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inm視点
今日もやらかした。昨日は報告書を書くべきだったのに寝てしまった。今日はヒーローだというのに、目を反らしたときに攻撃を食らってしまった。
「体調は?」
「大丈夫、息はしてる」
「5分以内に運ぶぞ」
朦朧とした意識の中、誰かに呼びかけられて返事をしなきゃ、と思う。力をこめると、首を思いっきり縛られたような声が出た。
「……ご、めん」
「余計な力抜いていいよ、ぼくが運ぶからこのまま寝ちゃいな」
「わか、った」
mrkm視点
ぼくの言葉に安心しきったのか、担いでいる伊波は目を瞑ったかと思えば一瞬で寝た。それと同時にグッと身体が重くなる感覚がある。人は意識を手放した瞬間ありえないほどに重くなるのは承知の上、彼がたいそう重く感じる。
「いなみ」
呼びかけるも返事がない。深い睡眠に落ちただけなのか、それとも気を失ったのか。最悪のパターンを想像してしまったぼくは急いで救護へ運ぶ。
「ライ、大丈夫ですか?」
「うーんわからん、けど伊波なら大丈夫やろ」
「そんなこと言って、ほんとは心配なんでしょ?」
「そんなことないけどね?」
伊波を運び終え、駆けつけた星導と共に帰る。明日には目を覚ましていると良いけど。
inm視点
暗い暗い海の底で、一人の人間の首を絞める。自分が何をやっているのかさっぱり分からなかった。一瞬光が差したと思えば、沈んでしまったのであろう船の銀色の甲板に映るおれだけの姿。おれは今、自分の首を絞めている?
「やめ、ろ」
自分を制御しようと抗うも首を絞めることをやめない自分。もう意味がわからない。
「く、るし」
本能的に、死ぬと思った。もう生きられない。だって呼吸ができないんだもの。身体が震え始める。もうだめだ。必死に目を閉じて、神経を集中させる。
目が開いた。というか、目を開けた。夢だった………のか?見知った天井を見て、おれは今救護室に居ることを把握する。そうだ、おれ、攻撃を受けたあと倒れたんだっけ。
「ん、おはよ」
「おは、よ?」
「ひどくうなされてたぞ、何かあった?」
「なんか……苦しかった」
「そ」
「……ごめん、迷惑かけて」
カレンダーを見て、驚愕する。話しかけてくれたロウは今日、完全オフのはずだった。それなのに、おれの看病をしてくれていた。
「もうすぐ任務終わりの2人が来るぞ」
「え?」
「カゲツと星導。あいつらお前のこと心配してたぞ」
「ほんとに?」
「ライ、あんまり倒れることないから」
「あーーー!!起きとる!!」
噂をすればカゲツがやってきた。おそらくるべはその後ろにいるのだろう。
「ライは病人ですよ?あんまりうるさくしないでください」
「うるさいタコぉ!」
「おまえらうるさい」
「…あはは」
「ほんとに体調悪そう、大丈夫?」
「うん……………ごめん」
謝った途端、涙が出そうになって。おれは思わず下を向く。
「おれ最近……さ、迷惑なことしかしてなくて」
心当たりがないかのように首を傾げる3人。おれにはわかる、それ、思いやりって言うんだよ。
「ヒーローなのに、やられちゃった………ごめん」
「……………ライ」
少しの沈黙が続いたと思ったら、カゲツに頬を掴まれ顔を上げさせられる。
「最近お前からな、『ごめん』しか聞いてないねん」
「…え?」
「ごめん、ごめん、ってずっと」
心当たりがあって何も言い返せない。
「こういうときはな、『ありがとう』て言うんよ」
「カゲツ……」
「お前、粋なこと言えるんやね」
「なんやその言い方ァ!」
「あれ、急にかっこよくなくなっちゃいましたね」
「さっきまでかっこよかったのにね」
頬を膨らますカゲツを見て思わずクスッと笑ってしまう。でも、そのカゲツの言葉のおかげで救われたおれがここに居るんだよなあ。
「ありがとうカゲツ」
小声で呟く。ロウがちらっとこちらを向いたが、星導と争っているカゲツには聞こえていないようだった。今度は誰にも聞こえないような声で。
「おれdyticaで良かったよ、ありがとう」