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窓の外は沈みかけた陽の光に染まり、橙と群青が混ざり合う空が広がっていた。街灯がひとつ、またひとつと灯りはじめ、その柔らかな光が研究室の机に落ちている。
くられはブランケットに包まり、まだ体に残るだるさを押し込めながら、静かに息を整えた。
「……ツナっち」
かすれた声で名前を呼ぶと、すぐに優しい返事が返ってくる。
「起きました? まだ動かないでくださいね」
ブランケットを肩まで引き寄せると、くられはその温もりに包まれ、小さく息を吐いた。
「……ごめん、ツナっち。情けないところを見せて」
声はかすれていて、普段の威勢の良さはどこにもない。
ツナっちは首を横に振り、静かに答える。
「謝らないでください。無理しすぎたんですよ、先生」
少し間をおいて、ツナっちは湯気の立つカップを手に取りながら尋ねた。
「喉、渇いてませんか? 白湯、少しなら飲めます?」
くられは小さく首を横に振る。
「……今は、いいかな。少し休めば……大丈夫」
その言葉に、ツナっちは眉を寄せてため息をついた。
「先生の“大丈夫”って言葉、信用ならないんですよね」
優しい声の奥に、確かな怒りと心配が滲んでいる。
くられは弱々しく笑い、肩をわずかに揺らした。
「……心配かけて、ごめん」
「ほんとですよ。昨日も徹夜してたんでしょう?」
「まぁ……気づいたら朝で」
ツナっちは短く息を吸い、言葉を選ぶように一瞬黙り込む。
「先生、倒れるまでやるのは研究じゃなくて無茶ですよ」
「……そうだね。わかってはいるんだけど」
「わかってるなら、もうちょっと自分を大事にしてください」
そう言って、ツナっちはくられの髪を指先で軽く払った。
夕焼けの残光が窓を透かして、二人の影をやわらかく伸ばす。
研究室の空気はまだ少し冷たかったが、その光と温もりが、ふたりの間に穏やかな時間を作っていた。
「……まぁ、俺がついてるんで。先生がちょっとくらい弱っても、なんとかしますよ」
ツナっちの言葉に、くられはかすかに目を開け、安心したように微笑む。
「頼もしいな……ツナっちくんは」
「当然です。モルモットは、先生のサポートも仕事ですから」
ブランケットを整えながら、ツナっちは心の中で静かに呟いた。
――先生、ほんと、限界超えてたんじゃないですか。
今度こそ、無理を止めないと。
夕暮れの光が少しずつ夜に溶けていく中、ツナっちはくられの穏やかな呼吸を感じながら、そっと見守り続けた。