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ジョンさんからの依頼を受けた私達は直ぐにプラネット号へ戻った。残念ながら連絡役の朝霧さんは居なかったけど、奥さんである女将さんに言伝を頼んだから大丈夫なはず。駄目だったらあとで美月さんに謝ろう。それよりも大事なのは隕石への対処だ。
「凄い凄い!アメージング!地球が見える!」
焦りすぎてカレンも連れて来ちゃったけど、一人で日本の旅館に残すのも変だし、私達に同行するのが任務みたいだから駄目じゃない……筈。間違いだったらジョンさんに謝っておくとしよう。
転移した場所は居住区にある展望エリア。特殊なガラス材で作られた外壁から星の海を自由に見ることが出来るお気に入りの場所で、広い空間を使ってるから転移の事故を防げる。
さて、カレンを連れてきてしまったけどどうしようかな。こんな時じゃなかったらゆっくりとプラネット号を案内するところなんだけどね。
「一人で残すわけにもいかないし、ブリッジへ連れていくのが一番だよ☆」
ふむ、ばっちゃんの言う通りだね。一人きりは不安になるだろうし。
「カレン、良いかな?」
「もちろん!あっ!じっとしてるから安心してね!変なことはしないから!」
「そこは心配してないよ」
好奇心は高い方だけど、カレンは危ないことをしない……巨大化?あれは私のやらかしの結果だからセーフだよ。
私達は直ぐにブリッジへ向かった。通路は移動し易さを優先して天井は高めで広く、そして無重力だ。最近のアードの船は基本的に積載量や居住性を犠牲にして重武装化、艦内設備の利便性を最優先にしているんだよね。
ある程度の大きさならトランクに収納できるし。っと、そんな話は後回しにしないと!
ブリッジで私は艦長席に、フェルは当たり前のようにオペレーター席に座り、ばっちゃんは司令席?って言うのかな。そんな感じの席に座って、カレンは私の側にある椅子に座った。艦内には慣性制御装置があるけど、限界はあるから皆ベルトをしっかりと着用した。
「アリア、観測できてる?」
『既に観測は終了しています。地球側が呼称したフロンティア彗星ですが、速度と軌道から地球時間で七十二時間で阻止限界点を突破します』
「ええっ!?三日後!?」
カレンがビックリしているのも無理はない。地球側の予測より早いんだから。でも、重要なのはそこじゃない。
「あんなものが落ちたら地球は大変なことになる」
『肯定、衝突時の破壊とその後に発生する環境の激変で地球上の生物が死に絶える可能性は九割を越えると予測されます。阻止されるのですね?ティナ』
「当たり前だよ!フロンティア彗星へ進路を向けて!星間航行速度まで加速して、地球落下を阻止するよ!」
「はい!フロンティア彗星へ向けて進路を取ります!」
フェルが復唱して、プラネット号が地球軌道からゆっくりと離れ始める。
あっ、ISSが信号を送ってる?
「ティナ、あの宇宙ステーションから発光信号です!“無事の生還を!地球の命運を託します”、以上です!」
目頭が熱くなるのを感じる。
「フェル。ISSへ返信して。直ぐに帰るのでお土産を期待しててくださいって」
「分かりました」
彗星の破片とかお土産にはピッタリじゃないかな。
「で、ティナちゃん。どうするつもり?いくらプラネット号でもあのサイズの彗星を破壊するのは難しいよ。トラクタービームを使うにしても大きすぎる。最低でも重巡洋艦クラスの火力が必要になると思うんだけど☆」
そう、プラネット号はあくまでも駆逐艦クラスで、地球からすれば圧倒的なんだけど艦艇のカテゴリーからすれば火力はコルベット級とあまり変わらない。
つまり、最低値に近い。アードでも隕石の破壊は大型艦の役目だったみたいだしね。
当然プラネット号じゃ正攻法で破壊するのは無理だし、トラクタービームも出力が足りない。でも、このままじゃ地球は滅亡だ。
「アリア、詳細な画像データはあるかな?」
『表示します』
私達の目の前にホロディスプレイが現れた。如何にもSFって感じで最初はテンション上がったなぁ。
そこにはフロンティア彗星の詳細な画像とデータが映し出されていた。構成する物質は……鉱物をたくさん含んだ岩石の塊だね。ビームは髙威力だけど貫通性能はそこまで高くはない。
撃ち込んだとしても表面をちょっと削るだけでだ。いや、戦艦クラスのビーム砲なら穴だらけに出来るだろうけど、出力が足りない。
んー……。
「ねぇティナ?」
「どしたの?カレン」
「あのさ、この彗星の断面図ってあるかな?」
「アリア」
『解析したものになりますが、こちらになります』
新しいホロディスプレイにスキャンされた断面図が……んん?
「やっぱり。これ、なかに空洞があるじゃない?」
「あっ、本当だ」
フロンティア彗星のちょうど中心を貫くように空洞が出来てる。まるでトンネルみたいに。
ん、トンネル?
「アリア、この空洞は表面まで続いてる?」
『一方通行と表現できます。片方には穴がありますが、反対側は塞がっています』
ふむ。でもこの空洞のサイズなら……ギリギリいけないこともないんじゃないかな。いや、それしか方法はないか。
「ティナちゃん、また変なこと考えてないよね?すんごく嫌な予感がするんだけど?☆」
「変なことは考えていないよ?取り敢えずこの空洞、いやトンネルか。塞がった方を攻撃して穴を貫通させる」
「うん、続けて☆」
「開通したトンネルにギャラクシー号で突入して、中心部でオメガ弾を爆発させたら木っ端微塵……は無理でもバラバラには出来るんじゃないかな?」
オメガ弾とは地球で言えば核兵器みたいなものかな。反物質を封じ込めたカプセルを大容量トランクに目一杯詰め込んで、更に超大規模爆破魔法を起爆剤として仕込んだミサイルだ。
使い方を工夫すれば、数十隻のセンチネル艦隊を殲滅できる超兵器だ。ただ、ミサイルなんていくらでも防ぐ手段があるし弾速も遅いから実戦向きじゃないロマン武器だよ。コストも馬鹿みたいに高いし。アリア曰く地球の核兵器の二倍以上だとか。
……一発だけ手元にあるんだよなぁ。
「うん、ティナちゃんはやっぱりおバカさんだ☆」
「それしか方法は無いよね?」
フェルとカレンが滅茶苦茶心配そうに見てきた。なんだろう、罪悪感が凄い。
「はぁぁぁ……止めてもいくよね?」
「当然。安心してよ、こう見えて腕には自信があるから」
ポンコツの私だけど、操縦技術にだけは自信がある。他に選択肢は無いんだ。なら、命くらい賭けるよ。