──────めめさん視点──────
城門前で、ひたすら待ち続ける。今はある意味ひとりではない。眠ってしまったれいまりさんが隣にいる。それだけでも十分ありがたかった。…出来れば他愛もない雑談をしながらが良かったが、今となってはありえない話になってしまった。その事が酷く惜しく思える。
…止めなかったのは私なのに今更悲しむとかどの面下げてるんだが、と自身のことを嘲笑う。ずっと、ずーっと私であり、私でないものが私を責め続ける。仕方がないことだった、なんて聞かれてもないのに自身に言い訳をして。何回も、何回も自身に言い訳をして…。醜い。そんな言葉が脳裏によぎった。それを肯定するなんてことは許されなかった。
「…れいまりさん…寒いですよね。すみません。」
良く考えれば眠っている人を外に野ざらしにするのは良くないだろう。魂をひとつ、実体化させ、棺桶の中へと入れるよう指示する。魂はゆらゆらと揺れながら頷き、れいまりさんを運ぶ。ちょっとしたドッキリなのだ。起きたら棺桶にいるドッキリ。きっと、驚くに違いない。
私は、まだ、みんなの帰りを待ち続ける。
…やがて周囲が熱くなるのを感じる。暑く、なんて生ぬるいものでは無い。熱い。肌にジリジリと焼けるような痛みが伴う。このままいれば灰になってしまうかもしれない、と思うほどには錯乱してしまう。そう、この熱気を放っているのは──────ラテさんだった。
「ラテです。ただいま、帰還しました。」
膝をつき、頭を下げ、そう報告を行うラテさんに了解、と軽く返す。周りに展開している熱気とは真反対の態度に少々困惑はしたが、これくらいで取り乱すほど小心者ではない。
「『清掃』ご苦労様でした。」
私がそう半笑いでいえばラテさんはニヤリと笑いながら会話を続ける。
「いやぁ〜粗大ゴミでしたよw中身はすっからかんでしたけどw」
ラテさんが担当したのは『巨人』だった。相当燃やしがいがある種族だと思ったが、やはり、とでも言うべきかラテさんにとって簡単な事だったらしい。ラテさんが軽く手を降れば空中に光る文字が浮かぶ。
「はい、これしょーこ」
そう言って見せてきたのは『巨人絶滅』というたったの四文字だった。その種族を絶滅においやった人には称号が与えられるらしい。これがあればほかの種族を脅す…話し合いの時に役立つのかもしれない。まあ、この村のほとんどが脳筋なため使いどころがあるかは微妙だが。
「…確認しました。とりあえず城にはいっておきましょ。」
私が城の内部に入るよう促せばへいへーいという適当な返事をしつつ城へと入ってくる。
「それでは、改めまして。」
私は城に入る直前のラテさんの前に立って、そして、笑顔で言う。
「おかえり。ラテさん!!」
私がそう言って抱きつけば、ラテさんはやれやれ、と言った感じで抱き返してくれる。…正直嬉しいことこの上なかった。暖かい。ラテさんは私の体温よりもずっと、ずぅっと暖かい。その温もりに埋もれてしまいそうなほど。
「ただいま。村長。」
ラテさんは小声でそういう。…あぁ、返事があるというのはこんなにも嬉しいことなのか。心が自然と喜びに満ち溢れる。最高な気分だった。
「…ありがとうございます。やっぱり、生って素晴らしいんですね。」
「当たり前でしょ?生きてなきゃ何も出来ないんですからw」
そんな会話をしつつ、ラテさんをリビングへと連れていく。まだ、帰ってきていないだけだがとても広くて、鬱陶しいほど大きな声も響いていない。静かで、殺風景のようにも感じる。シャンデリアが無情にも部屋の灯りをともしていた。
「…めめさん、死亡者の人数。」
ラテさんが簡単な言葉で重いことを聞く。私も、軽い調子で、でも重く受け止めるべき事実を言う。
「推定5名。その内死亡確定者はぜんさん、ガンマスさん、れいまりさん、レイラーさん残り1人はまだ不明。」
「ふーん了解。」
軽い調子でラテさんも言葉のキャッチボールを続けているが、目線が定まっていない。それに、声が1オクターブ上がっている。…というのは冗談にしろ、声が上ずっている。普通の人ならば気づかないほどだが、私は騙されない。
「…ぜんさんは遺書を残しているそうです。」
