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ー お昼休み ー
私は、ダイヤを連れて、
人気の少ない屋上の隅へ来た。
いつも屋上は開放されているんだ。
私は息を大きく吸って、
はっきりと聞こえるくらいの声で言った。
「好きです!付き合ってください!」
………ついに言った。
なんか、緊張しすぎて、戸下山の顔が
見られないよ…。
ちょ、ちょっとだけ…ちらっとだけ…
見てみよう………
…………
戸下山は驚いた顔で固まっていた。
私は思わず、謝ってしまった。
「…あ、ごめん。戸下山が花美さんのこと、
好きなの……は、……知ってる………。で、でも……っ」
「ありがとう」
私の言い訳を遮って、
戸下山は言った。
「……オレ、やっぱり、ありすちゃんが好き。ほんとに、ごめん。でも、黒葉と話して分かった。黒葉はいい奴なんだって。」
「…っ!……………アンタも、いい奴だよ」
…断られてしまった。
普通なら、ショックなはずだけど、
私はなぜか、スッキリしていた。
「ねぇ、戸下山。私、変わったの分かる?」
「…ああ。分かるよ。可愛い」
「…!?え、は、はぁ!?振った相手に
それはないんじゃない!?」
「はは、でも、ほんとの気持ちだよ」
………バッカみたい。
…でもやっぱり、戸下山はいい奴だ。
「…まぁ、ありがとう。じゃあ、
私たち、これから親友ってことで!」
「おう!もちろんだぜ!………」
「? 戸下山?どうかした?」
さっきみたいに、また
戸下山は 暗い顔をした。
「…あ、えっと。あの……さ…」
「うん」
「…オレ、引っ越すことになったんだ……」
「え…?え、ど、どこに…?」
「海外だ…」
え?海外?
てことは、これから、戸下山と
会えなくなるってこと…?
「………ぅ…」
堪えていた涙が、溢れ出した。
「あ、え……あ、ごめん…っ」
「こっちこそごめん。急な報告になって」
「………いつ、引っ越すの?」
「…来週。だから、会えるのは今週だけ」
………来週。もうすぐじゃん。
今日は火曜日。もう、会えなくなるの…?
キーンコーンカーンコーン
予鈴がなった。
「やばっ!教室戻らないとねっ」
「そうだなっ!急ごうぜ」
私たちはそう言いながら、
急いで教室に戻った。
♡
ー 放課後 ー
「ありすちゃん、ちょっと
話したいことがあるんだけど…」
わたしが帰る準備をしていると、
戸下山くんに話しかけられた。
「うん?どうしたの?」
「あ、別の場所で話してもいい…?」
「うん、いいよ」
わたしは準備している手を止め、
戸下山くんに ついていった。
戸下山くんが立ち止まったのは、
ほとんど人が通ることのない、
特別教室棟だった。
「ありすちゃん」
「うん」
「好きです。付き合ってください」
え、告白?わたしに?戸下山くんが?
そう、だよね?
……………なんて言うべきなのかな…。
わたし、桃輝くんのこと、気になってるし。
こんな気持ちで、お付き合いしたら
あんまり良くないし……。
でも、はっきり断れないよ…。
…こういうしかないかな……
「………ご、ごめん、ね…。
わたし、他に気になっている方がいるの。
そういう気持ちでお付き合いしたら、
戸下山くんを困らせちゃうかも…。」
「…そっか」
「あ…ほ、ほんとに、ごめんなさいっ」
「ううん、大丈夫。………じゃあ、
また、明日ね……」
「うん、またね…」
…戸下山くん、寂しそうな顔してた。
告白されるなんて、初めてだから、
どう断ったらいいか、わからなかった…。
…勇気を出して、言ってくれたんだよね。
わたしなら、もし、桃輝くんに告白して
振られちゃったら、
耐えられないかもしれないなぁ…。
わたしは そう考えながら、
教室に戻って、家に帰った。
ー 翌日 ー
…ちょっと早く来すぎたかも…。
教室には誰もいなかった。
わたしが一番だった。
なんだか、ちょっと寂しい。
わたしは寂しいから、窓際で
外の景色を見ることにした。
外には桜がたくさん咲いていた。
風が吹くたび、
ふわふわな桜たちが、
ひらひらと踊っている。
かわいい。
まだ、ショートホームルームまで
全然時間あるし、外でお散歩しようかな。
わたしは中庭に来た。
近くで見ると、さらに綺麗だった。
お散歩じゃなくて、スケッチをしようかな。
ちょうどスケッチブックと、色鉛筆を
持っていたので、わたしは
スケッチをすることにした。
わたしはベンチに腰掛けて、
スケッチをする準備をした。
わたしが黙々とスケッチをしていると、
後ろから物音がした。
わたしが振り返ると、そこには
小松菜さんがいた。
「あ、花美さん」
わたしは名前を呼ばれたので、
挨拶をした。
「小松菜さん、おはよう」
「おはよう」
小松菜さんと、挨拶を交わすと、
小松菜さんはわたしの方へ近づいてきた。
「なに描いているの?」
「桜だよ。教室から見えて、
すごく綺麗だったから」
「たしかに、綺麗」
小松菜さんは、わたしの隣に座って
空を見上げた。
「ねえ、花美さん」
「うん?」
「花美さんって
神笑くんのこと、好きだよね?」
「え?」
…好き、ではないかも。
気になっているってだけで……。
「好きというか、気になっているだけで…」
「そうなんだ?桃輝くんのどこが好きなの?」
「えっ、どこが好き、って………」
「あー、ごめん。
気になってるだけって今言ってたね。」
「……一番は、優しいところ、かな」
「え?やっぱり好きなの?」
「どうなんだろう…。自分では、
気になっているだけだと思っているけど…。
桃輝くんとお話すると、胸がふわふわして
他の女の子とお話しているところを見ると、
胸がきゅーってなるの」
「それってさ、恋だよ」
「恋………」