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進撃の巨人 夢小説(連載)

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進撃の巨人 夢小説(連載)

6 - 第6話 ミカサのマフラー

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2025年03月31日

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ミカサのマフラー


… どうしよう……。



ミカサは困り果てていた。

座学も実戦も、対人コミュニケーションを除いて何でもそつなくこなす彼女。


兵舎の廊下や訓練場で彼女と顔を合わせた者全員がぎょっとして二度見するほど、ミカサは真っ青な顔をしていた。


「どうしたんだミカサ?」

「顔が青いぞ」

「何か嫌なことでもあったんですか?私の分のごはんも食べて元気出してください」

「「「!? 」」」


口々に心配の声をかける仲間たち。

その中でも“あの”サシャが自分の分の食事を分け与えようとしたことに、更に驚く一同。

サシャが心配するくらい、ミカサの顔色が悪かったのだ。


「大丈夫…具合が悪いわけじゃない……」


説得力のない答え。


「じゃあどうしちまったっていうんだよ」

「……………」


エレンも心配して聞くが答えないミカサ。


「腹が痛えのか?」

無言で首を横に振る。


「頭が痛えのか?」

また首を横に振る。


「食欲は?」

「…ふつう……」

「アンナのとこに行こう」

「? ………!」


どうしてそこでアンナの名前が出るの?、と疑問に思ったミカサだが、何かを思い出したように目を見開く。


「具合が悪いわけじゃねえなら、医務室に行ったって仕方ないし、アンナだったら何かお前が元気になるようなもん作ってくれるだろ!」


違うの、エレン。

私は……。

でもアンナになら……。


エレンに手を引かれながら厨房へと向かう。





「アンナ!」

『あ、エレンにミカサ。お疲れ様!どうしたの?』


マスクをしていても分かる、屈託のない笑顔。

それを見て少し心が軽くなる2人。


杏菜がやってきて早くも3ヶ月以上が経った。

毎日毎食の調理中の監視は解禁され、杏菜ひとりで厨房に立てることになった。

それでも時々抜き打ちで誰かが見守るというシステムになったのだ。


「なんかミカサが具合悪そうでさ。食欲がないわけじゃないみてえだから、何か元気が出るもん作ってやってくれねえか?」


『あ、ほんとだ!顔が真っ青。ミカサ大丈夫?』

「へいき……。」


心配そうにこちらを見る杏菜にうつむきながら答えるミカサ。


「具合が悪いわけじゃないの……。……アンナ、2人だけで話したい……」

『? わかった。エレン、ミカサは私に任せて戻っていいよ』

「そうか?…じゃあ頼むな」

『うん』


エレンが厨房を後にする。


『…ミカサ、私には何か悩んでるように見えるんだけど、どうしたの?』

「……アンナ。実はね……」


ミカサがマフラーを外す。

いつも身に着けている赤いマフラーを。


「これ……」


ミカサが指さしたのは、糸がほつれて伸びてしまっていた部分。

それと端に小さな穴が空いた部分。


「今朝、着替えてる時に引っかけちゃって……。多分これを置いてたテーブルがささくれてたからだと思うんだけど…」


『そうだったんだ。ちょっと見せてくれる?』


杏菜にマフラーを手渡す。


「…アンナは料理と裁縫が仕事って聞いてたから。…もしかしたらどうにかしてくれるかもと思って……」


弱々しく話すミカサ。

杏菜はマフラーを受け取り、ほつれた部分や穴の空いた箇所をじっくり見てみる。


『大丈夫!ミカサ、これならすぐ直せそうだよ』

「ほんと?」


杏菜の言葉に少しだけ表情を明るくするミカサ。


『お道具箱取ってくるから、ちょっと待っててね 』

「うん」


杏菜は兵団から支給された裁縫道具を取りに行き、戻ってきてから早速マフラーの修繕に取りかかる。


得意と言うだけあって、慣れた手つきでほつれを直していく杏菜。

あっという間にほつれて糸がつるつると出てきてしまっていた部分が綺麗になった。


「すごい。速い……」

『穴が空いちゃったとこは少しだけ時間かかるけどね』


穴を修繕するのを見ながら、ミカサはマフラーのことを話し始めた。

エレンと出会い、寒いと言う自分に、今まで彼が巻いていたものを外して巻いてくれたこと。

巻き方はぶっきらぼうだったけれど、とても温かくて嬉しかったこと。

それからずっと肌見放さず身に着けていること。


『…そっか。優しいんだね、エレンって』

「うん」


エレンのことを話すミカサはとても穏やかな顔をしていた。


『はい、できた!』

「…!わあ…すごい。綺麗に塞がってる」


空いた穴は、目を凝らしてよく見ないと分からないレベルで綺麗に塞がれていた。


『私がいた世界の、“ヨーロッパ”っていう地域に伝わる伝統的な修繕方法でね、ダーニングっていうの』


裁縫道具を片付けながら説明する。

よく見ると、2色の糸で穴を塞いである。


『わざと周りと違う色の糸で可愛く刺繍したりもするんだけど、思い出の詰まった大事なマフラーに勝手にそんなことしちゃだめだと思って。元の色に似た糸を使ったんだ』


「…うん。こっちがいい。…アンナ…ほんとにありがとう……」


ミカサは治ったマフラーをぎゅっと握り締める。

そして、黒い瞳からぽろぽろと涙が零れ落ちた。


『!? ミカサどうしたの?』

「…ごめん。安心したら涙が出てきちゃって」

『びっくりした〜』


杏菜はポケットからハンカチを取り出して、ミカサの涙を拭う。


「…ありがとう」


泣き笑いの表情になったミカサ。


『お役に立ててよかった!それに頼ってくれて嬉しかったよ』


そう言って杏菜はミカサをぎゅっと抱き締めた。

ミカサも杏菜の身体に腕をまわす。



なんて華奢なの……。

訓練の為に日々鍛えてる私たちとは違う、柔らかな身体つき。

こんな小さな身体で毎日、大勢の兵士の食事を作ってるなんて。



「アンナ、ありがとう。マフラーが直ってほんとに嬉しい 」

『よかった!…あ、ミカサ、おやつ作ってあるから一緒に食べよう!』


身体を離し、厨房の冷蔵庫から黄色い物体の乗った小さなお皿を2つ持ってきた杏菜。


『食材が余った時だけ作るの。今日はね、プリンにしたんだ』


「いただきます」


スプーンで掬って口に運ぶ。

卵と牛乳の甘い香りと、カラメルソースのほろ苦さが広がる。


「美味しい!」

『よかった〜!余った材料で作るから今日は2つしかできなくて。みんなには内緒ね!特にサシャには』

「うん…!」


笑って頷くミカサ。


「ありがとう、アンナ。プリンもすごく美味しくて元気出た」

『ふふ。よかった!』


さっきまで青ざめていたミカサは、すっかりいつもの血色のいい頬と唇の色を取り戻していた。


「アンナ。さっき言ってたダーニング、いつか教えてほしい。私も覚えたい」

『もちろん!いつでも!』


ミカサの言葉に花が咲いたように笑う杏菜。

それを見てミカサも自然と笑顔になった。



最初は半信半疑だったけど、この子は嘘なんてついてない。

自分の知らない料理の名前や縫い物の知識、技術をたくさん持ってる。

大事なマフラーを直してくれたこと、絶対に忘れない。

アンナに出会えてよかった。

この子はきっと、調査兵団にとって、私にとっても、すごく大切な存在になる。

もっと仲良くなりたい。

アンナが困った時は、今度は私が助けるんだ。





つづく



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