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Episode 10ランク戦終了後。
黒瀬隊作戦室。
モニターには先程の試合映像が流れていた。
「ここです」
奈央が映像を止める。
画面には建物内部へ入ろうとしている黒瀬。
その瞬間。
黒瀬が一瞬だけ足を止めていた。
「この後ですよね」
再生。
黒瀬はそのまま入らず、 壁沿いへ移動。
直後。
建物の角から敵アタッカーが飛び出した。
もしそのまま進んでいれば、 完全に鉢合わせだった。
三上が椅子にもたれながら言う。
「まぁ危なかったな」
「いえ」
奈央が首を振る。
「私が気になったのはそこじゃなくて」
再び巻き戻し。
停止。
黒瀬が止まる瞬間。
「黒瀬くん、 ここでまだ敵を視認してないですよね?」
沈黙。
三上が映像を見る。
確かに。
まだ見えていない。
レーダーにも映っていない。
音もない。
なのに。
黒瀬だけ先に警戒していた。
奈央が続ける。
「しかもこれ、一回だけじゃないです」
映像が切り替わる。
別場面。
遮蔽物の奥。
敵ガンナーが射線を通そうとした瞬間。
黒瀬だけ先に下がっている。
さらに別場面。
カメレオン状態の敵が接近。
だが黒瀬は接敵前に位置を変えていた。
奈央が小さく呟く。
「何となく避けてる、というより……」
「先に気付いてる感じなんですよね」
数秒沈黙。
水瀬がソファから顔を上げる。
「確かに黒瀬くん、 妙に先に下がる時ありますよねぇ」
三上が映像を見たまま口を開く。
「……俺、前からちょっと思ってたんだよな」
「え?」
「こいつ、サイドエフェクト持ちじゃねぇのって」
奈央が目を丸くする。
黒瀬だけが首を傾げた。
「いや」
「そんな大したのじゃないですし」
「否定早ぇな」
三上が笑う。
「個人戦見てても妙だったんだよ」
「見えてない相手にだけ妙に慎重になる時あるし」
「逆に、“いない”って時は結構雑に踏み込むし」
黒瀬は少し考える。
「……近くにいる感じしたんで」
「え?」
「何となくですけど」
沈黙。
奈央が止まる。
三上が頭を抱えた。
「説明が雑すぎるんだよお前」
翌日。
「でも実際、 かなり怪しくないですか?」
奈央が端末を操作しながら言う。
「ですよねぇ」
水瀬もジュースを飲みながら頷く。
「黒瀬くん、 たまに先に避けますし」
黒瀬は少し考える。
「……勘ですし」
三上が呆れたように言う。
「勘であそこまで接敵避けてたら怖ぇんだよ」
黒瀬は少し黙る。
「……でも」
「割とあるじゃないですか」
「先生もうすぐ来るな、とか」
沈黙。
奈央が首を傾げる。
「それは……時間で何となく分かるんじゃないですか?」
「え?」
黒瀬が止まる。
三上も頷く。
「チャイム前とかだろ?」
黒瀬は少し考える。
「……あぁ」
「じゃあ、 曲がり角で人来そうだな、とか」
「それはたまにありますねぇ」
水瀬が言う。
黒瀬が少し安心したように頷く。
「ですよね」
「後ろ誰か通りそうだな、エレベーター開く前に人乗ってるなとか」
沈黙。
奈央が固まる。
三上が真顔になる。
「いやそれは分かんねぇよ」
黒瀬が少し止まる。
「……そうなんですか?」
「そうなんだよ」
三上が即答した。
奈央も苦笑する。
「多分、 黒瀬くんの“普通”がちょっとズレてます」
黒瀬はまだ納得していない顔をしていた。
後日。
本部。
適性検査室。
「……そこまで大事になるんですね」
黒瀬が少し困ったように言う。
「まぁ、一応な」
三上が肩を竦める。
「サイドエフェクトなら正式登録もあるし」
奈央も小さく頷いた。
「能力の把握は大事ですから」
検査自体はそこまで長くなかった。
トリオン反応。
脳波測定。
感覚反応。
いくつかの確認が終わり、 担当員が資料へ目を通す。
そして。
「あー……」
担当員が小さく声を漏らした。
「反応出てますね」
沈黙。
黒瀬が止まる。
「……本当ですか?」
「はい」
担当員が頷く。
「正式にサイドエフェクト判定になります」
三上が少し笑う。
「やっぱりか」
奈央もどこか納得した顔をしていた。
一方。
黒瀬本人だけが、 まだ微妙な顔をしている。
「……でも、そんな大した事してないですけど」
担当員が資料を見ながら説明する。
「能力としては、 近距離感知寄りですね」
「正確な位置や人数を把握するものではありません」
「ただ、“近くに誰かいる”という違和感を感知しやすいタイプです」
「特に接敵前の警戒行動との相性が良いですね」
三上が即座に言う。
「黒瀬の戦い方と噛み合いすぎなんだよな」
カメレオン。
奇襲。
接敵。
待ち伏せ回避。
全部噛み合う。
担当員も頷いた。
「隠密機動系とは相性が良いと思われます」
黒瀬は少し黙る。
そして。
「……皆ある訳じゃなかったんですね」
三上が笑った。
「だから最初からそう言ってんだろ」
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み ん と