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――次の日の朝、陽がまだ優しく差し込む時間帯。レイはネグを気分転換にと、無理をさせない範囲で外へ連れ出していた。
「外の空気、ちょっとくらいなら……悪くないだろ?」
そう言って、ネグの隣をゆっくり歩く。
ネグはほとんど無表情で、だけど――ほんの少しだけ、表情が和らいでいる気がした。
途中、自販機の前で足を止め、レイは水を2本買った。
「ほら。」
ネグは何も言わず、水を受け取って――静かにキャップを開け、一口だけ飲んだ。
それだけで十分だった。レイは、ネグの口元が少しだけ緩んだのを見逃さなかった。
夜まで、ずっと歩いて、話すこともなく、ただ歩いて――
家に帰る途中。
その時だった。
「――…っ!」
ネグの体が、ピタリと止まった。
そして、レイの手をギュッと握る。
「……ネグ?」
そう声をかけると、ネグの視線の先――
そこには、すかーの姿があった。
ネグはすぐに、レイの手を握ったまま強く引っ張り、震えるように早足になり――
そのまま、走り出した。
「ネグ!?」
「……っ、早く、早く……!」
ネグは必死だった。
後ろを振り返りたくない、視界に入れたくない、ただ家へ、逃げ帰りたかった。
やっとのことで玄関へ辿り着き、扉を閉めた時――
ネグはその場でへたり込み、安堵で小さく震えた。
その後は、お風呂へ。
傷がまだ痛むのか、あまり長くは入らず、すぐに出てきたネグをレイがドライヤーで髪を乾かす。
そのまま、キッチンへ行き――
家にあったアイスを手に取ると、ネグは小さな声で呟いた。
「……美味しい。」
レイは、その一言だけでも、心底嬉しかった。
「そうか……良かった。」
夜はそのまま、ネグと一緒に寝た。
穏やかな夜――になるはずだった。
――しかし、次の日の昼。
レイは少し遅めに目を覚ました。
けれど、家の中が騒がしい。
「……?」
不思議に思いながらリビングに行くと、ネグが――
また過呼吸を起こしていた。
「ネグ!?どうした!!」
レイはすぐに駆け寄り、ネグの肩を支えた。
「ネグ!落ち着け、しっかりしろ!」
ネグは震えながら、床に落ちたスマホを指さした。
「……あ、あの人のな、名前が……あって、電、話がかかってきて…間違って、押しちゃって…ッ、それで…」
「に、兄さ……起こそ、て思った…けど、声が…ず、ずっと…、つ、続いて…、て、な、名前呼ば、れて…こわ、くて……声が、だ、出せ、なく、て…ッ」
完全にパニックだった。
ネグはレイの服をギュッと掴んで、離そうとしない。
レイはネグのスマホを確認すると――
確かに、着信履歴があった。
だが、それ以上にネグの震え方を見て、レイは理解した。
――声が、脳裏に焼き付いて離れない。
そんな状態だった。
「……っ」
レイは迷わず、だぁに電話をかけた。
「……悪い、ちょっと来てくれないか……ネグが……」
だぁは何も言わず、すぐに向かった。
車も使わず、走って――レイ宅へ。
到着した時、ネグはまだ過呼吸のまま、耳を塞ぎ、震えていた。
「ネグ!」
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しぐらーめん
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だぁはすぐにネグのそばに膝をつき、優しく抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫だからね……ネグ、深呼吸して……僕だよ、だぁさんだよ……」
ネグはその声に、少しだけ意識を戻し――
「はっ、はっ……はっ、…だ、ぁ…さ、、」
泣きそうな声で、だぁの名前を呼んで、服を掴んだ。
だぁはそのまま頭を撫で、震える体を包み込んだ。
しばらくして、ネグは疲れ果てたように眠りについた。
だぁはレイの案内で寝室へネグを運び、ベッドに寝かせる。
その後、リビングで――
レイは、ネグが泣いていた理由を全部話した。
だぁは静かに聞きながら、拳を握り――
「……そう。」
低く呟いた。
そして、スマホを取り出し、すかーへ電話をかけた。
通話が繋がると、すかーが無言のまま応じた。
その瞬間――
レイの声は、今まで聞いたことがないほど冷たく低かった。
「……俺、言ったよな。電話をかけてくるなって。」
すかーは何も返せなかった。
「なんで、かかってきてんの?? なぁ……」
沈黙が流れる。
レイは更に、圧を込めた声で続けた。
「何ネグ泣かしてんの? お”い……聞いてんだよ……答えろや……」
すかーは何も言わない。
その無言を確かめるように、だぁは静かに、だがはっきりと告げた。
「……家に帰ったら、話をしよう。」
その一言を最後に、電話は切れた。
レイは横で腕を組んだまま、何も言わずに黙っていた。
重い空気だけが、部屋中に広がっていた。