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#異能力
ここと🌹🫶 @低浮
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#異能力バトル
名無の男2
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新しいクラスに迎えられ、一週間。
初めは疎外感を感じていたものの、野崎に御山、メレンゲの三人と行動を共にしているとクラスメイト側から接してもらえることも増え、ある程度は普通の人間として……、人権を獲得するくらいには溶け込めたと思う。
当初、オレの濃いクマと野崎のハロウィン頭は絶対に浮くと思っていた。
だが実際は、クラスには同じかそれ以上に個性豊かな生徒が多く、いっそオレ達は埋もれてしまうほどだったので、今では安心をして授業を受けている。
「……本当に私は同行しなくていいのか?」
「ああ、そういう約束だからな。 あいつには助けられたし……、義理は通さなくっちゃな」
「そうかよ。 じゃあ非常時の合図だけ用意しておこう。 何かあったら、君が教えてくれたLINNEというアプリケーションで無言電話を送れ。 悪戯電話のようなブツ切りでもいい。 間違い電話だと追って連絡が来なければ……、すぐに飛んでいく」
「警戒しすぎだって。 内情を知ったオレをどうこうしようってんなら、もうずっと前に殺られてんだろ。 ……でもありがとうな、警戒は怠らねえよ」
授業後、オレは『廃棄物』に呼び出されていた。
召喚先は学校近くのファーストフードダイナー。
仮面の界隈がたまり場にするには公すぎる場だ。
「あーっ、キラ! コチラだよデス〜!」
入店するや否や、入店のベル音を聞いたメレンゲが、奥のテーブル席ソファーから顔を出してきた。
制服姿の彼女が手招く席へ。
前に立つと、そこにはあの四人がいた。
「よお、ヒーロー」
ジョン・ドゥ。
その隣には、口まわりをソースでベタベタにしながら特大サイズのバーガーを頬張る、白ピンクのボーダー寝間着を着たシュレーディンガー。
対面に座るのはニコニコ笑顔のメレンゲ……、仮面の名をジョゼフィーヌ。
そしていつも通りの無表情でフロートドリンクを吸う御山秀次郎。あのディオの弟、キャンディーだ。
「約束通り来たな。 座れよ、何食う?」
「いや……、オレは、」
「ここキャンディーのバ先なんだけどよ、通いつめてんだ。 ダブルチーズバーガーが絶品でさ。 思い切り食いついてからコーラで流し込めば天国味よ」
「ソーソー! ゴートゥーヘイヴンな美味しさ最高デスわよ!?」
「……じ、じゃあコーラだけ」
LINNEに届いた呼び出しの文句は、ただ「今日学校終わったらメシ食いに行こーぜ」の一言と、位置情報の共有だけだった。
文面の調子から何か重要な話があるわけではなさそうだと感じてはいたが、実際は……、どうなのだろう。まだ分からない。
ジョン・ドゥは本当に掴めない男だ。
シュレーディンガーの隣はなんとなく気まずいので、仕方なく御山弟の隣に座る。
「そんで、最近どーよヒーロー」
「どうって……、どう答えりゃいいんだよそれ。 なんとかやってるって感じだが」
「体調不良だの異常だのはねえの? 『黄昏症候群』を攻略したとはいえ、後遺症なんかが残っちまう可能性だってねえわけじゃねえからよ」
ジョン・ドゥがオレのことを心配してくれているとは意外だった。
オレは、確かに『黄昏症候群』を攻略した。
あの夕日の世界での記憶は曖昧で、うまく思い出せない。だが、攻略の証拠は今、オレがこの場所にいること。それ自体が夏を越えた証となっている。
でも、一度目の罹患の様にシュレーディンガーの『行方不明』で治療したわけではない。オレの策の通りにうまくいったのなら、力技でゴリ押してラヴェンダーから仮面を外させただけだ。
この攻略法が裏目に出れば、ジョン・ドゥの言ったように後遺症が残ったりなんかも考えられる。
だが……、今のところはそんな症状は出ていない。はず。
「まあ元気そうで何よりだ。 新しい学校はこいつらと同じクラスなんだろ? 良かったな、スタートラインから友達持ちなんて強くてニューゲームみたいなもんだ」
「んなワケあるか! こいつらのせいで無難で磐石なハズだった学生生活が開始数秒で狂ったわ!」
「……僕を入れるなよ。 やらかしたのはメレンゲチャンだろ?」
「エエ! 私デス!? 私マタ何かやらかしチャッタかもデスカ!? キラ、ソゥソーリーごみぇんナサイ。 日本語難しいため、とても多大なご迷惑をおかけしてしまいマスから……」
「あー……、ヒーローの身に何が起きたのか、大体想像ついた。 同情すんぜ、災難だったな……」
本当に災難だ。
今年の夏はこのまま良い事ナシか?
