あのデートから1週間後、本当に涼ちゃんから次のお誘いがあったときにはめちゃくちゃ驚いた。だいたい、誘うねって言いながらうやむやになるのがほとんどじゃないの?本当にこの前はありがとう、また食事行きませんかなんていくつかの候補日と一緒に送られてきたメッセージを俺は何回も読み返した。
嬉しい、嘘、俺でいいの?
もしかしてちょっと俺のこと気に入ってくれたりする?
さっそく俺は喜んで返事を返した。
次のデート(と、やっぱり俺は思っている)が楽しみすぎて···会う日まで毎日涼ちゃんのことを考えていた。
「ふまくん!」
「りょーちゃん!」
約束した場所で俺を見つけた涼ちゃんは慌てて駆け寄ってきてくれる。涼ちゃんがたまに俺の名前をはっきり言えなくてふまくん、になっちゃうのが可愛くてつい顔がにやけそうになる。
「誘ってくれてありがとう、俺すっごく嬉しくって···会いたかったから」
「えぇ、うれしい〜、僕も会いたかった」
ん?俺たちもう付き合ってるのかな?そんな思いにさせられるほど甘い良い雰囲気だと思うけど。
「今日は一緒にお酒飲めるねぇ」
「うん、それにしても涼ちゃんてお酒強いよね···」
この前もそこまで普段と変わらない感じで少し顔が赤いかな?っていうくらいだった。もっと酔ってくれてもよかったのに。
「元貴とか若井よりは強いかなぁ?風磨くんは?」
「すごく強いわけじゃないけど普通には飲めるよ。やっぱり恋人とかいたら一緒に飲みたい?」
お店へ入り椅子に座ってメニューを一緒に見る。
「これおいしそう···!恋人かぁ、無理して飲まなくてもいいけど一緒に飲めると家で飲む時とか楽しそうだよね」
涼ちゃんがいいなって言うものをたくさん注文する。
メニューを見ながらわくわくしてる姿も可愛らしい。
「家飲みデート···すっごく楽しそう、したいなぁ···」
もちろん涼ちゃんとだけど。
「好きな人と出来たらいいね!その後はどう?」
んふふ、と首を傾げながらどうなのよ、と本当に恋愛相談に乗ってくれようとするなんて優しいよなぁ、やっぱり。
「連絡はたまに取れてるし、ご飯も食べに行ってる···会えば嬉しそうにしてくれる···ような気がするよ」
「それは···相手の子も風磨くんのこといいなぁって思ってくれてるよ!良いよね、好きな人がいるって···」
「そうだといいな···涼ちゃん恋人はいないって言ってたけど、好きな人は?」
さりげなく、けど聞きたかったこと。
これで大森くんが好きなんて言われたら俺たち直れないかもしれないけど。
「ん〜、今はいないかなぁ···と、いうかあんまり正直なところ恋愛とかよくわかんないんだよね···人として好きな人はたくさんいるけど。風磨くんはどんな風にその人が好きなの?」
好きな人はいないし、恋愛にはあんまり、か···。
手を繋いでくれたり、会いたいっていってくれたりたくさん俺が喜ぶ言葉ばかり貰ってもそれは涼ちゃんからすると特別じゃない普通の行動なんだ···。
「俺はね、最初は面白いこと言うし、いつも笑ってて可愛いなってところが気になって···けど裏ではすごく真剣に色んなこと頑張って、色んな人に気を使ってるとことか、人の為に泣いちゃうところとか見て本気で好きになっていって···その人といると幸せだし、嬉しいし、ドキドキする。でも俺だけのものになってくれないかなって独占欲もあって、そんな風に今は好きで仕方ない」
だから俺のことを少しでも好きになってよ、そんな風に見てよ。
「···なんだか僕が言われてるみたいで少しドキッとしちゃった」
少し頬を赤くして涼ちゃんはふにゃりと笑った。俺は何も言わずにそっとテーブルの上にあった涼ちゃんの手に自分のを重ねる。
「一緒にいると幸せで嬉しくてドキドキして独占したくなる···のが恋ってことだよね···ありがと、教えてくれて···そんな風に想われるのも、想ってるのも素敵だね」
こんな風に言っても、手を触れ合っても涼ちゃんは自分が想い人であるなんてちっともわかってない。
「···ありがとう」
ほら、食べようよって涼ちゃんにたくさん並んだ食事を勧めた。
なんでもおいしいねって食べる涼ちゃんを眺めながらお酒がすすむ。
今まではこんな風に言葉を並べて、手を繋いで好意があることを伝えて駆け引きしながら恋愛してきた。
だからここまで気づかれないということがなく俺は正直戸惑っていた。
なんて言えば君に伝わるんだろうか?どんな風に近づけば俺のことを意識してくれるんだろうか?
···そんなことを考えながら涼ちゃんと同じペースでお酒を飲んでいた俺は完全に飲みすぎて、酔ってしまっていた。
「ぅ゙ぅ···ごめん···」
「いいよぉ、気にしないで」
アイドルがカッコ悪い···好きな人の肩を借りて家まで送って貰うなんて。
「とうちゃーく、ほら座って···お水冷蔵庫?開けるよ」
お水をコップに注いで持ってきてくれる。更に上着を脱がしてくれたりと涼ちゃんは甲斐甲斐しくお世話をしてくれる···ますます俺は自分が情けなかった。
「ごめん···」
「風磨くんにもそんなときってあるんだって逆に新鮮だよ。いつも王子様みたいにカッコいいから···」
涼ちゃんの優しい声を聞きながらぐったりとソファにもたれていると柔らかな指がそっとおでこに触れてそのまま頭を優しく撫でてくれる。
「若井もね、飲みすぎるとぐったりしちゃうからよくこうしてあげるの。あと元貴が頭痛いときもね···」
いいな、若井くんと大森くんは。
優しさがじんわりと染みて思わず俺は泣きそうになる。
「涼ちゃんはなんでそんなに俺に優しくしてくれるの···」
「ふふ、風磨くんだって僕にとっても優しいじゃない。それと一緒だよ」
それはきっと違う。
俺の優しさは涼ちゃんが好きだから。好きになってほしい下心があるから。
「違うよ···俺はもっと自分勝手だよ」
コメント
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この付き合う直前の駆け引きというか、甘々な感じ、良きですね〜🫣💕
自分勝手になってもいいじゃない!それが本気の恋だよ~ ヤルゾ!٩(🔥ロ🔥)و ̑̑ゴゴゴ……