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「まふゆの目が好きなんだ。」
ふとそんなことを呟く。足を止めこちらを向く彼女の表情は変わらず無表情だがどこか驚きも読める。
視線がぶつかった。その深い紫色の瞳がとても綺麗で、大好きで。
そんなことを考えているといつの間にか目の前に来ていたまふゆが口を開き、
「それなら私は、奏の声が好き」
そう言った。抑揚のない、だけど温かみのある綺麗な声が心地よくて思わず「私も」、なんて言ってしまう。
顔を近づけた彼女に身を任せるように唇が重なるのを受け入れる。
頭の中で何かがどろりと溶けた気がした。揺れる瞳は何を考えているのか読めないが、どこか余裕がないことだけはわかる。
しばらくした後唇が離れる。それがなんだか嫌に思えて、「待って、まふゆ…もっと…」なんて我儘を吐く。それに応えるように彼女はまた唇を重ねた。
申し訳なさでいっぱいになっていると
「奏が何かをほしいなんて言うの、珍しいから。いいんだよ」
と言われる。
ああ、まふゆは優しいな。もっとその優しさに甘えたい。もっとまふゆがほしい。
「まふゆ─────。」
「…何?」
「まふゆの、全部がほしい」
自分のした発言に思わず我に返る。こんな風に我儘を言ったのはいつぶりだろう。そんなことが過ぎりながらも謝罪の言葉を並べてると数回瞬きした彼女はまたいつもの表情に戻り、
「いいよ、あげる」
と言った。言ってくれた。その優しさに何かが決壊し、崩れる。今日くらいは我儘になっても許されるだろうか、なんて思う。ふと見える瞳を見つめ、思わず飲まれそうになる。
やっぱり私はその目が好きだ。
コメント
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うわ、すごく静かで濃密な空気感の話だった……。奏の「まふゆの目が好き」って告白から始まって、まふゆが「奏の声が好き」って返すところ、お互いの好きな部分を言い合う感じがたまらなかった。唇が重なるシーンの「どろりと溶けた」感覚の描写が生々しくて、感情がじわじわ伝わってきた。最後の「全部がほしい」→「いいよ、あげる」の流れ、優しさに決壊する奏の心情が刺さる……短いのに二人の関係性の深さがぎゅっと詰まってて、続きが気になる素敵なエピソードでした。