「メレンゲはドイツで育ったらしくってな。 血はクォーターで、国籍が別々の身勝手な親に引っ張られて日本まで来てさ、言語勉強頑張ってんだとよ」
「でも問題ナシには話せてるよな、たまに怪しいが……」
「怪しいっつーか、どこで覚えてきたんだその日本語ってのが多いな」
バーガーを半分まで食い進めたシュレーディンガーがメレンゲに向けて挙手し、卓上のケチャップを指差した。
「ハイハイ〜、ドーゾ! 姫チャン!」
「……オレは知ってるから良いけどよ、さっきから本名で呼びあってっけど大丈夫なのかよ?」
「俺達は『少数派』とは違うからな、別にグループ内で名前がバレても関係ねえ。 コードネームを使うのは、バトる現場で警察関連や権能の界隈に素性がバレねーようにするためだ」
「ソーなのヨ! 無問題デスヨ!」
「ねえジョン、メロンソーダおかわりしていい?」
「秀次郎は自分で出せよー」
「ケチ、いーじゃん。 メレンゲチャン姫乃チャンには奢ってんのに」
「アッ、質問デス日本語! ケチってドゥユー意味?」
「んー、優しさゼロの女好き野郎って意味」
「オー! とゆことはジョンサンは優しさゼロの女好きふぁっきん野郎! ケチ男なのデスネ!? 意味分かりましたヨ!」
「おい! テキトー吹き込んでんじゃねえ!!」
なんか……、こいつはこいつで大変そうだな……。
相手はあの無感情イケメンの秀次郎を筆頭に、謎日本語のメレンゲ、寡黙でツンとした姫乃っていう猫女だ。
どう考えても、骨が折れねえわけがねえ。
「あ、そうだそうだ。 ヒーローに報告。 ラヴェンダーを尋問して分かったことがひとつ。 君の倒したディオのことだ」
「行方が分かったのか?」
あの体育館での英雄劇のあと、ディオは病院送りにされ、その後失踪していたはずだ。
あの傷だ、そこまで遠くに逃げられはしないと思っていたが……、まだ奴は発見されていない。
「ラヴェンダーは肝心なことはほとんど発言しない。 どれだけ問い詰めても基本は沈黙を貫きやがる。 そんなアイツから得られた微かな情報を繋ぎ合わせて分かったことなんだが、どうやらディオは『少数派』に回収されているみたいだぜ。 きっと『廃棄物』の根城を吐かせるために、ラヴェンダーが引っ張り出してきたに違いねえ」
「回収って、そんなこと……。 あのラヴェンダーとはいえ出来るモンなのか? 病院から人一人を引っ張り出すって、そんなの痕跡が残っちまうだろ? 人目とか、監視カメラとか」
「いいや、出来る。 ラヴェンダーには無理でも、『少数派』なら出来るんだよなこれが。 これまで奴らは、毎度同じ手口を使って完全犯罪を繰り返してきた。 痕跡消去の効果を持つ仮面持ちがいるのさ」
確か……、刑事から聞いた話だと、ディオが病院から逃亡した際、病院内の監視カメラなどは全て壊されていたと話していた。
「ディオが逃亡した日に、奴のいた病院のことがネットニュースになってた。 医療機器の不具合で患者二名が死亡。 夕方頃、突如として起きた一時停電により医療機器に異常発生、予備電源の起動でほとんどが回復したものの、一部の医療機器にエラーが起き、延命措置を受けていた二名の患者の死亡が確認された。 ……これはディオが悪戯を起こした影響なんかじゃねえ。 『少数派』の脱走兵って奴の権能の干渉《せい》だ」
