(不破side)
ある日を境に、明那と連絡が取れなくなった。
……いや、それは言い過ぎか。正しくは、”会うことが出来なくなった”。
実際、コード は繋いでくれるし、通話だけなら俺と話をしてくれることもある。けど、その回数も前と比べれば格段に減ったように感じる。
どれもこれもあの日、明那が「熱っぽい」と言って病院に向かった日から始まった。
最初は風邪気味だったのかと思っていたが、流石に一ヶ月もこの状態なのはおかし過ぎる。
明那が一番に頼りそうな相手、まゆにも言っては見たものの、まゆも同じ状況でよくわからないと言っていた。
念の為他のライバー達にも明那について聞いたら、どうやら明那は事務所にも顔を出していないらしい。皆んな一体どうしたのかと戸惑っている様子だった。
『どうしたんやろ、……明那』
俺は、明那のことが好きだ。
もちろん友達的にとかそういう事ではなく、恋愛的───LOVEの方で。
明那と出会って遊ぶうちに、どんどん明那のことが好きになってしまったのだ。
もちろん俺はゲイでもなんでもないし、恋愛対象は女性だったが、明那は別だ。俺は、”三枝明那”という一人の人間を好きになったのだから。性別なんて関係ないい。
と、そんなことはどうでもいいのだ。俺は今、明那不足で死にそうなんやぞ。
『あきにゃあ……』
明那と遊びに行った日、一緒に撮った明那と俺のツーショットを眺めながら、写真の中の明菜を撫でる。
写真の明那は満面の笑みで俺と肩を組み、ピースをしている。この笑顔は、ここ最近一ヶ月全く見れていない。
今まで迷惑かと思ってやらなかったが、流石におかしいと気づいた今、そんな事を言っている暇はない。
『……明那の家、行くか』
最終手段として、もうあきなの家に行くしかない。
様子がおかしいと気づいて明那に尋ねても「大丈夫」、「気にしないで」の一点張りなのだから、やむを得ない。
そう自分に言い聞かせ、明那に今から行くことを伝える。
何分か経っても既読すら付かない明那とのLINEを見ていると、不安は積もっていくばかり。
なあ、明那。ほんまに「大丈夫」なんか?
ピンポーン
俺の心配とは裏腹に、イーターハンはやけに呑気そうにそう鳴った。
明那の家について数分。インターホンを押すのは三回目。
これ以上は近所迷惑になりそうな気がするが、明那が出てくる気配はない。
『…明那、入ってもいいん〜?』
留守という可能性も考えたが、確かに家の中に気配は感じるのだ。
これ以上は、流石の俺も心配だわ。
明那には申し訳ないが、勝手に入らせてもらうことにする。
一応断りを入れて、扉のドアノブを押した。
ガチャ
『…え』
自分から押しといてなんだが、まさか本当に開くとは思わず、間抜けな声が出る。
いやいやいや、それにしても不用心すぎん??
なんて心の声を抑えて、明那がいるであろうリビングへと足を運ぶ。
…?
なんか、いい匂い。
明那の匂いとは違う、どこかクラクラするような匂いがする。
リビングに着き、恐る恐る中を覗いた。
『明那〜?………は、?』
「ハーッ、ハーッンぐッ♡」
そこには、顔を真っ赤にして涙を流しながら座り込んでいる明那の姿があった。
「ハーッ♡ふ、♡?ふわっち?♡♡」
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