ケン「は、離してよ!引っ掻くよ!」
勇者「嫌だ…離さない」ギュッ
ケン「辞めてってば!爪だよ!引っ掻くよ!」ガリッ
勇者「…大丈夫…」
ケン「離してってば!」ガリガリッ
勇者「…大丈夫、落ち着いて…」
ケン「ふ、ふぅ…ふぅ…」
勇者「ケン、僕は君の…」
ケン「うるさいうるさいうるさい!!ここまで来て引き返せるか!僕は…僕は…」
勇者「みんなも待ってる」
ケン「誰も僕のことなんか気にしない!誰も僕なんか必要としてないんだ!僕は…要らない子…なんだ…」
勇者「僕にはケンが必要なんだ」
ケン「………何で…何でそんなに僕に優しくするの?僕はずっと君に酷い事してきたのに…沢山騙して利用して…」
勇者「僕も沢山助けてもらったから、お互い様だね」
ケン「僕は君を襲ったんだよ…?あの雲の大きな狼で…」
勇者「あの狼には牙がなかった、ケンは本当は傷つけるつもりはなかったんだよね…僕は知ってるよ」
ケン「ここに勇者君が最初に来た時、僕は君に沢山攻撃した…勇者君が気を失うまで…ずっと攻撃をやめなかったのに」
勇者「あの時ケンは僕を殺そうと思ったら殺せた、でも殺さずに地上へ雲を使って優しく降ろしてくれたんだよね…?ケンは優しいから殺す事ができなかったんだ」
ケン「こんなに…こんなに…傷だらけになったのに…僕に傷だらけにされてるのに…何で」
勇者「こんなの痛くはないよ…ケンの感じた痛みに比べたら全然」
ケン「僕は…こんな姿になってまで…銀河が可愛いって言ってくれた本当の姿を捨ててまで…何を…そんなに欲しかったんだっけ…」
勇者「ゆっくり思い出してみよう?何が欲しかったんだっけ?」
ケン「僕は…僕は…」
数年前
銀河「なぁケン、この城も相当デカくなったなぁ!よくここまで頑張ったよ」
ケン「うん!僕の自信作だよ!銀河は何作ってたの?」
銀河「あーー俺は…ははは、人参畑が欲しくてな」
ケン「わぁ!広ーい、ここは全部人参畑?」
銀河「いや、りんごも植えようと思うんだ、だからこんなに広いんだ」
ケン「りんご!僕もりんごが好き!」
銀河「りんごの苗が欲しいな!雲で育つか分からんが…取り敢えず地上に降りて探してみるか?」
ケン「うん!一緒に行こ!」
銀河「りんご…お、これだな!それじゃあ1つ貰っていくか」
ケン「………」
銀河「ケン?どうした?」
ケン「………良いなぁ…」
銀河「…?何をみたんだ?」
ケン「僕もあんなふうに…」
銀河「仲が良さそうな家族だな、子供も楽しそうに遊んでいる………!?そうか!ケンあんまり見るな!」
ケン「銀河、何で僕だけ…こんな目に…」
銀河「帰ろう!りんごはもう取った、帰って植えよう…な?」
ケン「僕は何で一人ぼっちに…ずっと一人だった…ずっと…」
銀河「ケン!俺がいるだろ!?見えてないのか!?ケン!」
ケン「何で…何で…」ゴゴ…
銀河「…!?ケンから黒い何かが…これは?LOVE…に見えるが…色がおかしい、何で紫色をしてるんだ?ケン…大丈夫か?」
ケン「決めた、良いこと考えた…復讐しよう…僕をいじめたやつを全員消しちゃうんだ」
銀河「………ケン…どうしたんだ…?」
ケン「そうだ…思い出した…りんごを…植えないと」
勇者「ゆっくり思い出してね」
ケン「………君は何でそんなに暖かいの?僕も暖かくなってきた気がする…」ピシッ
勇者「ケンのLOVEにヒビが…大丈夫、寒くなくなるまで、温めてあげるからね…」
ケン「何でだろう…涙が止まらないんだ…」パキッ
勇者「大丈夫…僕で拭いて良いよ」
ケン「全部…元どうりに戻せると思う…?手遅れにならない?」ピシッ
勇者「何も手遅れじゃないよ、ケンはまだ何もやってないんだから」
ケン「何だか…僕の心の中も暖かくなってきた気がするよ…思い出した、僕が欲しかった物…」パキッピシッ
勇者「うん、何が欲しかったんだっけ?」
ケン「僕は…暖かい家の中にいて、家族に…友達に…愛して欲しかったんだ、僕は…僕はずっと愛が欲しかったんだ…僕も誰かを愛した事がなかったんだ…!」パァァン!
勇者「…ッ…ケンのLOVEが砕けた…!」
ケン「………」ドサッ
勇者「ケン!?大丈夫!?………な、何?急に周りの雲が…まさかケンが作った雲が消え始めてる!?落ちる!!」
ケン「………」
勇者「ケン!起きて!!そうだ…僕はLOVEの力で羽があったんだ…!ポラリスに教えてもらった方法で…ダメだ!飛べないよぉ!」
ケン「………ッ」
勇者「わぁ!」ボフッ
ポラリス「おーーい人間〜!大丈夫かー?」
勇者「ポラリス!きっとケンが僕のために雲を出してくれたんだ…!あ!!ケンはどこ!?」
銀河「よう、人間」
勇者「銀河!ケン!ケンを助けないと!どこかに落っこちて…」
銀河「安心しろ、ここにいるぜ」
勇者「あ、ケン…良かった…元どうりの姿になってる…いつもの小さくて可愛いケンに戻ったね」
銀河「…なんだ?デカくなったりしたのか?それはそれで見てみたかったな…」
勇者「いつか見せて貰うと良いよ」
ママ「あぁ…なんて事…傷だらけ…安心して、私の治癒能力ですぐに直してあげますからね」
勇者「うん!ありがとう、ねぇ銀河…ケンは大丈夫なの?あの後寝ちゃったみたいで…」
銀河「あぁ、魔力を使いすぎたみたいだな…この状態になったのは初めてじゃないんだ、3日は動けないだろうが、まぁ大した事じゃない」
勇者「3日って…ま、まぁ…銀河がそう言うなら安心…かな?」
銀河「あぁ、たまには会いにきてやってくれケンも喜ぶだろうからな」
勇者「うん…約束するよ…うーん……何だか僕も眠くなってきたなぁ…」
ポラリス「お、おいおい…お前まで気を失うなよ?お前を運ぶのが俺様の係にされてしまう…」
勇者「んーー………」
ママ「銀河君、ベットってある?もう2人とも寝かせてあげましょう、すごく疲れているみたい」
銀河「あぁ、そうだな…ベットなら沢山あるからな」
???「よくやった…これで俺の心残りが一つ解消された…俺ができなかった事をやり遂げるとはな…だが…もう一つ心残りが出来た、それはお前を抱きしめてやれない事だ…すまない」