テラーノベル
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「……めりーくりすます」
花を摘む。なんとはなしに、空に掲げてみる。精一杯に右腕を伸ばして。
5年前の12月25日。サンタさんが希望を運んできてくれる、1年に1度のクリスマス。私たちのところに来たのは、どうやら酷い暗闇だったようで。サンタさん、私たちがお願いばっかりするから怒っちゃったのかな、なんて。
もしかしたらあの星の中にサンタさんもいるのかな、私のこと、見ているのかな。
その前日は珍しく雪が降って、みんながホワイト・クリスマスだってはしゃいでた。私も嬉しくなって、お父さんと一緒に雪だるまを作ってた。
空がピカッと光った。きれいに晴れた真っ昼間だったのに、それでもはっきりと分かるくらいに。お父さんがぎゅっと私を抱き寄せて、細い道に飛び込んだ。1秒後には熱い風が吹いてきて、家も木も人もみんなが飛んだ。
「おと……さん……?」
お父さんの胸から這い出る。横たわった体を揺さぶってみるけど、お父さんはされるがまま。
こんなとこで寝たら、風邪ひいちゃうよ?
そんな話じゃないって、きっとあの時もわかってた。お父さんの背中にはキラキラガラスの羽根が生えて、付け根からは真っ赤な花が咲いてる。
周りにもたくさん花が咲いてた。いろんな人の手からも足からも頭からも、地面にも張り付いてた。
私からは咲いてなかった。私だけ。
家に帰ってみて、そこにはお父さんと同じように、花が咲いたお母さん。
「おかあさん」
窓は空いてた。窓枠は閉じたまま、けどガラスはなかった。カーテンは下の方が真っ黒。
(クリスマスパーティー、するはずだったのに)
さっきまで晴れてた空は、雨でも振り出しそうな曇りに変わっていた。
「We wish you a Merry Christmas」
夜に歌おうねって、お母さんに教えてもらった歌。
「We wish you a Merry Christmas」
お花のうえにランチクロスをひいて、ケーキと、料理と、プレゼント。
「We wish you a Merry Christmas」
お父さんと、お母さんと一緒に。
「And a happy New Year.」
”メリークリスマス!”
今日は楽しいクリスマス。
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