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「俺さぁ、人殺しって嫌いなんだよね」
博愛主義者の彼らしい口癖だった。
きっかけは些細なことだったように思う。
権利を巡り内戦が起こった。
人殺しが許容され、勝ったものが正しい世界。
『勝てば官軍、負ければ賊軍』
誰かがこぼした言葉に、そうかもしれないとわらう。
俺は平和が好きだ。
誰もが笑ってその人生を全うできるようなそんな世界が。
「俺はそう思うんですけど、あなたはどう思います?」
ふわりと香る煙草の香り。
何を映しているのか分からないそのオッドアイの瞳が、俺を一瞥する。
その問いに、彼は決まってその言葉を口にする。
人殺しは嫌いだ、と。
それは彼なりの気遣いだったのかもしれない。
いや、もしかしたら本当にそう思っていたのかもしれない。
どちらにせよ、俺にはその答えは一生分からないのだと、目の前の光景を眺めていた。
そのオッドアイは、もう俺を捉えてくれない。
横たわる彼にそっと手を添え、祈る。
どうか、彼と平和が共にあらんことを。
彼がいない世界で、平和なんて意味があるのだろうか。
そもそも世界が平和であれば、きっとこんなことで涙を流す必要もなかった。
人殺しさえ、居なければ。
『なら全部、一からやり直そう』
人殺しのいない、俺たちの世界を。
「……いたい」
身体が燃えるようにあつい。
けれど、熱いと思える。
生きているのだ、俺は。
「らーば、どこ、らーば」
俺は奇跡的に医療班に拾われたのだろう。
処置を施された体は消毒液臭く、思わず顔を顰める。
それでも動けるくらいには回復していたようで、悪運の強さに思わず自笑する。
この時世だ、起き出した俺には気づきもせず、人が大勢行き来している。よほど大変なのだろう。
それをいいことに、俺は掘っ建て小屋のような建物をでて、片割れを探す。
〝平和が好きだ〟と幸せそうに笑う彼を。
「……あと一人」
どれだけの月日が経っただろう
どれだけの血を浴びただろう
躊躇い無く振り下ろした刃を見て思う。
世界は少しでも平和になっただろうか。
笑顔は増えただろうか。
降り注ぐ雨は、血は落としても罪を落としてはくれない。
ふと視線を感じた。
懐かしい、何をみているのか分からない瞳。
死んだはずの彼が、立っていた。
「……!!!っらーば、らーばなんだよね?!」
足をもつれさせながら必死に叫び近寄る彼を捉え、困惑と喜びが顔を出す。
あぁ。俺の【罪】は
「ありがとう、トーマスさん」
彼のために『成った』
「ごめんね」
あと一人。
最期の一人を、俺は殺した。
初めて彼の瞳に映る俺を見た。
平和を夢見る少年のように笑いながら、自身の胸に刃を突き刺した俺。
ごめんね。俺はもう、君の嫌いな人殺しだよ。
冷たくなった彼を抱きしめる
雨なのか、涙なのか
分からないそれが、頬を伝う。
「これだから、人殺しはきらいなんだ」
何も生まない。ただ、失うだけ。
彼は危うかった、だから、嫌いと言った。
どうでもいいと本音を言えば、彼はすぐに消えてしまいそうだった。
嘘から出た真
きっとこれは、俺への罪なのだろう。
ならば
「どうせ同じ罪人なのだから、罪は一緒に償うべきだよね?」
いつか、二人で罪を償ったら
また俺に見せてよ。
平和な世界だと、幸せそうに笑う彼を。
ミリタリーを身に纏う彼