「……まさか、電波干渉の権能ってことか?」
「その通り。 だが脱走兵の権能の真髄は、長距離の瞬間移動だ。 電波干渉は副次的な効果に過ぎない。 奴は急に現れて、急に消える。 人間だろうと車だろうと、飛行機だろうと関係なく触れているものと共に大移動をすることが出来る。 その発動時、周囲にEMPに似た特殊な『引力』の波長が発生する……。 記録媒体を破壊し、センサーなんかを打ち止めるような異常な電波干渉だ。 つまりこの医療機器エラーの件は脱走兵が瞬間移動した影響であり、同時に証明ってこと」
話の筋は通っている。
ネットニュースで知った後情報だと確か、博物館の一件にも電波干渉があったらしいしな。
あの場にも、その脱走兵ってのがいたのだろう。
瞬間移動ってのが本当にあるなら、『少数派』の連続完全犯罪にも納得がいく。
現場に突如として現れ、仮面の力を振るって事件を起こし、そして消える。逃走経路などは必要がないためにさそ存在せず、足もつかず、故に警察に捕まることもない。
それが……、『少数派』の秘密の犯罪手法。権能なんてものを知る由もない警察に、こんなのが想定できるわけがない。
「ディオの行方が分かった、とはいえ俺たちにゃどう仕様もねえ。 奴が口を割ってもいいように拠点を変えるくらいしかな」
「あのビルから出るのか?」
「出る。 あの廃墟汚ねーし、うまく水流れねーし、穴だらけだから風が入って寒ぃんだよ」
「いや、めちゃくちゃ暑かったぞ彼処。 寒いのはお前の代償のせいだろ」
「あーそうか、そうだった。 ははは。 で、言いたかったことはよぉ、もしディオ関連、『少数派』関連で何か起きたら何時でも頼りに来いってことだ」
ウンウン、そーですヨ!と頷くメレンゲ。
「ヒーローはただの一般人だ。 仮面の界隈に巻き込まれただけのな。 君が俺達側の問題を背負わされんのは間違ってんじゃねえのって思うんだぜ、俺は」
「……有難いけどさ、悪いが他意はねえのか疑っちまうよ。 オレから見りゃ『少数派』も『廃棄物』も何が違うのか未だに分かんねえ。 どっちも行き過ぎた力を持ってるテロリストに見えちまう。 思想が違うとか、行動理念がーとか小難しすぎんだよ。 だから……、まだ信頼しきれねえんだ、すまねえが」
「ははっ、どうして謝る。 当然だろ、それが普通だ。 それでいい。 俺はそういうとこも引っ括めて、ヒーローのこと気に入ってんだぜ? 君はさ、ラヴェンダーが作り出したあの地獄みたいな夏を超えたんだ。 日常を噛み締める権利は当然にある。 テロリストとか才能とかに苛まれず、日常パートに戻れよ。 青春ってのは一瞬だぜ、モラトリアム期間の内にこれでもかってくらい楽しんどけよ。 これガチで」
「……まるでお節介おじさんみたいな言い方だな。 そういえばアンタ、何歳なんだ?」
「21だけど」
「ってことは……、大学生なのか」
「うんにゃ、大学は行ってねえよ。 なんでやっとこさ高校卒業したのに、大金払って追加で数年も勉強しなきゃなんねえんだ」
どこからか出してきた携帯ゲーム機をポチポチと遊び始める。
こいつ……、大丈夫かよ。
てか、学校はまだしも、バイトとかやってんのか? どうやって生活してるんだ?
