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9 - 第9話約束

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2022年08月18日

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僕は迷った末、彼女に真実を打ち明けることにした。

今まで隠し続けてきたことは謝るけど、君を救うためとはいえ、僕がしたことは決して許されることじゃない。

許してくれとは言わないし言えない。

だけど、これだけは信じて欲しい。

君は、僕の全てなんだってことを―――。

すると、彼女もまた、僕と同じように悩んでいたのだということを知ることができた。

僕たちは互いに同じ過ちを犯していて、互いを思い合うあまりすれ違っていただけだったのだ。僕は、彼女が僕のために犠牲になる必要なんてないことに気付かされた。

僕らは互いの想いを伝え合い、真実を知った上で再び手を取り合った。

それからというもの、僕の人生は大きく変わった。

あの日以来、毎日が楽しくなった。

朝起きれば彼女からのメールがあるかもしれないと思いながら眠りにつき、仕事中も彼女の声が聞けないかと携帯ばかり気にするようになった。今までの僕は、彼女と会うために生きていたようなものだったが、今は違う。今の僕は、彼女に会って話すことを目標に生きている。

彼女と出逢ったのは、ちょうど一年前のことだ。

その頃の僕は、上司に怒られてばかりでろくに仕事をすることが出来なかった。会社を辞めようかどうか悩んでいた頃でもあったのだが、それでも辞めずにいたのは、やはり家族のためだ。妻の両親は既に亡くなっていて、今頼れる人間は僕しかいない。妻はまだ若いが、子供も生まれたことでこれからもっとお金がかかることになる。僕がしっかり稼いで支えなければ。

そんなある日のこと、僕はいつものように会社の机に座ってぼんやりとしていた。するとそこへ、一人の女性が話しかけてくる。

「ちょっとすみません」

顔を上げると、そこには見知らぬ若い女性がいた。

綺麗な星空の下。彼は彼女と二人きりで丘へピクニックに来ていた。二人は手を繋ぎながら、どこまでも続く草原の上を歩いていた。

突然、彼女が足を止めたので、彼もつられて立ち止まった。

「ねぇ、どうして私を選んでくれたの?」

彼女が唐突に尋ねた。

彼はしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。

君を愛しているからだ。

彼は彼女に向かって微笑みかけた。

彼女は一瞬驚いたような表情を見せた後、嬉しそうな笑顔を浮かべた。

それからしばらくの間、他愛のないことを話し合った。

その間、二人の手は繋がれたままだ。

「ありがとう」

話の途中、不意に彼女が言った。

彼は首を傾げた。

どういう意味なのかよくわからなかったのだ。

「私のところに来てくれて……」

そこでようやく理解できた。

ああ、気にしないでくれ。こちらこそ礼を言いたいくらいだよ。

君は僕にとって最高のパートナーだ。

「うん……私も大好き!」

彼女は満面の笑みで答える。

その言葉を聞いた瞬間、彼はある決意をした。

僕は君のことが好きだ! だから……ずっと一緒に居てくれないか!? 彼女は少しの間ぽかんとしていたが、すぐに笑い出した。

何言ってるのよ。当たり前じゃない! あなたって意外とロマンチストなのね。

彼は照れ臭さを隠すために頭を掻いてごまかそうとしたが、上手くいかなかった。

彼女はそっと目を閉じて顔を上げた。

その仕草の意味するところがわかっていながらも、彼は黙ったままでいた。

「私はあなたのことが好きよ」

何の前触れもなく突然告げられたその言葉は、あまりに唐突すぎて理解できなかった。

それでもようやく意味を理解した後で、彼は驚きながらもこう返した。

「ああ、僕も君のことが好きだよ」

しかし彼女は首を横に振って言った。

「違うわ。あなたが好きなのは私じゃなくて……」

それからしばらく間を置いて、彼女は続けて言う。

「ねえ……あの時の約束のことだけどさ……覚えてる?」

もちろん忘れるわけがない。彼女と出会ったのはまだ幼い頃の話だったが、彼にとってはとても大切な思い出なのだ。

だから当然のように返事をしたのだが……何故か彼女は悲しげな表情を浮かべているだけだった。

どうして彼女がそのような顔をするのかがわからず、困惑しながらももう一度同じ質問を投げかけてみる。

「あ、あの時の約束って……一体なんのことだっけ……?」

すると今度は泣き出してしまいそうな顔になりながら口を開いた。

「えっとね……ほら……あれだよ……私たちが大きくなって……大人になって……それで……また会えた時は……その時に私の言いたいことを言うっていう……あの……あれ……!」

そこまで言われれば流石に察しがついた。だが、それにしても何故今更……? そもそも、いつどこで彼女と再会できるかもわからないのに……。

しかし、そこでふと思い出す。そうだ……確か彼女は言っていたはずだ……。


私の目の前にいるのは、ただの怪物だ。


いつだって、彼だけが私を助けてくれた。私が道を踏み外さないように、正しい道を示そうとしてくれた。


それでも、私にとって彼はヒーローだから……きっと、彼はもう、ここにはいない。


だから、今度は……私が彼を助ける番なんだ!!


――私はね、神様がいるって信じてるよ! あぁ、神様……どうかお願いします。


どうか彼を……助けてあげてください……。









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