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山中 Side .
放課後。
人がほとんどいなくなった教室で、窓から差し込む夕日がやけにまぶしい。
「柔太朗」
「なに」
「今日さ、あの二組のやつと話してたよな」
「は?」
いきなり何の話だ。
振り返ると、机に頬杖ついた勇斗がこっちをじっと見ている。
完全に拗ねている。
「別に、普通に話してただけだけど」
「へー」
「なにその反応」
「楽しそうだった」
「……は?」
意味がわからない。
「いや、普通だろ。クラスメイトと話すくらい」
「俺以外とあんな顔して笑うんだなーって思って」
「……あんな顔ってなんだよ」
「柔らかい顔」
ドクン、と心臓が跳ねる。
「……うるさい」
視線をそらすと、椅子が軋む音がした。
次の瞬間。
「っ、ちょ——」
腕を引かれて、気づけば壁に押し倒されていた。
「はやちゃん、近い」
「近くするために来た」
即答かよ。
「なんで他のやつに笑うの」
「は?」
「俺だけでいいじゃん」
「よくねえよ」
反射的に返したら、一瞬空気が止まった。
しまった、と思う前に
「……ふーん」
勇斗の目が、少しだけ細くなる。
まずい。これ、機嫌悪いやつだ。
「じゃあさ」
ぐい、と顎を掴まれる。
強引に上を向かされて、視線がぶつかる。
逃げられない。
「俺以外、いらないって思わせる」
「な——」
言い終わる前に、唇が塞がれた。
「……っ!」
一瞬で思考が真っ白になる。
逃げようとしても、後ろは壁。
腰に回された手が、逃がさないみたいに引き寄せてくる。
深いキス。
呼吸を奪われて、頭がくらくらする。
「ん、……は……」
やっと離れたと思ったら、すぐ額がくっつく距離。
「ほら」
息がかかる。
「こういう顔、他のやつに見せんなよ」
「……っ、見せてねえし……」
声が震えるのが悔しい。
「今の顔、やばい」
「見るな……」
「無理。俺のだし」
さらっと、とんでもないこと言う。
「所有物みたいに言うな」
「違うの?」
「違——」
言い返そうとして、またキスされる。
今度はさっきより優しくて、でも離れない。
じわじわ侵されるみたいな感覚。
「……好き」
唇が触れたまま、耳元で低く囁かれる。
「柔太朗のこと、好きすぎて無理」
「……知ってる」
「じゃあさ」
今度は首元に顔を埋めてくる。
くすぐったいし、心臓に悪い。
「俺以外見んな」
「……無理」
「は?」
「普通に生活するし」
「じゃあ」
少しだけ強く抱きしめられる。
「俺だけ見てるって言わせる」
「……めんどくせえ」
「でも好きでしょ」
「……っ」
図星。
黙ったまま視線をそらしたら、また笑われる。
「ほら、顔赤い」
「うるさい」
「かわいい」
「黙れ」
言いながらも、離れない距離。
むしろ——
「……はやちゃん」
「ん?」
「もう一回」
自分で言って、終わったと思った。
絶対いじられる。
でも
「いいよ」
予想よりずっと優しい声で、
今度は、ゆっくり唇が重なった。
さっきより甘くて、逃げる気なんて最初からなくなる。
「……ほら」
キスのあと、額を合わせたまま笑う。
「俺だけでよくなってきたでしょ」
「……調子乗んな」
でも否定は、しなかった。
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