ファストフード店に入り浸れるほどの余裕はあるみたいだが、ボンボンってワケでもなさそうだし。
「こっちの言いたかったことはそんだけだ、メレンゲ達と仲良くしてやってくれ」
「ああ。 さっきはああ言ったけど、こいつらのおかげで孤立せず助かってる部分もある。 権能なんかに振り回されねえように祈ってみるとするよ」
「……それ気になってたんだけどよ、権能に関係したくないって思ってんのに、どうしてヒーローは俺達に接触してきた? ラヴェンダーの権能を解毒するためには手段を選べなかったってのは分かる。 でも不自然だぜ、普通はもっと試行錯誤するもんだろ? 権能の界隈には突っ込みすぎないように解毒の道を探すのが自然だ。 俺達に頼るってのは奥の手じゃねえ? でもヒーローの話によれば、そこまで抵抗なく俺達に近づいてきたように思えるんだよな」
「……それは」
オレは……、狭間に生きている。
普通と異常の狭間に。
平凡と闘争の狭間に。
現実と夢見の狭間に。
ラヴェンダーに『黄昏症候群』を感染させられたあの夏休みだって、オレは青春に生きながら、仮面の界隈と接触していた。
そう、狭間にいたんだ。
オレが狭間にいれば、何か起きても皆を守れる。
それに……、記憶を取り戻す兆しを得られる。
このポジションアドバンテージは捨てがたい。
「……中途半端でいることでしか、得られないものもあるんだ」
「ほほう? どうやらワケアリみたいだな。 どうせ話し辛え内容なんだろ、もし俺達を信用できるようになったら聞かせてくれや」
「……ああ」
「……中途半端ねえ。 仮面の界隈に関係する気がゼロってんなら心配する気はなかったんだが、何かの理由でこれからも権能に近づく可能性があるってんなら、ひとつだけ警告しておく」
ジョン・ドゥがゲーム機を卓上に置く。
その真剣な表情に、空気がピリつく。
「ヒーロー、『支配者』に気をつけろ」
「『支配者』?」
「お前の新しい学校の生徒ん中に潜んでる、『少数派』のメンバーだ。 かなり最近の新参者らしいが、あんま情報がねえんだ。 不自然なくらいにな。 分かったのはそこの学校にいるってことと、コードネームだけ。 正体については御山達に探りを入れさせてるが、確証が取れねえってんで候補をリストアップするに留まってる。 もしそいつにヒーローの存在が通知されてんなら……、何かアクションしてくる可能性もある。 警戒した方がいい」
「どうしてオレの転入先を知られてるって思うんだ? 監視でも付けられてるって踏んでんのか?」
「君と一緒に転入してきたっていう包帯だらけの奴いんだろ? アイツ、『少数派』だろ。 否定しなくていい、分かってるからな。 その包帯野郎が君の元学校に来たのは『少数派』の介入があったからだ。 そうでもなきゃ、夏休み前の中途半端なシーズンに転入なんてまずおかしい。 しかも、ほとんどの生徒がバラバラに別の高校へ一時転入させられてる中で、ヒーローと包帯がセット、しかも同じクラスなんて、どう考えても偶然じゃねえだろ。 奴らに操作されてんのさ、何もかもな」
「じゃあオレ達は……、『少数派』の意思で日継高校に?」
「仮定に過ぎねえけどな。 だがもしそれが当たりなら……、ヒーローを『支配者』と出会わせることが目的って考えるのが自然じゃねえ?」
もうオレは、いつの間にか取り返しのつかないところにまで来てしまっていたのだろう。
望もうとも、望まぬとも、関係なく仮面の界隈が生活のすぐ近くで息づいているのが分かる。
しかも恐ろしいことに……、
オレはそんな狂った日常に慣れかけている。
初めて博物館でロビンソンの個展を見た時のような驚きや異物感は……、既にほとんどなくなっていた。
それが狭間に生きる代償なのだと気がついたのは、もうとっくに普通の生活ってのを忘れちまった頃だった。
コメント
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読ませていただきました。ファーストフード店の和やかな空気の中で、じわじわと迫ってくる「支配者」の影が不気味で……日常と非日常の狭間を生きる覚悟が滲む、とても好きな回でした。特に「狂った日常に慣れかけている」という一文にゾッとしつつ、主人公の変化を静かに受け止める自分がいました。ジョン・ドゥの説教臭くない距離感も良かったです。次が気になります!