「それを見ていいのはめめさん。めめさんだけだよ。」
私の名前を2度繰り返すラテさんは相当焦っていたのか、呂律がまわっていない。…炎よりも赤い瞳が不安そうに揺らいでいた。その目に吸い込まれそうになるがそれはテレパシーによって遮られる。
「私です。茶子よ。」
私は一瞬脳内に疑問が浮かぶ。茶子、と名乗っているが声や口調は明らかに菓子さんであった。私は、思わず口走る。
「えっと…菓子さん…ですよね?」
そういうと早口で返答が帰ってくる。。
「違う、私が茶子よ。…まだ、慣れていないから大目に見て頂戴。これから慣れていきますから。」
段々と口調が茶子さんに似ていく菓子さんに何があったのかをすぐにでも聞きたかったが、一旦は受け流すことにする。とりあえず話を合わせる。
「…茶子さん、報告を。」
そういうと茶子さんを名乗る菓子さんが報告を始める。
「人間は人数が多かったけれどとりあえず全滅は完了です。けど、茶…菓子はシスターの振りをしていた天使に不意打ちでやられてしまったの。…詳しいことは戻ってから話しますね!失礼します。」
プチッと無断でテレパシーが切られる。…段々と声も茶子さんに似てきている。それに、口調も今はぶれているが、そのうち完全に模倣するだろう。
「めめさん?大丈夫?誰からの報告?」
ラテさんが慌てて私の近くにより、状況を聞いてくる。…みんな、報告するのは私であり、他の人にはしていないらしい。その証拠にラテさんは私を心配そうに見るだけで、先程のテレパシーの話はしない。
「茶子さんを名乗る菓子さんからの報告でした。」
「…ん?どういうこと?」
私が事実をいえばラテさんは意味がわからない、とばかりに首を傾げる。その反応は正しいが、ひとまず、状況を整理することになった。
菓子さんが自身を茶子さんと名乗っていること。
おそらく死んだのは菓子さんではなく茶子さんであること。
人間は殲滅完了したこと。
茶子さんの死因は天使による不意打ちであること。
「はぁ!?天使が直接手を出てきたの!?」
ラテさんの怒り半分困惑半分の反応に私は同調する。全くもってその通りだった。…しかし、天使が手出してはいけないなんてルールはないのだ。それをいえばラテさんは
「屁理屈じゃん」
と怒りを通り越した呆れを見せた。…正直私も似た反応だった。しかし、目的を考えれば至極当然でもある…のかもしれない。
…正直ほっとしてしまっている自分がいる。もう、残りは誰一人としてかけない。そう、安心しきった自分がいる。…死んだ仲間のことなんかよりも自分が傷つくかどうかを考えてしまっている自分に吐き気と嫌悪感を覚える。本当に、私は最低──────
「へいっ!」
ラテさんがその掛け声ともに顔面に炎を投げつける。
「い “ ” ッッだぁッッ!?」
顔がバンッという絶対炎からならないような音ともに焼けるのを感じる。肌の温度が急上昇し、溶けるのと同時に再生するのを感じる。
パァァァァアアン
そんな豪快な音ともに私の顔面を中心に炎によって作り出された花が豪快に咲く。綺麗と思うと同時に痛いという感情でラテさんに怒りが湧く。怒りを込めた眼差しを送ればラテさんは笑いながら
「いい顔になったじゃん?めめさんにしょげた顔は似合わないんですよ♪」
と言って私を指さしながら大笑いをする。…どうやら、私の考えていたことは筒抜けだったらしい。不器用な彼女なりの慰め方だったのだろう。…でも
「やりすぎですよ…?ラテさんッ!!」
そう言って私は鎌を取りだして命をかけた鬼ごっこが始まったのはまた別の話。
ここで切ります!!5人目の死者は茶子さんでした!これでちょうど5人ですね〜
ちなみにめめさんパートは全員が帰ってきたり、ぜんさんの遺書などを見たり…って言うのが終わったら終わります。まあ、つまりとんでもなく長いですね!!はい!!てか、この物語年越しちゃいましたね〜。いやはや、時の流れは早い()今年中には必ず完結できるのでお楽しみに!!
それでは!おつはる!!
コメント
6件
精神やばそうだな…後は通知しっかりせい
chkkkがまた業の深そうなことしてますなぁ😳💘