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「私にはそれができる。ぶっ壊せる」
「でも、そんなことをしたら…」
「そう。境界線を失った二つの空間は、混合し、混乱を招く。けれど…」
「…」
「それで、ようやく私の長年の願いが叶う。叶えてみせる」
暗い部屋で光る彩さんの真っ赤な瞳が、とても不気味に見える。あぁ、これが、妖怪の本能…?
おかしくなってくる。でも、目が離せない。
「まぁ、まだ時間はあるわ。お茶を淹れてきましょ…」
ぱちぱちと、視界が少しおかしくなる。いや、元に戻ったのかな?どちらにせよ、異常なことが起きているのは確か。
彩さんは、いったい何をする気なんだろう。
どうやって、あの結界を壊す?
「…なんだろう、これ…」
恐ろしく年季が入った本だった。何年前の本なんだろう。表紙をそっとめくってみる。
「よ、読めない…」
「あら。それは、結界についての本よ。結構昔の文字だしね。かなり年季も入っているし」
そうなんだ…
んん?結界についての本?さっき彩さん、結界をぶっ壊すって言ってたよね…?
これで研究をしていたのでは!?
「結界って、壊したらいけないやつじゃないんですか?」
「…そうね。壊したらちょっとやばいやつよ」
「えぇ…壊れたらどうなるかわかるんですか?」
「さぁ?その本にも書いていなかったしね。というか、誰も壊したことがないから、今も結界があるんじゃない」
「あ、そっか…」
「あなたは、まだここにきて数ヶ月だけれど…私は何年もここにいる。ずっと死ねないまま、変わらない見た目で。ずっとここに閉じ込められている。私は外に出たいの」
「でも…」
そういえば、前に霜月さんにこんな話を聞いたことがある。
「彩さんて、生まれた時からここにいるんですか?」
「…いや、僕も詳しくは知らないけど、彩は二つの世界に分断される前から生きているらしい。でも、過去のことはあまり聞かない方がいいと思う。そして、彩はここから外に出たがっている。けれど、彩の能力上、現世に出すのはとても危険だ。だから…」
「…」
ということは、すごくこの状況…私が止めないとやばいのでは!?
…でも、私と彩さんがまともに戦えるわけがない。私の能力は、戦闘向きではないし。
それに、ここには力を貸してくれそうな妖怪もいない。
「…ねぇ、霜月から、私たちが本の世界に入ってしまったっていう話は聞いた?その魔法、この本にもかかっているの。私の生まれたときから今が記録されている。さぁ、あなたも…」
「…!」
「本の世界へ」
次の瞬間、私は眩しい光に包まれた。