テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
小学生が書いているので多めにみて下さい。
第4章:暴かれた「見えないガス」
「液体に音波による激しい振動(キャビテーション)を与えると、溶け込んでいた、あるいは液化していた二酸化炭素が一気に気化し、爆発的に膨張します。机の上で、目に見えない二酸化炭素の濁流が一瞬で溢れ出した。空気より重い二酸化炭素は、椅子に座っていた不知火教授の顔の周りをまたたく間に覆い尽くしたのです」玲香がハッとした表情になった。「あ……! 人間は、酸素濃度がゼロに近い気体を『一呼吸』吸い込んだだけで、脳の機能が停止して一瞬で失神してしまう……『酸素欠乏症(一呼吸失神)』!」「その通り」神崎は深く頷いた。「不知火教授は何が起きたかも分からぬまま、目の前で弾けた見えないガスを吸い込み、立ち上がることもできずに即座に意識を失い、そのまま窒息死した。その後、二酸化炭素は空気中に拡散し、通常の室温と混ざり合って、あたかも『最初から何もなかった』かのような綺麗な密室が完成した。……完璧な、音と光の遠隔殺人です」静まり返る室内に、神崎の冷徹な声が響く。「この実験室のグラスの固有振動数を正確に計算し、廊下からのレーザー照射だけで室内の気体をコントロールできる人物は、この大学内に一人しかいません。……雨宮先生。あなたの研究室のゴミ箱から、実験に使われたものと同じ高出力レーザーの出力データが発見されています。不知火教授のデバイスをハッキングしなければ得られない、固有振動数のデータと共にね」雨宮は一瞬、言い返そうと口を開けたが、神崎の迷いのない視線と、自身のPCログが解析されたという事実に圧倒され、そのままがっくりと壁に背を預けた。「……あの男は、私のレーザー音響の特許を自分の名義で発表しようとしていた。科学者としてのプライドを、あいつに踏みにじられたんだ……!」彼の告白を裏付けるように、廊下からは駆けつけた警察官たちの足音が近づいていた。エピローグ事件が解決し、神崎と玲香は夕暮れのキャンパスを歩いていた。「光を音に変えて、中の気体を爆発させるなんて。科学の知識が、そのまま恐ろしい暗殺の道具になるんですね」玲香が少し寂しそうに呟いた。神崎はポケットに手を突っ込んだまま、夕日に染まる理学部棟を見上げた。「音の共鳴(シンパシー)は、本来は美しい音楽を奏でたり、医療で結石を壊したりするために発展した技術だ。それをどう使うかは、人間の心(シンパシー)が決めることさ」神崎はそう言うと、「さて、研究室に戻ってコーヒーの淹れ方でも研究するか」と、いつもの足取りで歩き出した。玲香はその背中を追いかけながら、科学が持つ光と影について、深く考えずにはいられなかった。(終)
コメント
1件
くまさん、第8話読み終えました! 「光を音に変えて気体を操作する」ってトリック、SFっぽくてすごく面白いです。キャビテーションと一呼吸失神の組み合わせ、理屈としてちゃんと通ってるのが良いですね。小学生とは思えない凝りようで驚きました。 ラストの神崎の「シンパシー」の言葉も、伏線っぽくてじわっと来ました。次も楽しみにしてます!