テラーノベル
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夕方。
「……ただいま」
緋八マナがドアを開ける。
「おかえり、マナ」
すぐに返ってくる声。
伊波ライが、キッチンから顔を出した。
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「……いい匂いする」
「ご飯できてるよ」
「神か」
靴を脱ぎながら、ゆっくり中に入る。
⸻
そのまま。
当たり前みたいに。
ライの横に立つ。
「……なあ」
「うん?」
「ちょっとこっち向いて」
「なに?」
振り向いた瞬間——
軽く引き寄せる。
「……っ」
「ただいまのやつ」
「それ言ってからするんだ」
「順番逆でもええやろ」
⸻
軽く触れるキス。
一瞬だけ。
でも。
それだけで、空気がやわらぐ。
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「……疲れてる?」
「ちょいな」
「じゃあいっぱい甘やかす」
「……期待してええか?」
「もちろん」
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■距離バグってる時間
ご飯のあと。
ソファ。
「……近ない?」
「近いね」
でも。
離れへん。
⸻
むしろ。
ライが寄ってくる。
「マナ、ちょっと」
「ん?」
腕、引かれる。
そのまま——
膝の上。
「は!?」
「座りやすい」
「お前な!?」
⸻
でも。
そのまま降りる気配はない。
「……重ないか?」
「全然」
「嘘やろ」
「ほんと」
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「……まあ、ええけど」
結局そのまま。
⸻
「マナ、あったかい」
「そらそうやろ」
「落ち着く」
ぽつりと言われる。
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「……俺もや」
小さく返す。
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■甘え方が増えていく
「なあ」
「うん?」
「こっち向いて」
「なんで?」
「いいから」
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少しだけ顔を上げると。
すぐ近くに、ライ。
「……近いって」
「うん」
⸻
そのまま。
軽く、何回か触れるキス。
短く、何度も。
「……っ、なんやそれ」
「なんかしたくなった」
「理由雑すぎるやろ」
⸻
でも。
止めへん。
⸻
「マナ」
「なんや」
「好き」
「……知ってる」
「言いたかっただけ」
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「……俺もやで」
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■だらだら甘い夜
そのまま。
ソファで寄りかかる。
「……動く気せえへんな」
「同じ」
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テレビついてるのに、誰も見てない。
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「なあ」
「うん?」
「このまま寝そう」
「寝てもいいよ」
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「ベッド行かんでええん?」
「一緒ならどこでもいい」
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「……それはずるい」
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そのまま。
肩にもたれられる。
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「マナ」
「んー」
「もう一回だけ」
「……好きやなほんま」
⸻
軽く触れるキス。
今度は少し長め。
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「……満足した?」
「まだ」
「欲張りやな」
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でも。
少し笑いながら。
もう一回、触れる。
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■当たり前になった幸せ
夜。
結局ベッド。
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「……今日さ」
「うん?」
「ずっとくっついてたな」
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「嫌だった?」
「……逆や」
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「ならよかった」
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そのまま。
自然に腕に収まる。
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「……なあ」
「うん?」
「これ、ずっと続くんかな」
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ライは少しだけ笑って。
「続けよ?」
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「……せやな」
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軽く、額をくっつける。
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「おやすみ、マナ」
「……おやすみ」
⸻
静かな夜。
でも。
距離はずっと近いまま。
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触れることも。
くっつくことも。
名前を呼ぶことも。
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全部が、当たり前になっていく。
⸻
でも。
その当たり前が。
何より、大事やった。
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