰人の力……属性の切り替え方……。これは、『受けた魔法の属性を扱える』んだ!!」
その様子を眺めていたリリムとグラムの二人は、静かにヒノトの横に並んだ。
「ヒノト、レオを取り戻すのよね?」
「支援は任せろ…… DIVERSITY の復活だ……!」
その横に、もう一人の男が並んだ。
「お前……明地……! 魔族化は大丈夫なのか……!?」
「お前が咲良から風の使徒を引き剥がしたからな。俺は貴様らキルロンドの奴らよりも優れていると思っていた。しかし、それは確かな驕りだった。指揮官を倒したのもお前たちキルロンド生たち……共に鍛錬したと言うのに、俺ら何の役にも立てなかった。もう、お前たちはほぼ魔力を使い果たしているだろう。話は分からないが、お前らの様子を見ていれば分かる。あの魔族化してる男は仲間なのだろう。今度こそ、協力してみせる……!」
そう言うと、明地は大きな斧を振り上げた。
バチバチと雷シールドと共に、闇魔力も同時に放つ、リムルを一撃で気絶させた力を得ているレオ。
そして、グラムの岩魔力を宿したヒノト、リリム、グラム、明地拓真の、即席岩パーティ四人編成が並んだ。
「ヒノト、レオの攻撃は一撃で俺の岩防御魔法を打ち砕くぞ……。俺も最善を尽くすが、さっきまでの戦いで魔力も尽きかけている……。何度もは守れないと思ってくれ……」
「大丈夫だ、グラム。その為に、グラムの岩魔力を借りたんだ。四人で撹乱して、確実な一撃を喰らわす……!」
次の瞬間、再びヒノトの眼前にレオが飛び出る。
(やっぱり早ぇ…………!)
ガン!!
「そん……な…………」
全員の反射よりも先に、レオの剣が先にヒノトの剣を捉えていた。
倭国製の頑丈な剣を、レオは一撃で砕いた。
「剣が…………!!」
しかし、考えている暇はない。
レオは既に次の攻撃の為に剣を振り上げている。
「ヒノト…………!!」
キィン!!
レオの攻撃を防いだのは、岩魔力を斧に纏った明地だった。
「ほら!! 早く剣を取り戻せ!!」
恐らく、明地は『新しい武器を持ってこい』という意味で言ったのだろうが、ヒノトの脳裏には、明地の斧を目の前に、とある光景が過っていた。
「そうだ……バーンさんの…………!」
“岩魔法・ウォールスォード”
ヒノトは咄嗟に、砕けた剣より一回り大きな、岩魔法で創られた剣を出現させた。
ガッ!!
瞬時にヒノトは剣を振り上げると、避けようとしたレオに小さな擦り傷を付けた。
(なんだ…………? 俺の攻撃が早い…………?)
そして、握っていた剣を眺めた。
「そうか……老人なのにロングソードマンのバーンさんが岩魔法で剣を作っている理由……。鉄製や倭国の武器より魔法で創った無機物の剣だから軽いんだ……!」
シュッ!!
そのまま、ヒノトは虚を突き、槍のように突き刺す。
ミン…………
「それに、岩魔力で創られた剣なら、当てただけでも雷シールドを削れる…………!」
ヒノトに一突きを受けたレオも、次第に笑みを浮かべさせていた。
「なるほど……闇魔力の弱体化とはこういうことか……」
レオは、静かにヒノトを見つめ、呟いた。
「お前……洗脳されてないのか…………?」
「あぁ。あの時は混乱状態にあったが、洗脳は受けていない。闇の力を得たのは、私自身の意志だ」
「なんでお前……キルロンドの王子だろ!!」
その言葉に、レオの目付きは鋭く変わる。
そして再び、闇と雷の魔力を放出させた。
「は〜い、そこまでだよ、レオくん」
ガタッ!
静かに、セノはレオの肩を叩くと、レオはその場にドサっと膝を突かされた。
「貴様……後で覚えていろ」
そう言いながらも、レオは睨み付けるだけだった。
「レオとセノに……何があったんだ…………?」
困惑するヒノトに、セノは静かに近付く。
「もっと強くなれ、灰人。そうだな、リムルを倒してくれた褒美に、今回の僕たちの目的を教えてやろう」
ザッと、ラスとルギアもヒノトに並ぶ。
「今回の第一目標は、『リムルの回収』だ」
「回収…………?」
「あぁ。見た通り、彼女はとある実験に成功し、氷の使徒ながら炎の魔力に目覚めた。指揮官の権利を得、僕たちに指図していたのは、この力と、『魔族同士では争えない』という契約を利用してのことだったんだ」
「だから……俺たちにリムルを倒させた…………。最後はレオが止めを刺したけど…………」
「レオくんもまだまだ不安定だからね、安静にしてるように言ったんだけど、新たに目覚めた力を使いたくなっちゃったんだろうね。今回の計画も教えたからさ……」
「今回の…………計画…………」
「あぁ。リムルの回収、それは即ち、僕ら全員が二属性持ちの魔族へと進化することさ!」
「全員が…………二属性持ち…………!?」
「アハハハ! ヒノトくん! 君は灰人で、ある意味全属性を扱えるんだから、君の方がそれでもズルだろう!」
言い返す言葉がなく、同時に、セノの更に先を読んでいた行動に絶句しながらも、セノを見付め続けた。
「そして、第二目標は、君。 “灰人” の力をちゃんと覚醒させること。だからレオに止めを刺して欲しくなかったんだけど、ちゃんと覚醒させられるように、自分を敵として動いてくれたみたいだ。ちゃんと仕事をしてくれたから、今回はお咎め無しとしよう」
次第に、ラスは汗を滲ませた。
「ラス・グレイマン。緊急な状況にも関わらず、自分の子供に先陣を切らせ、戦わせ続けたのは、君たちキルロンドの目標も、 “灰人の覚醒” だったからだよね?」
ニコッと笑うと、何の躊躇いもなしに背を向けた。
「次に会うのは、恐らく戦場だろう。でもその前に、君はエルフ王国に行く」
「な、なんで分かるんだよ…………」
「もう全てが、僕の掌の上だから……かな」
再びニコッと微笑むと、セノはリムルを抱え、エル、ルルリア、レオは同時に姿を消した。