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何かが倒れたような鈍い音が研究室に響いた。
「……くられ先生?」
振り向いた瞬間、くられの体が床に崩れ落ちているのが目に入った。白く抜けた顔色、浅い呼吸、脱力した指先。いつもの威勢など、どこにもない。
「先生!」
ツナっちは駆け寄り、床に膝をついて抱き起こす。肩を支えた腕に、力の抜けた体の重さがずっしりとのしかかる。
「先生、聞こえますか!? ……先生!」
返事はない。
額に手を当てると、皮膚は冷たいのに、体の奥に熱がこもっている。荒い呼吸のたびに胸がわずかに上下するのを確かめ、ツナっちは息を呑んだ。
その時、くられの唇が微かに動いた。
「……だい、じょ……ぶ……」
掠れた声。まるで反射のように、無意識に出た言葉だった。
ツナっちが呼びかける間もなく、くられの瞼がゆっくりと閉じ、体が再び力を失う。
「……先生っ!」
息を詰めたままツナっちは腕に力を込め、くられの体を抱きかかえた。重みが腕に食い込む。だが迷っている暇はない。
「……先生、動かします。しっかりしてください」
ふらつきながらも、なんとか休憩スペースまでたどり着き、簡易ソファへと横たえる。体を支える手が震え、額に汗が滲む。くられの呼吸はまだ浅く、胸が小刻みに上下していた。
ツナっちは隅の棚へ駆け寄り、畳んで置かれたブランケットを掴む。軽く埃を払い、くられの肩にそっとかけた。
「……先生、寒くないですか? 今は休んでください。大丈夫です、俺がいますから」
声をかけながら、ツナっちはくられの背に手を添え、呼吸のリズムを確かめる。その指先に、かすかに体温が戻ってくるのを感じた。
やがて、くられの肩の力がわずかに抜け、唇の端が小さく動いた。
ツナっちはその手を包み込み、見守り続ける。
「……ツナっちは……心配性だなぁ……」
それは夢の中の呟きのようで、微かに笑みを帯びた声だった。
ツナっちは安堵と同時に、胸の奥を締め付けられるような痛みを覚える。
「……心配しますよ、先生。倒れて“大丈夫”なんて、無茶苦茶です」
静かな研究室に、時計の針の音が淡く響く。
ブランケットの下で眠るくられの呼吸を確かめながら、ツナっちはそっと手を添え、しばらく見守り続けた。