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(明那side)
あの日、俺がオメガに変異していると発覚した時から、俺はみんなを避けていた。
ただ、無性に怖かった。
俺がオメガに変わったと知ったら、みんなが離れていってしまうのではないか。気持ち悪いと思われてしまうのではないか。
にじさんじのみんながそんな事を思うはずがないと分かっている。分かっているけれど、どうしても不安で仕方ないのだ。
特に、にじさんじは比較的アルファが多いところだと思う。と言っても本当に数人しかいないけれど、それくらい希少なのだ、アルファという存在は.
そんな希少なアルファだからこそ、今まで大変な思いをしてきた人たちも沢山いるだろう。
望んでもないのにオメガ達が寄ってきて、時には無理やりヤらされたなんていう実例も聞いたことがある。
けれど、今オメガの俺になら分かる。オメガもオメガで必死なのだと。
最近になってオメガになった俺でさえこんなに生きるのが苦しいのに、生まれた時からオメガの人たちは、一体どんな人生を送って来たのか。
みんな、未来が不安でしかないのだろう。
つまり、どちらが悪いと聞かれてもどちらとも言い難いのだ。 どちらも自分が生きていくために必死なだけ。
でも、どっちも辛い思いをしているのも事実。もしにじさんじにアルファがいたとして、その人が俺がオメガだと知ったらどう思うのだろう。
「……そんなの、迷惑に思うに決まってるよなぁ」
ぽつり
独り言として、俺の呟きはただの音になって消える。
今日を予定していた配信の準備中。本来、この五分後に俺は楽しく配信していたはずなのだ。
それを示すかのように俺の周りには高い機材とマイクが揃えられている。
軽快なフリー音源が流れ始め、今すぐにでも配信を開始出来そうな雰囲気。
でも──────。
「…──やだなぁ」
どうやっても、配信をする気分にはなれなかった。
最近、こんな調子が続いている。
ただでさえメンタルが参っているのに、こんな状態で配信なんてしたら、アンチのコメントしか目に入らなくなりそうで。
そうしたら、俺はきっと配信をするのが怖くなってしまう。そんなの、絶対に嫌だった。
そんなことになるなら、そもそも配信しなければいい。
そんな考えにしか行き着かないのだ。
俺のチャンネルは、一ヶ月前病院に行く前にした案件配信を最後に、投稿が止まっている?
最近、俺のリスナーからどうしたのかと心配の声をよく聞く。
そんな声を聞く度、俺はいつもとんでもない罪悪感に駆られるのだ。
俺を待ってくれている人がいるのに、当の俺は何をやっているのだ。
そんなら思いが堂々巡りのように回り続けて、最後は結局、配信できない。
「何やってんだろ、俺」
まるで病院に行った日から、俺の体が鉛になったみたいに、重く感じる。動く度に、何かに引っ張られているような感覚があるのだ。
とにかく今日の配信はお休みしようと、マネージャーに連絡を入れる。
「体調不良で配信できないかもしれません、と……」
そんな嘘をついている自分にも、吐き気がしてくる。
もうとっくに熱なんて収まっているはずなのに、まるであの日から、ずっと熱が続いているような、そんな気だるさがあった。
ピロリン♪
そんな音と共に、俺のスマホが通知を知らせる。動く気にもなれなくて、俺はただ腕だけを動かしてスマホを取った。
[明那、最近ほんま大丈夫なん?今回の配信も休んだみたいやし…。なんか悩んでることあるならなんでも言ってや]
「ふわっち……」
悩んでること?そんなの、いっぱいあるよ。
これからどうすればええかも分からんし、そもそもこのままライバー続けていけるんかも不透明。事務所にさえなんも行ってない。
俺、どうすればええ?なあ、教えてよ…ふわっち。
なんて。
言えるわけないのに
[え〜!大丈夫やって!あんま心配せんといてw」]
俺がそう送り返すと、すぐに付く既読。
ふわっちが俺のことをどれだけ心配してくれているのかが透けて見えた気がした。
「しんぱい、してくれてるんかな…」
あの他人に興味のないふわっちが…おれに。
うれしい、なぁ
ずぐり。
「、…あぇ?」
なんだか、熱い。今は夏でもないというのに。
それに、内側から何かが込み上げてくるような熱さだ。
こんなの、今までなったことがない。
「、っ、はッ♡あっ♡♡んぅ…///♡?」
何、なに、なんなんだ。
おかしい、身体中がびんかんに、なって…
思わず地面に座り込む。
座り込んだ時の僅かな衝撃にも、体は大袈裟なほど反応してしまう。
「ビクッビクッ、は♡♡ん、///♡♡?」
自然と、頬に涙が伝う。その感覚さえ気持ち悪くて、俺は自分の体を押さえつけるように両手で腕を掴んだ。
「だれ、か♡♡たすけっ、♡♡♡♡///」
ビュルル
「へ、?///」
な、なんで、俺、なんもしてないのにイッて……??ていうかこれ……。
(ちょうど一ヶ月後ほどにヒートが───)
「ひー、と……?♡♡///♡♡」
オメガになってしまったことばかりで、その後のことをかんぜんにわすれていた。
そうだ、抑制剤……のめば、
「…………あ、」
そうだ
俺、ちょうど切らしてたんだった。
あ、これやばい。
一時間前の俺は何をやっているんだと後悔しながらも、どんどんと熱くなっていく体。
どうしていいか分からず、ただただ座り込むことしかできなくて、涙が溢れる。
誰かに助けを求めたくても、動くことが出来ない。
───詰んだ。
そんな言葉が、脳裏に過った時。
誰かが俺の家に入ってくるような気配がした。
だれ、誰?だめ、今入って来ちゃ……!
『明那〜?………は、?』
あー、……もう、全部めちゃくちゃ